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tabiwa鳥鐵旅ノススメパスで楽しみました編。

tabiwaを使った鳥取県旅行の想い出について、お話しします。


特急スーパーはくと
鳥取砂丘

旅での感想を述べるという、ありがちなブログ回再びです。
今回ご紹介するのも前回と同じくコチラ、JR西日本グループのMaaSアプリである「tabiwa」でございます。
JR線を含めた複数のフリーきっぷのほか、有名観光地の電子チケット、お得な割引などを提供。
これらはすべてスマートフォン上で購入・管理が可能であり、まさに現代のMaaSといった目新しいサービスです。
(さらにICOCAで改札が済むのなら文句無いのだけれど…いちいちスマホを取り出さないといけないのはメンドクサイ…!)

具体的にはこの「鳥鐵旅ノススメパス」を用いて、鳥取県内1泊2日の旅をしてまいりましたので、その記録です。
お値段4,500円也。3日間有効。
や す い !

本乗車券は県内の路線バスがほぼ乗り放題(←マジ?)でありましたので、JR線と若桜鉄道にも乗りつつ、県内バス路線を活用した観光を堪能して参りました。
tabiwaの楽しみ方の、ひとつの参考になれば幸いです!


大山山麓の農村景観!所子編。

山陰本線大山口駅
ホームから望む。

おはようございます。ここは鳥取県西伯郡大山町にある大山口駅。
岡山駅から旧型やくもに乗って陰陽連絡、伯耆大山駅で乗り換えて山陰本線に揺られてしばらくの処です。
駅からは弓ヶ浜のうねりと島根半島の陰影がしっかりと観察でき、お天道様に迎えられた旅の始まりに胸を躍らせます。

大山町所子
大山町所子

駅から歩いて10分ほどで最初の目的地に到着。
圃場整備されていない水田の間を抜けて集落往来に至ると、ここに来て雰囲気が一変。
ここは大山町所子の重伝建地区、農村集落。
通りに面して棟を平行に並べる主屋と敷地を塀や生垣で囲う屋敷構えが特徴です。

大山町所子
大山町所子

集落の中心地には大山への参詣路である坊領道が通り、それに平行して長屋門や厩舎が敷地前面に置かれていることがよくわかります。
江戸時代中期以降に門脇家を中心とする新たな家屋群が形成され、南東のカミ、北西のシモに空間的な区分が為されています。
コチラはシモの門脇家の諸家。
重厚な農家建築から往時の繁栄を偲ばせますね!

大山町所子
大山町所子

なにより、外部の旅行者が一見しても清らかな水路が集落を縦横無尽に張り巡らされ、潺湲なる水音がスゴイ。
豊かな水量から霊峰・大山の恵みを感じますし、阿弥陀川の火山麓扇状台地という典型地形にもなんとなく実感がわいてきます。

大山町所子
大山町所子

‥‥‥などと、観光客の居ない長閑な集落で怪しさいっぱいに眺めていると、地元の方に話しかけられ。
なんと件の門脇家のご当主ということで、びっくり。
限られた日にしか公開されていない民家を外観だけですが案内していただき、写真を撮ることも快諾いただきました。

大山町所子
大山町所子

そしてご自宅で軽く饗応していいただき、私が町歩きに関心がある旨を伝えると、重伝建地区内をぐるっと案内してくれることに。
ありがたい‥‥‥!ありがたい‥‥‥!

こちら写真の坊領道沿い、現在は水路上部はコンクリートで固められていますが、当時はこの境界石に向かって「大橋」が懸けられていたとのこと。
ご当主は少年期にこの水路でモクズガニ獲りをした記憶を懐かしそうに語ったほか、この大橋には死体が通れないという禁忌があり現在も霊柩車が通れないという、興味深い風習を教えていただきました。

大山町所子
大山町所子

社叢が見えるのは上賀茂神社
シモには同じく下賀茂神社(糺神社)があり、カミ・シモそれぞれにとっての信仰の拠り所になっていた情景が伺い知れます。
ご当主によると明治期には上社へ合祀されたそうで、そのときに各家の氏神や屋敷神も連れていかれたということ。
これを語る旧家のご当主自身にも氏神意識が既に失われてしまっているというのは、現代社会の悲哀が感じられますね‥‥‥。

大山町所子
大山町所子

先のカミ・シモは上下賀茂神社の「神さんの通り道」と呼ばれる帯状の空間を挟んで向き合っていて、神域と捉えて現在でも建物を作らないそうです。
そしてこの事実は、ご主人曰く重伝建登録に際し文化庁による調査が入ったときに初めて認知したということ。
写真だとなかなかにわかりずらいですが‥‥‥いざ現地で目撃すると、なんとなく理解できるものかと存じます。

大山町所子
大山町所子

改めて集落内を見渡してみると神の境界である注連縄が主に坊領道に向けて張り巡らされており、大山に抱かれた集落の原風景を想起できる気がします。
そんな、緩やかな台地傾斜面に広がる、閑静な農村集落。
古い家屋が多いというよりは、自然条件と信仰に裏打ちされた統一的な風致に独特の「古さ」を感じる‥‥‥。
こんな経験ができました。


地名から往時を読み取け!打吹玉川編。

倉吉市打吹玉川
倉吉市打吹玉川

山陰本線とバスを乗り継いでさらに東へ、引き続いて重伝建地区散策の時間です。
目的地は名前だけはどこかで聞いたことのある倉吉市
「古い町」にありがちな町家建築を目の当たりにし、一体どんな町並みが広がっているのだろうと一本裏通りへ進むと‥‥‥

倉吉市打吹玉川
倉吉市打吹玉川

見覚えのある倉と小川の風致が出現。
そう、これこそが倉吉市打吹玉川の重伝建地区。商家町。
地区南部の打吹山は中世の山城跡ですが、元和の一国一城令にて廃城となった城下町に寛永九年(1632年)に鳥取池田藩の家老が入り、さらに倉吉往来・沖山往来・八橋往来・備中往来など交通網の結節点であったことから近世を通じて商業都市として発展しました。

倉吉市打吹玉川
倉吉市打吹玉川

訪問当日に町歩きイベントをやっていたこともあり、町全体が賑わっている具合で往時の光景をなんとなく偲ばせます。
全体的に軒の高い町家建築が連なり、切妻・平入が基本で厨子二階乃至二階建て。
軒まわりの海老状の細工も特徴的で、しっかりと修景しつつ現役のお店が多いのは凄い。
棟割長屋風の建築もおそらくは現役で住まれているのでしょうね…… 
町全体として統一感のある赤瓦の風景が構成されていて、どこか意図的な赤瓦ヘの志向を感じつつ、山陰らしい歴史的町並みとはこういうものかと訴えかけてきます。

豊田家住宅
豊田家住宅

公開民家はコチラの豊田家住宅。1900年築。
建築に庭にと見応えのある物件でありますが、この度は地元の歴史を講談されているという名物管理人さん?とじっとりとお話をしまして。
そのお話と以下二枚の古地図からわかるのは‥‥‥

豊田家住宅の展示
豊田家住宅の展示
  • 城下町・近世以降に城下町が整備される。池田藩が鳥取に城を構えたため早くに城は無くなったが、陣屋をもとに〈旧城下町+宿場町〉として経済的に発展。

  • 当時は低湿地に内海が広がっており、干拓が行われて居住域が拡大。現在も地区東部に「湊町」「住吉町」の字名が残るのは海沿いであったことを伝える。

  • 地区西部にある「岩倉」の地名。すなわち「住吉」と「岩倉」の東西範囲内が往時の市街地であったため、その一字ずつをとって「倉吉」の地名が誕生。

倉吉線鉄道記念館
旧倉吉駅前の広場

「あまり確信を持たないように」と付け加えられましたが、成る程なァと感心しながら聞いてしまいました。
そういうわけで、山陰らしい赤瓦の町並みに往時の雰囲気と歴史ロマンを色濃く残す、ここ倉吉。
伝建築に加えて、国鉄倉吉線がかつてこの町を横断していたことを考えると、往時の繁栄と交通の盛衰を感じつつ。
次回訪問時は‥‥‥倉吉線廃線巡りもやりたいですね!


三朝&はわいの温泉寄り道編。

三徳川
三朝温泉河原風呂

重伝建巡りの後は有名温泉地を梯子します。
倉吉市街よりバスに揺られて数十分、鳥取県内有数の温泉地として名高い三朝温泉へ。
かの有名な河原風呂を眺めつつ、川沿いの雰囲気がしっかりと温泉地然としていて、アガりますね!

三朝館
三朝館

†温泉ソムリエ†の資格を保有する私としては、三朝と謂えばやはり音に聞こえし放射能泉
今回日帰り訪問した三朝館の泉質は噂に違えぬ良き放射能具合、そして飲用泉もアリ。
「浸かってよし・飲んでよし・吸ってよし」たるラジウム泉の面目躍如だァ……。

三朝館
三徳川

温泉むすめも居てかわいらしいと思った(小並感)
しかし、放射能泉は長期滞在での所謂「湯治」に適した温泉でありますから‥‥‥
次回はせめて宿泊したい!

鯉の湯
鯉の湯

バスに乗車し一度倉吉駅に戻り、さらにもう一本乗り継いで湯梨浜町ははわい温泉にて宿泊。
コチラは複数の源泉に薄めの塩化物・硫酸塩泉。
優しい泉質、すっと入ることができて気持ちがよかった。

東郷池
東郷池

はわい温泉と謂えば何よりもこの東郷池の景観。
せっかくなので朝イチで宿から山陰本線松崎駅まで、やや雨脚の中で歩きましたが、だいたい徒歩4.4kmくらい、心地よい朝露の景観を楽しむことが出来ました。

https://www.yurihama.jp/manor/
現地の解説版

さて。
どこかで見たことがある気がしてたまらない、この東郷池のかたちでありますが。
そう、日本史B選択の皆様方にはお馴染み、「伯耆国河村郡東郷荘下地中文絵図」であります。
しっかりと現地に解説看板があるのがエライ!
「あっ、ここかぁ!」となること必定であります。
近くにある中華庭園と道の駅が目印です。
ぜひ聖地巡礼をば。


「素兎」だって言ってんだろ!白兎神社編。

白兎海岸
聖母学園前バス停

山陰本線末恒駅で下車、日本神話の舞台としてあまりにも有名な白兎神社へ。
遥かなる鳥取砂丘の西端エリア、日本海の波濤を望む神社までの風景もなかなかに凄愴でありますが‥‥‥
神話を一読した身の上としては、ちょっと「白」というところが気になってしまう。

故、此大國主神之兄弟、八十神坐。然皆國者、避於大國主神。所以避者、其八十神、各有欲婚稻羽之八上比賣之心、共行稻羽時、於大穴牟遲神負帒、爲從者率往。於是到氣多之前時、裸菟伏也。爾八十神謂其菟云、汝將爲者、浴此海鹽、當風吹而、伏高山尾上。故、其菟從八十神之教而伏。爾其鹽隨乾、其身皮悉風見吹拆。故、痛苦泣伏者、最後之來大穴牟遲神、見其菟言、何由汝泣伏。菟答言、僕在淤岐嶋、雖欲度此地、無度因。故、欺海和邇(此二字以音、下效此)。言、吾與汝競、欲計族之多小。故、汝者隨其族在悉率來、自此嶋至于氣多前、皆列伏度。爾吾蹈其上、走乍讀度。於是知與吾族孰多。如此言者、見欺而列伏之時、吾蹈其上、讀度來、今將下地時、吾云、汝者我見欺言竟、卽伏最端和邇、捕我悉剥我衣服。因此泣患者、先行八十神之命以、誨告浴海鹽、當風伏。故、爲如教者、我身悉傷。於是大穴牟遲神、教告其菟、今急往此水門、以水洗汝身、卽取其水門之蒲黃、敷散而、輾轉其上者、汝身如本膚必差。故、爲如教、其身如本也。此稻羽之素菟者也。於今者謂菟神也。故、其菟白大穴牟遲神、此八十神者、必不得八上比賣。雖負帒、汝命獲之。於是八上比賣、答八十神言、吾者不聞汝等之言。

『古事記』上巻
白兎神社
白兎神社

というわけで、その毛を剥がれた兎はまさしく「素」の状態の兎であるわけですから、むしろ「肌色」というか赤みがかった色であるわけであります。
しかし現地を訪問して感じたこと、それ即ち神話の舞台というよりは殆ど観光地としてその風致に馴染んでしまっていること。
無論人びとの関心が無ければ民話なんぞは受け継がれませんし、「白」のイメージが完全に定着している以上、今更指摘しても受け入れられないというか意義もないというのが、オタクとしてはなかなか歯痒いところではありますが。

鳥取市伏野某所
淤岐之島

ワニとともに描かれた現地の学校?に描かれたイラストも、完全に「白」の兎ですからね‥‥‥
などと苦悩と妄想をしつつ、聖地巡礼と風景を楽しんだ次第であります。
無知の知!
宮田登『白のフォークロア』(1974年)を、今度しっかり読もうと思いました。


地方鉄道の景観!若桜鉄道編。

若桜鉄道若桜駅
若桜鉄道若桜駅

最後に訪れましたのは若桜町
因美線郡家駅で若桜鉄道に乗り換え約30分、ローカル線らしいゆったりとした時間を満喫できました。
若桜駅の雰囲気も終点感があってステキ!

若桜町若桜
若桜町若桜

そんな終点駅のエモさの中に重伝建地区があって二度おいしい感じ。
打吹玉川と同じく商家町。
元和の一国一城令で廃城となった城下町へ、旧若桜街道沿いの宿場町として人びとや物資が集まるように。
街道沿いの町家建築の統一感がそれっぽいですね!

若桜町若桜
若桜町若桜

町家は街道に水路を挟んで二階建ての主屋に切妻造、これは明治期の三度の大火を経験した後に顕れた景観であるとのこと。
雪国っぽい雁木下の空間、北向きに傾斜してゆったりと流れる水の音が大変に心地よいです。
文字だけでは伝えられない感動!

若桜町若桜
若桜町若桜

そして街道裏、寺院群との間を縦断する小路には白壁の土蔵群が連なります。
黒の下見板・白の漆喰・赤の瓦というコントラストがあまりにも美しい。
そして静謐なる時間の中に耳を澄ますと、れいの水の音がゆったりと聞こえてきます。
文字だけでは伝えられないので現地に行ってほしい(願望)

八東川
若桜橋

いい路地裏だった。
で、満足したのち若桜鉄道の相棒である八東川沿いをお散歩、振り返って伝建築を望むと、山間の田園の内に石州瓦の真宗寺院本堂がドーンと構えているのがザ・山陰といった雰囲気であります。
若桜橋の三連アーチ橋もキレイ。

若桜町若桜
若桜町若桜

というわけでしたので。
‥‥‥この日中に家に帰らないとだったのですが、あまりにも名残惜しいのでさっきの土蔵群路地裏へ。
ローカル鉄道のエモさと掛け合わせる歓び、いま振り返っても不思議なくらい、あまりにも印象深い道の風景でありました!


おわりに

1ヶ月後に仕事で再訪したはわい温泉
望湖楼。いい温泉宿。

以上、鳥取県内の行きたいところを並べてぜんぶ行ってみた、tabiwaを活用した旅行でありました。
私みたいに兎に角訪問スポットを稼いでいろんな交通機関を乗り降りしたい旅行者にとっては、なんだかんだこういうデジタルフリーパスはありがたいものですね‥‥‥。
こういうMaaSは周遊促進のために用いられるべきものだと私は推察してますし、今回訪問した倉吉はまさに、観光地化を頑張っているがまだ知名度と利便性が足りないといった現状だと感じましたので、もっと上手くマッチすれば良いなァと、妄想。
もっと流行れ(使命感)

全国ポケふたマンホールシリーズ。
鳥取県はサンドがご当地応援ポケモン。

もちろん観光地化に課題があるのは私自身も感じていて、今回も所子にて某ご当主さんが「農作業の邪魔になるので観光地化は望んでいないという古い考えが集落にある」と、仰っていたことを思い出します。
訪問する側としては地元を応援したい気持ちがあるので、消費の場を整備いただく程度には観光地化してほしいと、望んではいるのですが‥‥‥。
重伝建地区だと保存の問題もあるでしょうし、ウーム、悩みと学びが深まる経験となりましたね!

所子からの田んぼの風景。
若桜からの田んぼの風景。

兎角、私は鳥取県を訪問するのは2回目で、その3年前の旅行では山陰本線で横断し、観光らしい観光は鳥取砂丘に足を運んだくらいであったので、びっくりするくらい同県を満喫した2日間となりました!
ちなみに、今回利用した経路をまとめますと…

〈鉄道〉

  • 米子駅→大山口駅(山陰本線)240円

  • 大山口駅→倉吉駅(山陰本線)680円

  • 松崎駅→末恒駅(山陰本線)420円

  • 鳥取駅→郡家駅(因美線)860円

  • 郡家駅→若桜駅(若桜鉄道)440円

  • 若桜駅→郡家駅(若桜鉄道)440円

  • 郡家駅→那岐駅(因美線)590円

〈バス〉

  • 倉吉駅→赤瓦・白壁土蔵 230円

  • 赤瓦・白壁土蔵→温泉入口 490円

  • 温泉入口→倉吉駅 480円

  • 倉吉駅→湯梨浜町役場前 320円

  • 白兎橋→鳥取駅 610円 

総計して、5,800円分の利用!!!
十分元は取れましたね!ヤッス!
なによりバスでの両替の手間が減ったので心理的余裕が有難かった(小並感)
tabiwaは他にもお得そうなパスがたくさんあり、この旅より1ヶ月後、島根県横断旅にも使わせていただきましたので‥‥‥
近いうちにコチラも、ご紹介してみたいですね!

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