クリーニング屋のおばちゃんとの約束
近所のクリーニング屋に行きまして。小さなクリーニング屋です。いかにも陽気なおばちゃんがいまして。
「初めて?」
「初めてです」
「じゃあ50円引き」
入って3秒で50円引きです。この自己申告制を信じて大丈夫なのでしょうか?
おばちゃんの横には冬物の服たちで溢れかえっています。それをせっせと整理しています。そこに僕はコートを出しました。
おばちゃんは「あら、いい色のコートね。深いエメラルドで」と褒めてくれました。
「これ帽子付いてる?」
おばちゃんはフードのことを帽子と言います。
「フード付いてます」
「あ、ほんとだ。帽子付いてるね」
おばちゃんはフードのことを頑なに帽子と言います。もしかして緑のこともエメラルドと言うのかもしれません。
「普通は帽子付いてると別料金なんだけど、サービス」
「え?いいんですか?」
またサービスしてくれました。
そして、今のクリーニング屋事情はわかりませんが、電話番号とか住所とか聞かず名前だけでした。これだと次回来た時も「初めてです」が通用してしまいます。大丈夫でしょうか?
僕は2千円を出すと、「細かいのない?」と言い、おばちゃんは小銭入れ財布を出して、中身を全て机にドバーと出して、「500円玉入らなくていいかな?」終いには「29円だけど、30円でいいや。おまけ」経営大丈夫でしょうか?
仕上がりは11日。
ここでおばちゃんは言います。
「今、冬物のクリーニングいっぱい来てて、たくさんでわけわからなくなっちゃうから、絶対11日取りに来て」
客に強要です。
今までのおまけはこのためだと言わんばかりの「絶対11日取りに来て」
ここまでサービスされて、ここでNOは言えません。ひょっとしたら経営上手かもしれません。
おばちゃん、絶対、11日取りに行きます。