私は、好きになった場所で暮らしたかった、ただそれだけなんだ。離島へ移住して1年半の私が最近思うこと
※2023年9月1日に加筆修正しました。
今回は、マイナビとnoteで、「#あの選択をしたから」をテーマにした、投稿コンテストをきっかけとして書いたnoteです。
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「離島へ移住した」と話すと、学生時代の友だちのほとんどに驚かれた。それに、この島に暮らす人にも驚かれる。
でも、そこまで驚かれることをしたとは、私自身は思っていない。
私は、好きになった場所で暮らしたかった、ただそれだけなんだ。
私の生まれは山梨県で、小学校の教室からは毎日のように富士山が見え、富士山は当たり前にあるものだった。
だからか、私にとっては日本一の山も他の山とそう変わらなかったし、今でもそこまで特別に感じない。確かに、雪化粧の富士山は綺麗で見応えがあるけれど、観光客が言う「心震えるほどの感動」は、なかった。
山に囲まれた町で育ったからか、海への憧れは幼い頃からあった。夏休みに海水浴へ連れて行ってもらう車の中で、遠くの海岸線が1秒でも見えるたびに「海だ!」と叫び、潮の香りがどんどん濃くなっていくことに心を躍らせた。
5歳くらいまでは、波の音ですら泣くほどだったけれど、怖くないことを知ってからは海へ行くことが楽しみだった。でも、私は泳ぐのが苦手で、浮き輪がなければ海へ入ることも出来なかった。
それでも海が好きで、砂浜で自分が気に入った貝殻を拾い集めることを、何時間も飽きずにしていた。白い二枚貝、まだら模様のまるい貝、削れて小さくなった貝の破片。どれもこれも光って見えて、ポケットがパンパンになるほど夢中で拾った。
巻き貝は、耳にあてると海の音がするから特別に好きで、大きなものを見つけた時は、宝島で宝箱を見つけたような気持ちになった。
海水浴から帰ってきても、巻き貝があれば海の音を聴くことができた。秋になっても冬になっても、その巻き貝を耳にあて、海を思い出した。
その時に集めた貝殻は、今でも実家の自分の部屋に保管してある。
五島列島にある島を初めて訪れたのは、2021年11月のこと。
はっきり言って、この島のことは全く知らなかった。小学生で習った日本地図では、島と言えば沖縄で、長崎県は九州の上の方というくらい。
だから、五島列島の場所をきちんと知ったのは、島を訪れる2ヶ月ほど前のことだった。
人生で初めて高速船に乗り、島へ降り立った時に驚いたことは、潮の香りがあまりしないこと。海の近くは潮の香りがするものだと記憶していたから、こんなにもしないものなんだと不思議に思った。
港から目的地へ向かうための車窓から見えた景色が、今までにないほど私の心を震わせた。
白いガードレールの向こうに広がる深く青い海は、何千万のブルーサファイアを散りばめたように輝いて見え、
入り江の奥にある小島は、空に浮かんでいるかのようだった。
「綺麗。」と、ただただ思った。
この島に一目惚れをした瞬間だった。
「この景色を毎日見て暮らせたら、最高じゃないか。」
その時にはもう、この島で暮らすことを現実的に思い描き始めていた。
島には、スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニと、生活するには十分なものが揃っていた。それに今は、インターネットで取り寄せることもできる。都心と比べると届くまでに時間がかかるものの、そこまで不便に思うほどではなかった。
台風時期の船の欠航なども気になったけれど、それよりも、
「好きになった景色を毎日見たい、この島の違う景色も見てみたい。」
移住してからの心配よりも、島のことをもっと知りたいという好奇心の方が上回った。
山梨に帰ってから、すぐに移住するための準備を始めた。
その準備の中で、今でもよく聞かれる「家族は反対しなかったのか。」について、私の場合は全く問題なかった。むしろ、両親からは北海道へ行くかと思われていたらしく、長崎県の離島を選んだことの方を驚かれたくらいだった。
両親はまだ元気だし、私自身は身軽であるし、後ろ髪を引かれることなく、2022年2月に島へ住民票を移した。
そこから1年半が経つ。
今、私が住んでいる家からは、歩いて1分もしないところに海がある。
家の窓を開ければ、波の音が聞こえるほど近い。
だからもう、あの頃のように巻き貝を耳にあてることはなくなった。
その代わりに、朝日に輝く青い海を横目に通勤し、夕方は近くの防波堤まで歩き、赤く染まっていく空を眺めることが私の日常になった。
「この景色を毎日見て暮らせたら、最高じゃないか。」
その直感を信じて移住の選択をしたあのときの私に、今の私から感謝の言葉を送りたい。
あのとき選択をしてくれて、本当にありがとう。
私のしたかった暮らしは、ここにある。
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※島へ移住して半年・のことを書いたnoteはこちらです。読んでもらえたら嬉しいです。
※五島列島の日々の暮らしについて、朝の「おはよう」と写真ととも昨日を振り返る短文日記のマガジンもあります。
五島うどんをお店で食べた時の日記はこちらです。
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