見出し画像

アキラとアンチの物語

『悪の謝罪』

アキラはSNSで人気のあるインフルエンサーだった。
彼の投稿はいつも多くの「いいね」とコメントで溢れていたが、その中には必ずと言っていいほど批判的なコメントも混じっていた。
その中でも特に目立つのが、「影」というアカウントからのコメントだった。

「またくだらない投稿だな。こんなの誰が見るんだ?」

アキラは最初、そのコメントを無視しようとした。しかし、影のコメントは続き、次第に彼の心に引っかかるようになった。

ある日、またいつものように「影」のアンチコメントが。
アキラは影のアカウントを調べることにした。影の投稿を遡ってみると、そこに一つの投稿がアキラの目に留まった。

「今日は、あの日からちょうど5年。家族を失った日。」

アキラはその投稿に強く引かれ、影の過去に興味を持ち始めた。
アキラは影にDMを送ることにした。

「あなたはなぜ、毎日毎日僕にアンチコメントを送るのですか?それは家族を失ったのが原因ですか?」

返事はなかった。しかしアキラは再びDMを送った。
「君が僕の投稿を批判する理由が知りたいんだ。ただそれだけです。教えてください」

すると影からDMの返信が来た。

「5年前、僕は家族を交通事故で失ったんだ。あの日、僕は家族と一緒に出かける予定だったけど、急な仕事で行けなくなった。僕が行っていれば、あの事故は避けられたかもしれない。自分を責め続けて、他人を批判することでしかその痛みを和らげることができなかった。」

「そんなことがあったんだね。僕も同じような経験をしたことがあるよ。」
アキラは影の告白を悟って、共感で返した。
アキラとアンチのラリーは数十回と続いた。

「君のことをもっと知りたい。友達になれないかな?」
というアキラの言葉に対して影も心を開き、応援しようと決意する。
「ありがとう。君のことを応援するよ。」

しかし次の日のアキラの投稿に、影は目を疑った。
影の辛い体験などのDMを全てSNSに晒したのだ。

影にアキラからDMが来た。

「これがお前のやっていることだ」

影はその投稿を見て、深く傷ついた。アキラの行動は予想外で、影にとって大きな裏切りだった。
影は再び孤独感に苛まれ、SNSから姿を消した。

最初は影がいなくなってほっとしたアキラだったが、次第に影のことが気になり始めた。影のアカウントを探しても見つからず、完全に消されていた。アキラは自分の行動を後悔し始めた。

「影は確かにアンチだったけど、彼にも理由があったんだ。僕はそれを理解しようとせず、ただ傷つけてしまった。ごめんなさい」

アキラは影に対する自分の行動を深く反省し、SNSで謝罪の投稿をした。

しかし、影からの返事はなかった。


いいなと思ったら応援しよう!