掛け算の順序は必要だと思う

 「小学校の算数で掛け算の順序が違うからと答えは合っているのに✗にされた」という怒りの声をツイッターでたびたび目にします。そのたびに掛け算の順序は形式に対する無駄なこだわりで無意味だという意見が上がり、多くの支持を集めているようですが、私は小学生に掛け算の順序を守ってもらうことは必要だと思います。

 正確には、「一つ分あたりの数×いくつ分」(単価×個数)という概念を早いうちから身につけておいたほうがいいと思います。

 私はアルバイトで中学受験をする小学生に個別指導をすることが多いのですが、毎年必ず割合の計算でつまずく子がいます。それも、特定の分野や応用問題ができないといった話ではなく「一行題の式が立てられない」という子が結構いるのです。
 例えば「4は3の□倍です」という文章を見て「4÷3」という式を立てる、それだけの事がどうしても飲み込めない子がいるのです。

 そういう子たちのほとんどは、そもそも「一つ分」という概念が理解できていません。「ある数を基準とする(1とおく)」ということがわからないのです。さらに、計算しやすい順番で式を立てることが当たり前になっていて答えが明らかにおかしくても気づかない子もいます。

 仕方がないのでそういう子たちにはその子にあった他の解き方を一緒に考えますが、「一つ分」が身についている子たちと比べるとすらすら解けるようになるまでにはかなり時間がかかります。しかも、基礎は解けるようになっても応用だと式が立てられなくなるなんてこともしょっちゅう起こります。さらに、最初の式はきちんと立てられてもその計算で何を求めたのかを理解していないために続きがぐちゃぐちゃになってしまうことも多いのです。
 もちろん時間に余裕があれば掛け算の式を「一つ分あたりの数×いくつ分」で立ててみるように伝えます。それが身についた後で割合計算をさせるとびっくりするくらい正答率が上がる子がたくさんいます。

 そういう訳で、私は「単位量あたり」という概念を身につけるために小学校の算数では掛け算の順序を守ってもらうべきだと思います。割合でつまずく子たちは本当にものすごく苦労しているので、掛け算の文章題でほんの少し楽をした結果があの苦労では割りに合わないと思うのです。
 当然、順序の違う掛け算にただ✗をつけるだけだとか「式の意味を考えよう!」などとコメントするだけでは何の意味もないとも思います。「基準値の□倍」という考え方が当たり前に身につくような小学校教育であれば良いなあと思っています。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。
 またどこかでお会いできますように。

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あかる
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