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akaneおすそわけ郵便 第二回「有頂天のはじまり」
昨夜書いた記事をサポートして頂いた。その時の私は、まさに有頂天を地で行くよろこびに小躍り、いや、躍り狂っていた。
「自分が好きで書いた文章に、お金を頂けるなんて。」
仕事の文章ではなくて、ただ書きたいから書いた、純粋な欲求から生まれた言葉に対価が支払われるなぞ、奇跡でしかない。
こんなに嬉しかったのはいつ以来だろう。二十年ほど前、はじめてギャラリーで自分の作品が売れた時のことを思い出した。あの時、私は六百円で自作のぬいぐるみを売っていて、誰かが買ってくれるとは思いもしなかった。
あれがはじまりで、これもはじまり。
今までずっと声をかけて頂いてメルマガや同人誌に寄稿しても、それはボランティアのような物で、仕事として引き受けない限りは、エネルギーは一方通行でも致し方ないと考えていた。書くことや作ることをいつも応援してくれる人たちは居たのだけれど、実体があって販売される形を取らない限り、好きな文章を書いただけではお金にならない。そう思い込んでいた。ただ、書く場があれば、それだけで嬉しかったから。一人でも読んでくれる人がいれば、それだけで幸せだったから。
それが今、自分の書いた物にすっと手が差し伸べられて、その手の平には五百円玉があって、私は有頂天になる。
「そうか、書くだけでもいいんだ。本の形にしなくても、手で触れられない物でも、私が仕事モードに入らなくても、価値を見出してくれる人はいるんだ。」よくよく考えたら、自分は音楽や演劇、映画やボディーワークにちゃんとお金を支払ってきた。どころか、仕事で文章を書いて来たし、今はファシリテーターという仕事でお金を稼いでいるのに。
「私が好きなことを自由に書いても、お金は貰えない。」
自分で勝手にそんな枠を作っていたことにやっと気づいた。よろこびから生まれた文章だけでは足りなくて不安で、印刷しなきゃ、製本しなきゃとどんどん自分で付け足して、商品にしようと頑張ってきた。
その流れから外れたところに、今、新しい道をみつけて、私は嬉しくて嬉しくて仕方がない。
さぁ、高々と五百円玉を掲げて、新たな有頂天をはじめよう。
*注:過去の作品は「ハラゴメゴコロ」というサイトにまとめています。お腹にお米の詰まったカエルのぬいぐるみ、けろりいぬ(通称けろ)の愛と冒険を写真と文字で綴り、和綴製本で写真絵本や雑貨を作っていました。おかげさまで、ハラゴメカエル生誕から今年で二十年、今はけろを家族として可愛がるだけで制作を休んでいますが、二十歳のお祝いをすればよかったなぁとしみじみ。もし、これを読んでくださって、ご興味をお持ち頂けましたら、嬉しいです。
http://www.haragome.jp
【今日の一枚】二十年ほど前に、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館で購入した物。美術館の収蔵量が多すぎて、実物を見たのか、わかっていない私です。
【akaneおすそわけ郵便】は、大橋あかねが三十年以上かけて集めたポストカードに、自分の日常や愛するモノについてなど、その日の気分で書きたいことを書いて郵送でお届けすると云う企画です。こちらは、そのnote 版。今日もおつきあい頂いて、ありがとうございます。
(C)akane ohashi 2019
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