Weekly Quest <どうなる半導体>
(2023年11月6日号)
毎週月曜日に Weekly Quest と称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。
あっという間に11月です。カレンダーも残り2枚になってしまいました。年末が駆け足でやってきます。
市場は一時的な利上げ停止を見て堅調な動きです。また、半導体関連についてもここ数日は買い戻しによる株価上昇が続きました。決算発表も相次いでいますが、業績を見ると半導体関連銘柄の内容は良くありません。良くても決算数字をこねくり回したようなものもあり、本当の意味で今後の成長拡大を示すようなものはほとんどありません。
今後一段の成長がこの分野で見込めるのかどうか考えてみたいと思います。先週発表までに発表された半導体関連の主な決算を確認してみます。売上高と純利益の前年同期比の比較を見てみます。
・Lam Research (LRCX) Q1
売上高 (2023) : 34.8億ドル (31%減)/ 売上高 (2022) : 50.7億ドル
純利益 (2023) : 0.66億ドル (36%減) / 純利益(2022) 1.04億ドル
・Texas Instruments (TXN) Q3
売上高 (2023) : 45.3億ドル (14%減)/ 売上高 (2022) : 52.4億ドル
純利益 (2023) : 17億ドル (26%減) / 純利益(2022) 22.9億ドル
・Intel (INTC) Q3・GAAPベース
売上高 (2023) : 142億ドル (8%減)/ 売上高 (2022) : 153億ドル
純利益 (2023) : 3億ドル (71%減) / 純利益(2022) 10億ドル
・AMD (AMD) Q3・GAAPベース
売上高 (2023) : 58億ドル (4%増)/ 売上高 (2022) : 55億ドル
純利益 (2023) : 2.9億ドル (353%増) / 純利益(2022) 0.66億ドル
・On Semiconductor (ON) Q3・GAAPベース
売上高 (2023) : 21.8億ドル (0.4%減)/ 売上高 (2022) : 21.9億ドル
純利益 (2023) : 5.8億ドル (87%増) / 純利益(2022) 3.1億ドル
・Qualcomm (QCOM) Q4・GAAPベース
売上高 (2023) : 86.3億ドル (24%減)/ 売上高 (2022) : 113.9億ドル
純利益 (2023) : 14.8億ドル (48%減) / 純利益(2022) 28.7億ドル
ざっくりこんな感じでした。決算でNon-GAAPベースで判断するアナリストが多いですが、会社都合で利益を補ったり費用適用を変更したりした後の数字ですので、公正なものか疑問が残ります。
また、売上高が増えていないのに利益が増えているのは本業以外のところで利益に貢献したということです。資産を売却したりするケースや税金の戻りを適用するケースがありますが、決算を取り繕うためにこねくり回した感が強いです。
しかし、市場はNon-GAAPで判断しており、なおかつアナリスト予想上回った、下回ったで判断して株価が上下していますので決算の内容を正確に反映したものとはとても思えません。
以前にも書きましたが、本当は悪い決算でもアナリスト予想を上回ると ”悪いのによかった” 状態で株価が上昇しますが、この場合は上昇は長続きしませんし、どこかで一気に崖がくるケースがほとんどです。
また、GAAPとNon-GAAPでも比較的差が少ないのが売上高(これだけは変えようがありません)ですから、個人的には重要視しています。何せ本業の売上高ですので、これが減少していては話にならないということは誰がみてもわかることです。そこで決算をみるとその本業の売上高が結構減少しています。
GAAPとNon-GAAPの違い等は以下のSBI証券の記事をご覧ください。
そして、半導体関連はそろそろ業績的には底だというコメントも見かけますが、果たしてそうなのでしょうか。PC市場の回復の兆しはまだ見られません。2023年第三四半期の世界PC出荷台数は6820万台で前年同期比で7.6%減少しています。
また、スマートフォンの世界出荷台数は11億0280万台で前年比で1.1%減少しています。来年のクリスマス商戦では出荷台数がようやくプラスに転じるという予想ですが、ほとんどが買い替え需要が中心で大幅な増加は見込めないのではないかと思います。
さらに、EV需要がこの先落ち込むことが予想され、使われる半導体も減少する可能性があります。これについてはテスラの販売台数鈍化により同社へ電池を供給しているパナソニックの減産をみればわかります。これによりEVに搭載される半導体も減少するのは目に見えています。
そして、AIによる需要の拡大がどうなるのでしょうか。これは11月下旬に発表されるNvidiaの決算によるところもありますが、需要自体は拡大していますので半導体各社にとっては最後の拠り所になります。
しかし、例えば数年前に騒がれたIoT(モノのインターネット化)などが結局拡大しなかったことを考えると、本当にAIが色々なところに活用されるようになるのか心配なところでもあります。
そして、そのAI市場が拡大するにつれ自社開発の半導体が多くなってきそうです。Appleが良い例ですが、AppleのPCでIntel製品が自社半導体を使うことによりどんどん駆逐されて、いまではMacからiPadまで全て自社の半導体を使用しています。
半導体自社設計や製造については半導体市場の中では置き換わるだけですので半導体市場全体の大きさは変わりませんが、使われなくなった会社にとっては一大事です。これで一番影響を受けるのがIntelでありQualcommだということになります。
Intelについては今回の決算でアナリストの予想を上回り、前期比で大幅に業績改善などと言われていますが、費用や利益をこねくり回してNon-GAAPベースで増益になっているだけです。
さらに売上高が減少し、データセンターの売上も減少していることから、実態はまだまだ悪いと判断するべきです。
ざっくりと見てきましたが、PC、スマホ市場が今後も縮小、クラウド市場は緩やかに拡大?が見込まれる中で、以前より苦戦している半導体関連企業というのが正直な姿というところなのではないかと思います。
さらに忘れていますが、そろそろコロナ禍後半に始まった設備投資で半導体各社の工場が稼働し始める頃なのではないかなと思います。
市場全体の需要減少が見込まれる中、工場稼働による増産で需給環境の悪化が起きないのか?ということも半導体市場にとっては頭の痛い問題になってしまうのではないでしょうか。
アメリカの景気が今後良くなるというなら話は別ですが、金利上昇により景気悪化が見込まれるなら、目も当てられない状況が待っていることになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事: