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ぶつぶつ仏像 番外篇「カミラと権三郎」
パコは、スペイン国王の肖像画を描くことを許可されたほどの実力を持つ、新進気鋭のスペイン人ポートレイト画家だ。
彼がメモ紙をちぎって渡してくる。
「お互いに、物語に登場する動物1匹とその名前を考えよう。
僕が場所を考える。白は何をするのかを考えて書いて」
あとで2人の紙を突き合わせたら、
・ドラゴンのカミラ
・ゾウの権三郎
・禅ガーデン
・釣り
となった。
パコ「これを材料に5分でストーリーを考えて。僕が絵を付けるから」
私 「えっ、5分だけ? それってまるで大喜利・・・」
パコ「はい、残り4分55秒・・・」
パコは私のストーリーを喜んでくれた。
私は5分でストーリーを考えさせられたが、パコが絵を渡してくれたのは1年後だった。
(5分で考えたストーリーを今回少し手直しした)
【カミラと権三郎】
ドラゴンのカミラとゾウの権三郎。
「いつかあたし、にんげんになりたい」
「ぼくも」
「無理だけどね」
「わかってる。考えたってしかたないよ」
「きょうは何してあそぶ?」
「きれいなお庭だからねぇ」
「そうだねぇ」
「さらさら水がながれているねぇ」
「にんげんにはながれる水が見えるんだよ」
「ぼくらにも見えるさ」
「じゃあ、釣りする?」
「いま、そうかんがえてたところ」
「釣れた?」
「まだ」
「釣れた?」
「じゃましないで」
「うるさい!」
「何も言ってないよ」
「うるさいったら。さかなが全部にげた」
「自分のせいだろ」
「何よ、やるの?」
「やるのか、ふん?」
「こうしてやる!」
「へへん、だ」
「まて、まて!」
「ここまでおいで」
ざざざ。
どすどすどす。
じゃりじゃりじゃり。
「これこれ。そこで何をしていますか?」
「あっ。しまった、仏さまだ」
「えっと、えっと、ぼくたち・・・」
「水の流れが消えてしまいましたね」
「仏さま、ごめんなさい」
「仏さまのお庭がこんなになっちゃった」
「仏さま、怒っていますか?」
「仏さま、許してください」
「仏さま、悪い子のぼくたちに罰をください」
「わかりましたよ。反省したのですね」
「あなたたちにふたつのものをあたえましょう。
自分勝手だった心にひとつ。
反省したすなおな心にひとつ」
「何だろう? あたしたちどうなるの?」
「しかたないよ、悪いことしたから」
「うわぁ、煙が・・・」
「どうなるの? こわい!」
「さぁ、自分たちの姿をよくごらんなさい」
「あれれれ?」
ぼくたち、にんげんのこどもになっちゃった!
「あなたたちをにんげんにしてあげましょう。
この寺の小僧にしてあげましょう。
そのかわり、約束なさい。
一滴の水もないこの庭に水をたたえるのです。
にんげんの心の目に見える豊かな水と美しい水面で
ひとびとの澄んだ心とやすらぎをおつくりなさい」
「はい、仏さま」
「美しい水面のお庭をつくります」
「澄んだ心のお庭をつくります」
「みんなの安らぎをつくります」
「お寺をぴかぴかにおそうじします」
「素直でやさしいにんげんになります」
はい、仏さま。
きれいなお庭は澄んだ心の鏡なんだ。
仏さま。
教えてくれて、ありがとう。
<おわり>