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温かい心を補給する、お粥の効能



お粥に宿る禅の心

日本では古来、一月十五日は「小正月」と呼び、この日に小豆粥を食べることで邪気を払い、無病息災を願うという風習がありました。今日でも、寺や神社、さらには一部の地域では、この風習は継承されています。
また、禅寺の修行では、今も朝食にはお粥をいただきます。
修行僧の心構えを記した「赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)」という書物には、僧堂で朝食の粥や昼食の飯のをいただく作法などが書かれています。修行のためとはいえ、食事の取り方まで、今日でいうマニュアルがあったのです。

お粥の効能

その中に「粥には十(とお)の功徳がある」との記述があります。

  1. 血色を良くする

  2. 力を得る

  3. 寿命をのばす

  4. 苦痛がない

  5. 言葉がはっきりする

  6. 胸のつかえが治る

  7. 風邪が治る

  8. 空腹が癒る

  9. 喉の渇きが消える

  10. 大小の便の通じが良くなる

現代の栄養生理学からすると、過大な期待を寄せているように思われますが、厳しい修行、厳しい自然環境に身を置く修行僧にとっては、「ゆるく」てあたたかいお粥には、心を癒す心理的、身体的な効果が大きかったことと思われます。

現代人にとってのお粥

では、現代においてお粥にはどんな意味があるのでしょうか。
虫垂炎を手術した人から聞いた話ですが、病院では手術後、ゆるいお粥からはじまって、少しずつ常食(普通の食事)に戻していきます。いよいよ退院というときには、カレーライスが出たりする。しかし、その時、その方は、また忙しい「シャバ」に戻るのかと思って、むしろお粥を食べ続けたい、と一瞬思ったそうです。「お粥にこんなに癒しの効果があるとは思っても見なかったですよ」
時間に追われて食事をする人、早食いの人、減量中の人、夕食が遅い人、寒い季節、病気の時など、お粥をとることは栄養補給というよりも、温かい心を補給する、という意味において、もっと活用しても良い食事法ではないでしょうか。

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