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『ポールプリンセス‼』ポールダンスショー・考察【ミオ、リリア、スバル】

はじめに

ポールプリンセスは現状では、ポールダンスという題材の目新しさや映像表現の凄さに注目が集まっている段階で、ストーリー部分に関してはまだほとんど語られていません。
ということで、各キャラクターが抱えている物語がどのようなものかポールダンスショーを考察しながら見ていきたいと思います。

今回はミオ、リリア、スバルの3人のポールダンスショーについて見ていきます。

(※考察はあくまでも個人的な解釈によるものです。考察の都合上ネタバレのようになる部分もあるかと思いますご了承ください。)

ポールダンスショーについて

各キャラの考察に入る前に少しだけポールダンスショーの見方について少し説明しようと思います。

ポールダンスショーを見てもらえばわかると思いますが、ポールプリンセスのポールダンスショーはいわゆる普通のステージ上では行われません。
ステージは心の中を映し出した世界です。背景、演出、オブジェクトもちろん歌やダンスも全てはそのキャラクターの心を表します。

そして、その中でもとりわけ重要なのは本作のテーマでもあるポールダンスのポールです。
主人公のヒナノのプロフィールには「引っ込み思案で自分を表現するのが苦手だが、”芯”ある頑張り屋。」とあります、芯とはつまりポールです。
ポールプリンセスではステージにおけるポールは各キャラクターの『心の芯』として描かれているのです。

ステージは心の中を映した世界。
ポールダンスのポールは”心の芯”。

この二点を抑えた上で各キャラとポールダンスショーについてみていきましょう。

東坂ミオ

【マジカル☆アイデンティファイ〜3・2・1の魔法〜】

楽曲のタイトルにもなっているアイデンティファイとは「同一であると認識する」という意味。

憧れの推し(キミ)は そんなセリフはきっと 言わないはずなのです
推し(キミ)を信じる思い その心こそが変身パワーになるのです

『マジカル☆アイデンティファイ〜3・2・1の魔法〜』歌詞より

推し(キミ)と歌詞にもあるように、推し(キミ)と同一であると認識することが魔法になるという意味の楽曲です。

ミオの推しは魔法少女ですが、この魔法少女というのは単にアニメのキャラクターである同時に、もう少し概念的な意味を持ってきます。

魔法少女とは”ありのままの本当の自分”のことで、それは自分の内側に存在する少女としてのもう一人の自分を意味します。
ざっくり言えば、決まりだから、常識的に考えたら、こうあるべきだからと普段日常で無意識に隠してしまう気持ちのことです。

『マジカル☆アイデンティファイ〜3・2・1の魔法〜』では、そういった隠してしまう外側の自分と内側のありのままの魔法少女の自分とが一体であると認識することで魔法をかけたかのように世界の見え方が変わっていくことが歌われています。

ちなみに、ミオの憧れの魔法少女アルカナーム。アルカナム(Arcanum)は神秘という意味。つまり、魔法少女の自分とは内なる神性でもあります。

推しを全力で推しているときは、誰でもありのままの本当の自分になれるもので、推し活と魔法少女への憧れが重ねられて表現されています。

ミオの心の芯を表すポールはピンクの魔法少女のカラーのポールです。これは、内側のありのままの魔法少女の自分としての意味かと思われます。

前半ではポールは天上の世界と繋がっていることが示され、後半ではポールはリボンによって結ばれ、虹ようなリボンの架け橋がかかります。
魔法少女の自分と結ばれた世界は、まるで天国のような世界ということです。

ミオのショーではポールダンスのトリックも非常にうまく機能しています。

ayesha

「動き始めるストーリー」の歌詞に合わせayesha(アイーシャ)というトリック。アイーシャはアラビア語で「生きている者」という意味が語源にあり、魔法少女への愛、憧れと共に生の実感を得たことを表現されます。

jujuba doll

jujuba dollとは、バブルガム人形という意味で、バブルガムとはスラングで子供っぽいことを指します、子供のようにありのまま、思いのままに回転することで内側の自分とひとつとなり魔法少女のように空を飛ぶことができることを示しています。

上:cupid 左:martini 右:gemini

憧れのサナ姫と同じcupid(キューピッド)、ジンとベルモット2つのお酒の混ざったカクテルを意味するmartini(マティーニ)、2人で1つのふたご座のgemini(ジェミニ)、どれも魔法少女であるもう1人自分と結ばれ1つになるイメージのトリックとなっています。

最後に衣装担当でもあるミオのビジュアルも見てみましょう。
衣装も髪色を筆頭に左右パッキリと分れ、向かって右側はキラキラが多く、ミニハットもあり、二元論からの解放を表すゼブラカラーのソックスとありのままの魔法少女の自分を表し、背中には左右を結ぶ翼のようなリボンがあり、
「二人の自分がリボンで結ばれ空を飛ぶ」そいったイメージの衣装になっていることが分かります。

西条リリア

【とびきり上等☆Smile!】

リリアの「とびきり上等☆Smile」ですが、まずこのショーで一つ特徴的なのはリリアのポールです。
リリアのポールは特に何も意味付けがされていない普通のポールで、これはリリア自身がヒナノの心の芯でありポールそのものだからだと考えられます。心のポールの擬人化とも言っていいかもしれません。

ミオのショーでありのままの魔法少女の自分がポールとして描かれていましたが、リリアも魔法少女と同じでヒナノにとっての半身で、ありのままの自分の役割しています。
魔法少女が子供のようにあるがままだったのに対し、ウサギのリリアは動物のようにありのままということです。

リリアはヒナノの心を照らす月のような存在です。

ヨロシク!上等Smile Together

この歌詞ですが、”ヨロシク上等”は実は”夜露死苦上等”なのではないかと思われます。

”上等”という言葉は単に上質を表す意味で使うには語感があまり良くないような気がしますし、カタカナで”ヨロシク”もあまり使われない含みを感じさせる書き方です。

”夜露死苦上等Smile Together”として見ると、いわゆるヤンキー言葉で、夜露死苦は単なる当て字なのですが、さらにこれを字義通り解釈してみると
「夜に露になる死の苦しみも上等、一緒に笑顔で行こう」
といったような意味になり、苦しみにあふれた夜の世界も笑顔でいれば大丈夫だよと言っているように解釈ができます。

そのように見るとアラビアンナイトのようなステージや、ウサギの衣装からもリリアは夜の世界明るく照らす月のような存在として描かれていることが分かります。

shoulder mount bounce

shoulder mount bounceというトリックで、重力に負けずポールを登っていく姿は、夜の暗闇も上等と笑顔で突き進んでいく姿と重なります。

さぁ笑って! (さぁ笑って!)
明日に届け (ハッピーに You & I)
爽快!全開!前向いて太陽
キミの輝きはねっ So私が知ってるよ
ココロはあるがまま 
とびきり上等Smile together

「前向いて太陽」と月のリリアにとってヒナノは太陽のような存在でもあります。ストーリーでも悩むヒナノの背中をリリアが押してあげるようなシーンがいくつかありましたが、歌詞もヒナノを励ますようなものになっていることが分かります。

そんな風に明るく照らしてくれるリリアですが、「キミの輝きはねっ So私が知ってるよ」と太陽のようなヒナノが照らしてくれるから月のリリアは輝くことができるのです。

このシーンでもヒナノの笑顔が一番真ん中です

You may know to be loved

ここではさらに「You may know to be loved」(あなたは愛されていることを知っているかもしれません)を「夢の扉」と読ませているのが特徴的です。

振り返ってみればそこに自分を愛してくれる人たちがいつもいたこと。
夜を照らしてくれる月のようにリリアがいつも側で愛していてくれること。
それに気づけばどんな夜も笑顔で夢に向かって進むことができる、ということのように思います。

Drop

ポールの上から急速落下するDropというトリックです。
リリアと共にいればどんな苦難があっても大丈夫。
空に浮かぶ花火も決して笑顔ばかりではないですが、それすらも世界を明るく照らしてくれる光になるのです。

南曜スバル

【リメイン】

楽曲のタイトルにである「リメイン」
remainは残ったものを意味し、挫折により絶望の淵に落ちたスバルの中でそれでも残ったもの、鋼のポールを意味します。

トレンドのあの子は言う 憧れの舞台のインタビュー
目を逸らしスリープする ただ暗闇があった

スバルのショーの何より特徴的なのは憧れ絶望から始まるということです。
憧れの星を掴むことをテーマにした本作でのカウンター的なポジションであることが分かります。

決して交わることのない 平行に伸びていく世界を
あの日のように 回り 飛び移れば
Ifの中の私が現在(いま)の私に生まれ変わっていく

そして、そんなスバルのポールは鋼の避雷針です。絶望してなおも折れることなく残ったそれは「あの日の自分」。子供のようにありのままの自分。ミオの魔法少女と一緒です。
あの日のように鋼のポールと一体となれば、過去に囚われた自分から解放され”今を生きる”ことができるということでしょう。

片方だけ見える目、ヒナノたちと同じトリコロールカラー、白と黒の混ざり合ったレギンス、ミオと同様に左右で2人の自分が対比され一体となったデザインであることが分かります。

パーカーは都会の中眩しく輝く虚飾を遮り、空に伸びる自分だけのポールをただまっすぐ見つめ手を伸ばすために、ヘッドホンは外の音を遮断し自分だけの音楽、世界を見つめるためのものです。
絶望の淵に落ちたからこそスバルは自分だけの”ポール”を見つめ直すことができました。
そしてその鋼のポールは紫電一閃のごとく世界を作り変える雷を呼ぶのです。

この雷はミオの世界が生まれ変わる魔法と共通しています。他にも、「時針に変わって」という歌詞にもあるように、憧れに手を伸ばすミオと憧れへの挫折から始まるスバルのショーは一見全く違うように見えますがかなり類似性の高いショーになっているようです。

また、ステージではミドリとピンクに光る床がいくつかのシーンで見られますが、これはミオとヒナノのことを意味しているように思います。
好きなものが周りに理解されない中でそれを貫くミオや同じようにバレエに挫折した過去のあるヒナノ、どちらも同じようなスバルと苦しみを抱えています。(リリアは少し土俵が違いますね)
アズミ先生もそうです。スバルは「同じにしないでください」と言っていましたがアズミ先生もまた同じような過去を抱えて生きているのです。
そういった、多くの人が同じような苦しみを抱えながら生きていることに気づくこともスバルの物語のテーマにあるようです。

おわりに

ポールプリンセスは至上初のポールダンスアニメです!!
なんて言ってますが、ただポールダンスをアニメ化するという次元にはすでにないくらいにポールダンスというテーマに対して真摯に向き合い掘り下げ表現されています。

まだ細かい部分までは見きれていないですが、今回の考察でポールプリンセスはストーリー面もかなり力を入れて作られているということが伝わっていれば幸いです。

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