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井上とさず 『クロユリ』 |感想(ネタバレあり)
目的
井上とさずさん@tosazunの素敵な作品の魅力を、感想を載せることで、みんなとシェアしたい。
はじめに
「感想」はCOMITIA128の数日後に漫画『クロユリ』の作者である井上とさずさんに僭越ながらも送らせていただいたメール文をそのまんまコピった非常にパーソナルなものでして、とさずさんへのラブレターです。
だから公開するとか考えていなかったんですけど、自分の「好きだ!」を積極的に発信すると面白いこと起こるっつー最近の流れ(オタ界隈に限らない)を見て、「じゃあ僕もいっちょやったるか」と。
そんで再びとさずさんにメールでお伺いさせていただいたところ「おっけー」って言ってくださって、マジ多謝。
ということで以下「感想」(という名のラブレター引用)ですが、ネタバレありだから未読の方は注意です
感想(ネタバレあり!)
井上とさず さん
大麻(おおあさ)ちゃん@happyleafoasaと申します
先日のコミティアで新刊を買わせていただきました。
以下感想になりますが、めっちゃ長いし感想というより解説になってしまいましたがよければお読みください。
☆
内気ゆえに同級生から疎まれ人付き合いに苦手意識があるみゆ。そんな中学時代のみゆが置かれた状況を見てゆづきは彼女に近づくわけですが、ゆづき自身はみゆと同じかそれ以上に対人関係に問題を抱えています。みゆは言ってしまえば内気なだけ。確かに思春期の子どもたちの間では少々疎まれるかもしれないけれど、人格的な問題はこれっぽちもない。でもゆづきはそうじゃない。そのゆづきの問題とは、対人関係における極度の不安から好きな相手を束縛してしまうこと。それも極端な仕方で。
好きな子が自分以外と仲良くしているのを見て不安になる。そんな誰もが感じたことのある気持ち。ゆづきはそれに耐えられない。だから好きな人の幸せを奪ってまで相手を束縛してしまう。
じっさいゆづきの束縛のせいでみゆは仲良しの生田さんやその他同級生から孤立します。これはみゆにとってはとてつもなくつらいことだったと思います。嫌がらせをしてきた中学の同級生と絶対に一緒にならない為にわざわざ遠い高校を選んだみゆは、きっと良い友達と出会って楽しい高校生活を送りたかったんでしょう。だから生田さんと他愛ない雑談をしているときでさえ、みゆの顔は笑顔で輝いています。でも、だからこそゆづきは耐えられない。自分が「良い友達」の一人でしかないことに。他の子と仲良くするみゆの笑顔が自分といるときのそれよりも輝かしく見えてしまうことに。
ゆづきは後半になると飛び降り自殺の未遂まで犯すわけですが、事態がそこまで深刻になってしまったのはひとえにみゆがあまりにも内気というか意志薄弱「だった」からでしょう。
意志が弱い、というのには二つの意味があって、ひとつはゆづきに嫌われたくないが故に彼女からの苦しい束縛に屈してしまうこと、ひとつは自分の気持ちをひとに伝えることができないということ。
だから意志力がなかったみゆはリストカットで自殺をほのめかしたゆづきの束縛を受け入れざるを得ず、結果同級生たちからまたもや疎まれるわけです。
ではゆづきの飛び降り未遂を見せつけられたみゆは前と同じように再びゆづきの束縛に従うのかというと、そうではありません。成長し、意志を獲得したみゆはゆづきからの歪んだ束縛を拒否するとともにゆづきへの愛を伝えます。いままでゆづきに半ば強制されるかたちで好意を伝えることしかできなかったみゆが、このとき初めて自分から気持ちを伝えたのです。
ゆづきが自殺を思いとどまることができたのは、当のゆづき自身もこのとき初めてみゆの本当の気持ちを知ることができたから、みゆが心から自分のことを好きでいてくれていたということを知ることができたからです。
☆
なんかオタク感がバリバリで上から目線の寸評みたくなってしまって申し訳ないです。
タイトルは『クロユリ』とのことで当然百合要素てんこ盛りの作品なのですが、にもかかわらず作品は百合というジャンルに括れないほど普遍的な物語だと思いました。
百合の定義(そんなんあるのか?)にもよりますけど、ゆづきとみゆの関係は親友以上のもの(まあ性愛ですよね)には発展しない気がするという点で彼女らの関係は百合ではないのかなとか。ゆづきの自宅でみゆは唇を奪われるわけですが、そのときのゆづきの行為は、恋愛感情ではなく、嫌われてないかどうかを気にした不安が基になっているわけだし、自殺未遂後の二人にも性的な関係を匂わせるシーンは全然ないようですし。
あとあとがきに当初のネームではゆづきは駅ホームでの揉み合いの末に轢死してしまう、とありましたよね。とさずさんが書かれる通りみゆがそこまで重いものを背負わなくてもいいじゃないかというのもありますが、もしそのネーム通りだったらみゆもそうだけどゆづきもあまりに不幸ではと。というのも、詳細はわからんですが、たぶん揉み合いから転落死ってことはゆづきはみゆからの本当の気持ち、みゆが彼女のことを愛しているという気持ちを知ることができないってことですから。
とさずさんのことはTwitterで知ったのですが、もう描かれる女の子たちがめちゃくちゃに可愛くて、いつか漫画を読みたいなと思っていました。そんなときにティアに参加されると聞いたので思い切って青梅まで行ってみました。当日は一瞬ですがお話することができてほんとうにうれしかったです。また偉そうなこと言いますけど、カメラワークめっちゃ良いですね。コマ割りも見やすくて違和感なく読むことができました。
いろいろ書きましたけど、とにかくとさずさんの描く女の子が可愛くて最高ってことです。ありがとうございました!
井上とさずさんについて
井上とさず:かわいい女の子をかわいく描くひとで漫画『クロユリ』の作者
Twitter:@tosazun
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