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廃病院で浮気告白。友情と裏切り物語
『二人の衝動』
エリカは浮気をしてしまった。
それは衝動だった。
しかし、その浮気は許されないものだった。
なぜなら、浮気相手の彼女は、エリカの親友のサキだから。
エリカは溢れんばかりの罪悪感でいっぱいだった。
どうしよう?
たった一人の友達を裏切ってしまった。
素直に謝ろう。
これがエリカ出した答えだった。
最善の答えであったが、なかなか言い出せない。
言い出せなくなるほど、言い出せなくなる。
分かっていても言い出せない。
でも、言わなきゃ。
エリカは決心して、サキに言おうとした。
するとサキは「廃墟探探検かない?」
サキはそういうものが好きだった。
過去にも二人は一緒に行ったことがあった。
「ヤバイ場所見つけたの。ここ絶対ヤバイよ」
サキのキラキラした目を見たら、言い出せなくなった。
そして、サキとエリカは廃墟探検に行くことになった。
そこは山奥の廃病院。
確かに雰囲気はヤバイ。
サキとエリカはスマホの明かりひとつで踏み入れた。
暗くてわかりにくいが、カーテンは破れ、ガラスは割れており、ベッドは錆びて汚れているのは何となくわかる。
しかし、こんなものではサキは満足いかなかった。
地下に降りる。
手術室と書いてあった。
待ってましたと言わんばかりにサキの足取りは軽やかになった。
エリカはもしかしたら、どこかで謝罪できるのではないかと思っていたが、サキは話を聞く態勢にはならなかった。
そして、手術室に入った。
色んな道具があった。
ドラマなどで見たことある手術シーンの道具がごろごろ転がっていた。
「エリカ見て。すごい」
まるで夢の国に来たみたいなトーンだった。
それとは対照的な返事をするエリカ。
そんなウキウキのサキだったが、一瞬で黙り込んだ。
手術台をスマホで照らした。
腕があった。
すぐ隣りには足があった。
その下には胴体があった。
さすがのサキも焦った。
本物?
そんなはずはない。
本物だったら、もう腐っているか骨になっているだろう。
やけに生々しい。
サキは思い切って、触ってみた。
温かい。
「エリカ、逃げよう」
サキは後ろを振り返った。
しかし、エリカはいない。どこにもいない。
もう仕方ない。
サキは一人で手術室を出て逃げた。
一目散に廃病院の外まで走った。
やっぱりここはヤバかった。
サキはそう思った。
と同時にエリカを思った。
エリカはまだ中にいるのか?
どうしよう?
エリカを助けに行かなきゃ。
でもサキは震えていた。
こんなことはないことだった。
どんな廃墟に行っても平気だったのに。
今回はなんでこんなに震えるの?
でもエリカを助けなきゃ。
なぜなら一番の親友だから。
そう決心してサキは再び廃病院に入ろうとした。
「…サキ」
エリカが立っていた。
よかった。
サキは安堵した。
しかし、エリカの様子がおかしい。
「どうしたの、エリカ?」サキは言った。
「あのね…サキ…サキに謝らなきゃいけないことがあるの?」
「何?」
「私ね…サキの彼氏と…浮気した。ごめんなさい。すぐ謝りたかったけど。なかなか勇気が出なくて。浮気したこと、すごい後悔してる。ごめんなさい」
「…いいよ。許す」
「ほんと?」
「うん。だってエリカは私の親友だから」
「…じゃあ、なんで殺したの?」
「え?」
「バラバラにするほど憎かったの?」
サキはそこで気付いた。
あのバラバラ死体はエリカだったことを。
サキはエリカが浮気をしたことを知っていた。
本当に許そうと思った。
でも、手術室の色んな道具を見たときに…。
衝動だった。
サキは廃病院の外で血まみれで一人佇んでいた。
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