欲求不満にお気に入りの下着をぶつけたら
年明けからセルフプレジャーもセックスもしていない。
わたしも旦那も体調やら仕事やらいろいろあって、バタバタしてるうちに性的営みが生活習慣から抜けてしまったという感じだ。
で、やらないのが続いてみると、案外それが当たり前になって、普通に日々を過ごせてる──
わけねぇだろ!!!!
淫夢みたわ!!
寝てるわたしの下を旦那が脱がせて、すげー入念なクンニしてくれるの。
そいで、わたしも寝たふりしたままその気になってきて、何か固いものが触れる感触に「あ、来る……」って思ったら目が覚めるっていうね。
そして普通に「おはよー」って一日が始まる。
わたしの身体は情欲にぐらぐらの煮立っているというのに、(当たり前だけど)旦那はいつも通りバタバタと出勤の支度をする。
旦那が先に家出るとき、
「んじゃ、お先に行ってきまーす」
「うん、行ってらっしゃい。がんばって〜」
てのもいつも通り。でもさすがに、
「あっ、ちょっと待って」
と旦那を呼び止めた。
「ん? 何?」
わたしは玄関に駆け寄り旦那の肩に手をやり、
「ん……」
とキスした。旦那はちょっとびっくりした顔をしたあと、「ふふっ」と笑った。
わたしも笑って、「いってらっしゃい」と手を振った。
ジ・行ってらっしゃいのキスである。
同棲しはじめはほぼ毎日してたけど、いつしかしなくなる慣習。
愛が冷めたとかじゃなくって、たぶん毎日してるとルーティンワーク化して愛情表現ってニュアンスが薄れてくるんだろうな。
なのでけっこう久々だった。
(くっくっくっ……堪らぬ……!)
ニヤニヤしながらわたしも出勤の支度を進める。
この時点で、欲求不満はまるで解消されてない(されるわけあるか)んだけど、キスしたいなぁとか抱いて欲しいなぁとか、自然と旦那を求めてる状態がけっこう楽しい、って思った。
生きてる感じがする。
とはいえ募るムラムラはどうしたものか。
セルフプレジャーは、夜中しようと思ったら出来るけど、これは抱かれないとおさまらないヤツだ。
セックスは週末にするのが常なので、今日誘っても無理させちゃうかな。
とか考えながら着替えてるとき、
(あ、そうだ。あれがあった)
と思った。
下着ブランド「intimissimi」のレオパード柄ブラジリアンショーツ。
以前、好きな下着をつければ劇的に人生楽しくならんかなぁ〜と思ってランジェリーショップ巡りしたときに買ったのだ。
いろいろ見たり試着したりしてて、ふりふりレースの夢の国みたいなのもすっごく可愛いって思ったけど、シンプルデザインに落ち着いた。
でも、ブラジリアンカット。そしてレオパ。
人生が劇的に楽しく──まではいかなかったけど、着けて過ごしたその日は、いつもより視界がクリアだったような気がする。
なんていうんだろ。「ここにわたしが居る」って感じがしたんだよね。
……というわけでレオパ・ブラジリアンを履いて、出勤!(同じシリーズのブラも持ってるけど透け回避のため、別のを着けた)
ちょっとセクシーな下着でムラムラが中和されるのかっていうと、そんなことはない。
むしろ、この性欲で浮ついた気持ちを大事にしたくて履いたんだよね。
そしたらけっこう良い一日になった。
いろんな要素が組み合わさった結果なんだろうけど、欲求不満にアガる下着をぶつけると、やる気や集中力に繋がった感じ。
仕事もモチベ高くこなせたし、勢いで定時にあがれた。
そしてスーパーで買い物して帰宅。
家事を片付けてあとから帰ってきた旦那と晩ご飯。
食事の後、いっしょにテレビみてるとき、
「ねえねえ、旦那くん」
「何?」
「………」
欲求不満 × アガる下着の効果は続いてる。
わたしは無言で旦那の肩に頭をあずける。旦那はわたしの頭をなでてくれる。
そろそろ、ね、しようよ。
って言おうとした。でも言えなかった。
なぜなら、旦那がわたしの肩を抱きながらこう言ったから。
「……赤石ちゃん。今日、しよっか」