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「光る君へ」うろ覚えレビュー《第23話:雪の舞うころ》

現代ドラマの場合、主題歌をヒットメーカーが作るなどしてとても話題になることもある。そんな歌が劇中の「ここぞ」というところで使用されたりすると、視聴者の気分も盛り上がる。
ドラマの中における音楽の役割というのは小さくはないと思っている。
大河ドラマにおいても音楽は大切なドラマの構成要素である。
記号的な使われ方をしたっていいと思うのだ。今回強く思った。

■リピート・アフター・ミー

通詞の殺害事件については、周明が連れてきた証人の告白で謎が解けた。
なんだよぉ、周明日本語喋れるのかよぉ。
おかげでまひろといえば、すっかり周明と仲良くなっちゃって、宋語つまり中国語のお勉強に励む日々である。
父親の国司業務の手伝いはどうなっちゃったのか。

お前隠してたやろ。
せやねん。実はバイリンガルの帰国子女やねん。

まひろの中国語の習得方法は、テキストブックもない状態でメモ一つ取らない。マンツーマンで教えてくれる周明の発音を真似て繰り返しながら言葉を覚えていくなんて、贅沢といえば贅沢な勉強方法だ。
外国語を覚えるには、その国の恋人を作るのが一番とかいうけれども、そんなかんじかもしれない。

それにしても、どうもまひろのあの装束で、越前のビーチに佇んでいる様子はシュールに見える。
越前海岸か。
あたしは、越前海岸で心霊体験的な経験あります。
あ、いらない情報でしたね。

■枕草子

一方、都では出家した一条天皇の妻・定子に仕える清少納言がその後も『枕草子』を綴っていく。ドラマの中ではまだ『源氏物語』は生まれてもいない中、『枕草子』についてはこのように劇中でその作品がぽろぽろと紹介される。こうやって一篇一篇が綴られ、第一の読者である定子がそれを愛でていったのか、と想像するのは楽しい。

今回ドラマの中で紹介されたのは「うつくしきもの」。
鶏のひなについて述べたくだりは、ひなの可愛らしさを今でも多くの人が共感する内容だ。
ともに会話しながらも、まだ藤原道隆が生きていたころの、中関白家の輝かしい日々を思い出す定子とナゴン(清少納言)。
苦しい現状は簡単に変えられるものではないが、それでも思い出を語ることで、定子の笑顔を少しでも取り戻そうとする清少納言の努力の賜物だ。

定子さま・・・年下やけど、めっちゃ憧れ。

ただ、ナゴンの定子を見つめる顔が、芝居がかりすぎて、ちょっと冷める。彼女の定子への憧れに似た感情はわかるんだけど、あんまりマンガみたいなぽけっとした表情しないで欲しい。
あたし的妄想の中では、ナゴンはもっと表面上はクールな人なのだが。

■顔を使い分ける人々

ドラマでというものは、ストーリーを追うだけではなくて、当然ながら登場人物たちの人間性についても描いていくものだ。
その人間性でいくと、23話見ながら感じていたのは、
「こいつら、揃いも揃って」である。
どういうことか、「こいつら」が誰なのか説明しよう。

まずは比較的シンプルな人々から。
まひろの父で国司・藤原為時の部下となる源光雅と大野国勝という平安版ローレル&ハーディみたいな(あたしは昔のコメディ好き)見かけの悪役コンビたちである。表と裏の顔を使い分け、為時の気づかぬところで好き勝手の横暴三昧で、まさに典型的な強欲地方役人。
それも視聴者はもちろん為時にもすでにバレているが。

次に殺された通詞。
こやつもやはり真面目な通詞ではなく、お金に汚いが男だった。
やっぱりそうかー。
殺害事件のきっかけも、そのがめつい密取引だった。
半ば事故のようにして亡くなってしまったが、亡くなったからっていい人とは限らないのである。

そして、都にいる一条天皇だ。
出家した身の上でありながら子を生んだ妻の定子に会いたいばかりに、蔵人頭の藤原行成へ情に訴えるような芝居で揺さぶりをかける。

定子「この『枕草子』オモロイわ。『源氏物語』より絶対オモロイで」

だが、一枚うわ手な藤原道長は、その芝居を看破。
天皇の術中にはまりそうになった行成へ釘を刺し、行成に冷静に宮中のルールに従い業務に徹するよう仕向けたのである。
もしも天皇が、本当に誠実な行成の性格を知った上で芝居していたなら、なかなかやる。

そして最後は、問題の周明である。

■周明、あなたです 

あたしが好きな東京03のコント(お芝居?)に「小芝居」という秀逸な作品があるのだが、周明も小芝居をやっている。
登場したときの感じが直秀を彷彿とさせるようで、似ているかもと思ったが、彼の心のうちはもっと複雑そうだ。

周明は、日本人の親に海に捨てられ、中国人に助けられて中国に渡り、つらい思いをしながらも、最終的に中国の薬師に育てられて現在に至った男である。
血は日本人だが中国で育った彼は、自分を捨てた日本と自分をぞんざいに扱った中国とどちらを母国と思っているのか。
日本語がわかるくせにわからないふりをしてみせたのは、なんでだ?
日本語を思い出すのに時間がかかったの?
ドラマの中でまひろにその点を詰問してほしかったんだが、曖昧にされてしまった。

今もまだ視聴者の我々は、周明という男が何を考えているのかよくわからない。国際的ロマンス詐欺だとネットに書いてあったけど、うまいこと言いよるなぁ。

騙されたと思って俺を信じてみ。

まひろと中国語の授業を通して親しくなって行く中、彼女が左大臣、つまり藤原道長にコネクションを持つ女だと気がつくと、素早くそれを利用して今回の貿易をきっかけに日本の朝廷との商取引成功させ、ひいては自分を宋の宰相の侍医に推挙されることを願って動き始める周明。
厳しい世界で生きていくには、それくらいの夢やバイタリティがなくてはやっていけないのかもしれないが、事実を知ればまひろはハッピーではなくなるだろう。

というわけで、周明こそ2つの顔を使い分ける男だった。
どうせなら、まひろに色仕掛けで親しくなり、利用して目的が叶えば、中途半端に彼女に好かれようなどと思わず、あっさりまひろを捨ててクールに中国へ帰ってくれないだろうか。
周明は頭が切れるようだけれど、朱ほど突き抜けていない点で、あとで悲劇に見舞われそうな予感もあるのだが。

周明にまひろがダンプされ(捨てられ)れば、一時的に道長のことを忘れ、周明と宋という国に惹かれていたまひろは傷心のあまり、自分に求婚してくれる誰かさんの胸に飛び込むのではないか。
その誰かさんってだーれだ?

■誰かさんとは、藤原宣孝

ついにきたきたXデー! 宣孝のプロポーズである。

越前までやってきた宣孝。
彼とまひろの会話というのは、有益な情報や噂の分析などに軽口が混ざっていて、しょーもないことも多いがなぜか安心して見ていられる。
ずけずけと、いけしゃぁしゃぁと物をいう宣孝だが、最後のプロポーズもストレートだったね。なんてうまいのだろうか。

周明なんかより、俺のほうが正直。
(蔵之介もとい宣孝のつもり)

「わしの妻になれ」。(←もう、ストレートすぎて関西弁にも変換できないほど)

遠い親戚であり父親の友人でもある宣孝のプロポーズだったが、自分が想像していたよりもいやらしくなかった。
いやぁ、よかった。その点はめでたい。
これは役者のせいなのか、台本のせいなのか。
実際、宣孝は父親の友人であり、すでに妻も2人いるし子供もいるという20歳以上年上の男なのである。

「わしの妻になれ」。
ドン、ドン、ドン♪

このプロポーズ直後の音楽にやられた人も多かったのではないだろうか。
なんですか、この曲は。
もうあたしは「ありがとう」としか言えなかった。
例えば道長やあの直秀、周明がまひろにプロポーズしたって、この曲は流れません。
今後の展開にめっちゃ期待するが、不思議なほど全くキュンキュンしないあたしは間違ってますか。

今後はまひろが、彼女にとってはまぁ事故みたいなこのプロポーズをどうやってさばく(受け入れる)ことになるのか、に注目したい。

まずは周明との関係が精算されることが、宣孝との幸せな結婚の第一歩か。
なんか周明こわいもん。