無題
結婚していた時、私は海の近くに住んでいて、車で出かけたカフェで、夕暮れの風景を見ているのが好きだった。
私に海は似合わないのに。
何故だろう、私の人生の転機は、いつも海と共に訪れる。
四十代半ば、沖縄で満月を見たくなって、十日後、小浜島で満月を眺めていた。
歌って踊って、形にならない物に自分が惹かれているのがわかって、アロマの勉強を始めた。
五十の年、ハワイ島でAFPのリトリートに参加した。
帰って来て、結婚したい自分に気づいて、婚活をして結婚した。
どれも唐突過ぎて、自分への説明さえ出来ない。
ただ、今になって私は、海を見るようで、空を見ていたんじゃないかと思う。
広い広い、空を見たかった。
街で生まれ、街で育ち、一人、風を感じ、空を見上げながら歩くのが好き。
一人で居るような、居ないような、街の孤独に浸るのが好き。
それでも、ごく稀に、電線のない空を見上げたくなるのかもしれない。
この孤独に、寂しさを感じていると、思い出してしまうのかもしれない。
どこかに、誰かに、手を伸ばしたくなって、無闇と広い空を見上げたくなる。
そんな自分に、今ようやっと気づいて、少し涙を流す。
ほんとうは、今も、家の窓から広い空が見えてるんだ。
海に映る空の色が見えてるんだ。
それでも、ここではない、どこか別の場所で。
別の私で。
広い空を見上げたいと思ってしまう。
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毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。