おすそわけ日記 231「夏の中に居る」
向かい合った母が、「あの雲、山みたいだね」と言う。
振り返ると、三角にそびえる雲が目に映る。
富士山みたいに。
蝉の声が随分と騒がしい。
寝転がって、目を瞑って、思いきり身体を伸ばして。
夏の中に居るのを感じる。
このまま、寝入るように命が尽きたら。
頭を巡らせても、悔いはなく、満ち足りている。
少しの間に雲は流れ、前とは違う空を形づくる。
想いも湧き上がっては流れ、私の内が違う色に染まる。
夕暮れ時、黒い雲が空を塞ぐ。
微かな遠雷の響きは、気のせいだろうか。
まだ糢糊とした想いを、電灯の灯りが艶消す。
空も、雲も、もうどうでもいいような気持ちになって。
ただ、変わらず、夏の中に居る。
【今日の一枚】山のような雲は、作り物を見ているかのごとく。
【#つづく日々に】のタグをつけて、日常で心ときめいたことを投稿中。日常のよろこびをみんなでシェアしあって、笑顔が増えたら嬉しいです。
いいなと思ったら応援しよう!
毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。