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『クリスとみちる』 17話完:みちるとクリス

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 でもひとつ、わかっているのは、

 自分が、親友と離れて悲しかったってこと。

 思う以上にとてつもないダメージだったということ。

 その全部に、無感覚だったこと。


 みんなの前で、クリスと座ったあの時間で戻ってきたのは、

 目が覚めるほど鮮やかで荒々しく、

 眩しいほどに生き生きとした「痛み」だった。

 僕はあの頃、いろんな意味で本当に眠っていたんだなと思う。

 

 体も、心も、感じることとかも。

 それがあの瞬間、いっぺんに目覚めたんだな、と最近思うようになった。

 人間って不思議だ。僕は僕のことをよくわかってない。

 それだけはわかっている。

 

 ずっと後になってから、

 あの頃の僕の事情を知っていたクリスとちえこさんが、

 本当に特別にあの輪に

 入れてくれたことをお母さんが教えてくれた。


 最初で最後、というくらい異例のことだったらしい。

 

 いま思い出すのは、

 みんなに見られるのがとても恥ずかしかったことと、

 背中に感じた、手の熱。

 

 細かいことはけっこう忘れてしまっていて、

 これもお母さんに聞きながら書いているけど、

 いまでもありありと覚えているのは、

 大きくて、しっかりしていたクリスの手だ。


 背中に感じた、あのぬくもり。

 僕を見つめる、優しいまなざしも。


 お母さんが、高校生になったら、普通に参加できると言っていた。


 もう一回行ったらどうなるかな、と時々考えることがある。

 そんなとき、僕は想像を楽しむ。


 もしいま会ったら、クリスはどんな顔をするだろうって。


 きっと、顔全部でびっくりして、

 それから笑顔もすごいんじゃないかなって。


 いまの僕は思ったことを、もっと口に出すかもしれない。

 実際にやってみたら、何も言わないかもしれない。


 それでもまた、あの場所で、クリスに会うのは悪くない。


 うん、悪くない。




 ~おわり

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