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モネの世界に触れる「モネ 睡蓮のとき」展訪問レポ

元学芸員なのでたまには展覧会訪問記もお届けしています。

国立西洋美術館にて、2024年10月5日から開催されている「モネ 睡蓮のとき」展は、クロード・モネの晩年に焦点を当てた日本最大規模の展覧会です。この展覧会では、モネの代表作である「睡蓮」をテーマにした作品が一堂に会し、モネがどのようにして自然を描き、どのように視覚的な探究を深めていったのかを堪能することができます。

モネは印象派を代表する画家として知られていますが、その晩年には「睡蓮」を中心とした独特のスタイルを確立しました。本展では、日本初公開の作品も含め、モネの作品が多数展示されています。今回は、その見どころについて詳しく紹介していきます。

モネの晩年の探究心—「睡蓮」に至るまで

クロード・モネ(1840-1926年)は、そのキャリアの大半を自然の光と色彩を追求し、風景画を描き続けました。彼の作品における水や水面の描写は、彼の晩年に向けて特に重要なテーマとなります。本展では、モネの代表作である「睡蓮」に焦点を当て、その過程をたどることができます。

展示の始まりでは、1890年代後半にモネが水をテーマに描いた作品群が紹介されます。ここでは、セーヌ河やロンドンの風景を描いた作品を通して、モネがどのように水面に映る光や空気を捉えていたかを観ることができます。

写真撮影は3章の展示室のみしか許可されていないため、チラシ写真や撮影が許可された画像で解説します。

《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出》1897年

その後、モチーフはセーヌ河から彼の庭にある睡蓮の池へと移り、モネの晩年に向けてより深い探究が始まります。モネの探究心が最も表れた「睡蓮」シリーズは、彼の自然に対する感覚や、視覚的なイマジネーションを感じることができる名作です。

第2章の展示室では1914年にふたたび制作活動に取り組み始めたモネが、庭に咲いているアイリスやアガパンサス、キスゲ、藤、薔薇などの植物をテーマに描いた絵が展示され、細やかな観察眼を鑑みることができます。

左:クロード・モネ《藤》1919-1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、右:《ばらの庭から見た家》1922-1924年頃 マルモッタン・モネ美術館


モネといえば、睡蓮のイメージが強いですが、他の植物の描写も素晴らしいものです。(写真撮影できずすみません)。


楕円形の部屋で体感する圧倒的な睡蓮

この展覧会の最大の見どころの一つは、第3章の展示室のモネが晩年に描いた巨大な「睡蓮」装飾画の再現です。展示室に足を踏み入れると、楕円形の壁に囲まれた空間が広がり、そこに展示された「睡蓮」の作品に囲まれながら、まるで池の水面に立っているかのような感覚を体験することができます。

まるで、オランジェリー美術館の「睡蓮の間」のような体感ができる場所です。オランジェリー美術館の「睡蓮の間」の作品は壁紙のように一面を覆って展示されています。

オランジェリー美術館の「睡蓮の間」はこちらの映像をご覧ください!

この3章の展示室は、モネが夢見ていた大規模な作品の構想を具現化したものであり、彼が描こうとした自然との一体感を強く感じさせます。特に、2016年に発見された《睡蓮、柳の反映》も展示されており、モネの細やかな観察力や自然に対する愛情が伝わってきます。

以下のような小品がこのドーム型の展示室に点在して、展示され、それらは独自の「睡蓮の間」を創りあげているのです。

この部屋のみ、写真撮影が許可されています。

クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ

こちらはゆったりと味わってほしい空間ですが、あいにく混雑しており、全体の写真を撮ることができませんでした。

モネの睡蓮の雰囲気をより体感されたい方は、開館と同時にまず第3室に行き、ゆったりと作品鑑賞と写真撮影し、第1章の展示室に戻って、鑑賞することをおすすめします。


白内障と向き合う晩年のモネ

晩年、モネは視力の衰えに苦しみながらも制作を続けました。彼は白内障を患い、色彩感覚が変化する中でも、自然の美しさを追求し続けました。特に、この時期に描かれた小型の作品群は、モネがどのように逆境を乗り越えたかを物語っています。

第4章で紹介されている《日本の橋》や《枝垂れ柳》は、モネの視覚が変容する中での独特の色彩と力強い筆遣いが特徴です。視力の変化が作品に与えた影響を感じながら、彼がいかに探究心を失わずに制作を続けたか、その熱意を感じ取ることができます。

クロード・モネ《日本の橋》1918年 マルモッタン・モネ美術館、パリ

私自身も強い近眼と乱視のため、モネの見え方にはとても共感できる部分があります。このように見えるということをとても理解した上で、改めてモネの色彩感覚の凄さを実感しました。


モネの感情を映し出す「枝垂れ柳」

展覧会の締めくくりとなるエピローグでは、第一次世界大戦中に描かれた〈枝垂れ柳〉をテーマにした作品が展示されています。幽玄な柳の枝が描かれたこれらの作品は、モネが抱いた悲しみと感情を象徴しているように感じれます。特に、戦争の悲劇や個人的な喪失感が、作品に強く反映されています。

大作で圧巻のラストに展示された作品でした。

左:クロード・モネ《枝垂れ柳と睡蓮の池》1916-1919年頃、右:クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ

この展覧会は、モネの晩年における進化と探究心を感じることができ、彼がいかにして自然との対話を続けてきたかを体感できる特別なものとなっています。

パリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開となる重要作品を含む50点が展示されています。日本過去最大級の「睡蓮」が見られる展示の機会をお見逃しなく。


ミュージアムショップでモネの世界を持ち帰る

す。しおりやリングノートなど、美しいデザインのアイテムを手に入れることができるので、展示会の思い出としてお持ち帰りください。

しかし、列に並ばないと購入できないほどの人気でした。並ばなくても、通常のミュージアムショップでもモネのグッズを購入することは可能です。オンラインショップでも、トートバックやマグカップ、コースター、絵葉書などを手に入れることができます。


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kaze akane ビジュアルマーケティング&Pinterestスペシャリスト
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