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2023年夏の終わり

9月になっても暑い日が続く。今はもう11月中旬だというのに、冬服を引っ張り出したのは最近だ。毎年少しずつ季節がずれているように、夏はすごく長く感じるようになった。

残暑が長引く9月中旬、1年半ほど付き合っていた恋人から別れたいと言われた。7月から関係がうまくいっていないような雰囲気は感じていたが、正直別れたいと彼から言われることはないと思い込んでいた。だから、ショックだった。

キャリアのことで悩んでいて自分のことで一杯一杯であること、6月頃から私の嫌なところが目につくようになってきて私に対する好意がなくなったことを理由に別れた方がいいと思うと、長い時間をかけ、私に急かされながらぽつりぽつりと答える彼に、正直何も言えなかった。私がどれだけ好きなのかということ、別れたら疎遠になるしか関係は残っていないのだということ(※)、もう別れるという選択肢しかないことを確認しても、別れたいというのが彼の結論だったからだ。

(※私と彼はマッチングアプリで出会ってデート三回目で付き合い始めたので、別れたら友達に戻るなんて選択肢はない。友達になるか疎遠になるかであるが、恋人関係しかなかった人と友達になれるとは思えなかった。どちらか片一方はまだ好意を持っているのならば、そこから友達へというのはおかしな話だと思った。彼は別れたら友達になりたいと言ったが、それはできないと答えた。)

もう何も言えない。だけど、別れたくなかった。7月からあまり関係が良くないかもと感じていて、会っていない間に彼に対する不満が溜まってLINEや電話で勝手にぶつけたり、次第に彼からの連絡もあまり来ないようになった。その時に、仕事の飲み会で会った別の人のことを少しいいなと思うこともあった。それでも一緒にいるのは彼がいいと思った。不満も嫌なところもあるけれど、私が好きな紅茶やケーキを惜しみなく分けてあげたいと思える相手はもう他にいないと思ったからだ。

愛とは、見返りなく純粋な気持ちでこの人に与えたいと思うことだと思う。
小さい頃、ショートケーキの一番上のいちごをくれた母や父を思い出す。過干渉な母や昭和な考え方の持ち主である父には嫌いな面もあるけれど、家族として愛している。彼女たちは見返りを求めない愛をくれていた。だから私は愛とは何かを知ることができた。そして、こうした気持ちを知っていたことを気づかせてくれたのが、彼だった。
うまく言葉にはできないけれど、言葉にはし難い気持ち、愛情みたいなものを彼に大して抱いていることは確かであった。彼に出会って、自分の中にある人に対する愛情みたいなものに気づき、これまで以上に友人や家族へ優しくなれたし愛情を持って接することができるようになった。彼と出会って、そうした自分も好きになれた。

このまま別れたら立ち直れない。時間が解決するのだろうか。だとしても、また他の誰かと付き合った時、絶対にまた思い出すのだろうと思うと、ただただ悲しかった。
好きとかそういうのはもうどうでもいいから、私とずっと一緒にてほしいと思った。

泣きながら、深夜住宅街を歩く。黙って彼もついてくる。一旦帰ろうと言われたけれど、帰ったら終わりな気がした。けれど、何もいうことができなくてただ無言で歩き続けた。

「もう疲れた」
足は限界だった。ぺったんこのパンプスのせいで足の裏の感覚がない。彼も限界そうだった。「俺が折れるの待ち?」と笑いながら聞かれて、そういう聞き方してくるのもなんかムカついた(理不尽)。
疲労、なぜ急にそんな結論を急に導き出したのか(嫌なところを治す猶予を与えてくれないのか)などの彼に対する怒り、悲しさ、自己嫌悪で感情がめちゃくちゃになって、やけになって言う。「もう好きじゃなくてもいいから付き合ってほしい」。恋愛感情がなくても結婚はできるから結婚してほしい、人間として好きだし生活ができると思ったなど、恥も捨てて勢いに任せて話した。ひと通り話した後、「ここまで好きになってくれる人、私以外にいないと思うよ」。今冷静になって思い出すとだいぶキモいこと言っているし、自分でも引く。でもその時はどうでも良かった、もうどう思われてもいいけど彼を手放したくなかった。

結論、彼とは別れることにはならなかった。彼が折れたのだった。その日は歩きながらお互い直してほしいところを話した。結婚や子どもの話もした。歩いて家に着いた後、ベッドで横になってから涙が止まらなかった。彼にごめんねと言われながら、久しぶりに嗚咽しながら泣いた。

それから2ヶ月くらい経ったけれど、前より遠慮せず言いたいことが言えるようになった。会える時は毎週末会うようになり、遊びに誘ってくるのも彼から声をかけてくれることが増えた。LINEも頻度が増えた。

たまに、この選択でよかったのかと思うときはあるけれど、今はこれでいいのかなと思う。次また同じことがあれば、今度は別れるだろう。何も言わず別れるだろう。別れるか結婚するかの2択しかない。とりあえず、その時が来るまで今は今で楽しむことに決めている。