母が脳幹出血で倒れた話【当日 その1】
2月23日(日)
私は朝から仕事だった。出かけようと自室からリビングに出ると、母が朝食をとっていた。母は2日ほど前に旅公演から東京に戻ってきたばかりで、まだ荷ほどきが終わっていないスーツケースが置いてある。
「行ってくるね」と声をかけて家を出た。それ以上の会話はなかった。
この時はまだ、たくさんある日常のワンシーンだった。
母は、翌週に控えた東京公演に向けて、劇団事務所で仕事をしていた。最近はデスクワークなら早めに切り上げることが多かった母が、夜10時を過ぎても帰ってこないことに若干の心配を覚えつつ、公演前なら仕方ないかと思っていた。
夜11時過ぎ、携帯が鳴った。
発信元は母の携帯。何も考えずに電話に出ると、電話口は劇団の人だった。
「なつこが倒れた。怪我はない。呼吸はある。救急車を呼んだから、搬送先が決まったらすぐ連絡する」
持病らしい持病もなかったため、驚きはしたものの、酔って転んで頭を打っただけではないか、とあまり深刻には考えていなかった。意識はないのだろうとは思ったが呼吸があれば命に別状はないだろうと。そう思っていた。
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母が脳幹出血で倒れた話
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