キミの性癖ぜんぶ出せ
テレビにはミラーリングされたスマホの画面が映し出されていた。下瞼をピクつかせながら夫がスマホを操作すると、大映しにされたブラウザがスクロールする。次々流れていくのは肌も露わな女性のサムネ画像とタイトル文字。
『乱れOL菊散華』……スクロール……『タワマン人妻死亡遊戯2』……スクロール……『ヨガインストラクター強制股割り羞恥■クメ』……
それは夫──鋭太くんの成人向け動画の購入履歴だった。
「ほぉ……キミはすごいな!」
私は真剣に感想を述べる。
「……もうやめてぇ」
「続けろ。早く学習しなければ」
スクロールが再開される。
涙目の夫に違和感があった。スマホを片手ではなく守るように両手で握っている。
「……キミ、なにかもっとすごいものを隠してるんじゃないか?」
「えっ!」一瞬目を伏せてこちらを見る。「いやぁ……」
「フフフッ」
嘘を隠すのが下手すぎる夫の慌てっぷりについ笑ってしまう。
「スマホを寄越せ! 私が見る!」
「やめてぇ! あっちょっ、暗証番号なんでッ!?」
「ん? 小説アプリが多いな」
「あっいや活字好きだし!」
「開くぞ。お気に入りは、と……ほぉ、これは! あははははは!! 笑ってる場合じゃないなすまない!」
「んぎぃぃ! 返じでえええ!!」
私はひらりひらりと夫の手を躱しつつ小説アプリを操作する。
私は何も夫をいじめているわけではない。
夫のちんちんが突如病気になった。医師曰く、一週間ほど放置すると不能になるというやっかいなものだが、血液を集め自己治癒力を48時間高め続けることで根治可能らしい。つまりアレを勃ちっぱなしにしておけということだ。
夫はなぜか平気そうだが、冗談じゃない!
私は厳格な親のせいで性行為に異常な興味を持ちつつも結婚するまで経験を許されなかった。そして今ようやく結婚できたのいうのに!
「鋭太くん、性癖を全部みせろ! 私が全て叶えてやるから、ソレを一緒に治すんだ!!」
「わがっだから勝手にみないでええ!」
続く
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