
tabiwaと岡山ウエストパス編。
tabiwaを使ってみた感想について、お話します。


旅での感想を述べるという、ありがちなブログ回です。
(noteへの移行時に何故かこの記事だけ投稿していなかったので、香川県に住んでいた時代の旅行記となっています。)
今回ご紹介するのはコチラ、JR西日本グループのMaaSである「tabiwa」でございます。
JR線を含めた複数のフリーきっぷのほか、観光地の体験、お得な割引などを提供。
これらはすべてスマートフォン上で購入・管理が可能であり、まさに現代のMaaSといった目新しいサービスです。
(さらにICOCAで改札が済むのなら文句無いのだけれど… いちいちスマホを取り出さないといけないのはメンドクサイ…)


さて、今回実践してみましたのは「岡山ウエストパス」。
有効期間は2日間、利用当時のお値段は3,200円で販売されておりました。
現在はその発展版の「せとうち岡山パス」として販売中。
それでもお値段3,900円也。2日間有効。
や す い !
岡山駅以西のJR線のほか、地方私鉄の井原鉄道も有効区間に含まれているので、ぜひとも訪問したい。
券名に岡山と冠してはいるものの、三原以東の広島県内交通機関も含まれており、こちらも十二分に活用したいところ。
tabiwaの楽しみ方の、ひとつの参考になれば幸いです!
尾道いい町、坂と海。


いざ鎌倉、それでは出発しましょう。
出張で広島へ来た週末の次の土曜日、すがすがしい朝です。
まずは山陽本線で一路東へと向かいます。
tabiwaの有効区間は三原駅からなので、【広島駅‐三原駅】の乗車券は別途購入です。
一昨年の18きっぷ旅以来、久しぶりに山陽本線に乗りました。
想像以上に混雑していたこと、山間の、とはいえそれなりに人口の多い集落の続く一帯に、ほつほつと石州瓦の家屋が映えるのが印象的でした。


1時間半弱で到着したここは尾道のまち。
しまなみ道サイクリングで疲労困憊の後今治からやって来た以来、なんだか懐かしい街並みです。
とはいえ、前回はほんとうにハブにしただけでしたので、今日はぼんやりと街歩きをしてみます。
眼前に望む尾道水道と煌びやかな朝日に照らされながら、記憶以上に迫られている狭い市街地に降り立ちます。
これはこれで、まさに散歩日和といった心地です。


さすがは尾道、実に実に坂のまちであるとすぐさま実感します。
駅の裏側の寺院たちをいくつか巡ろうと歩き始めたはいいものの、それなりの高低差、地元民が普段使いしているようなわかりにくい道の構造に、困惑。
登った先で出迎えてくれる寺院たちはなかなかの威容、しかしその奥山側にもまだまだ道は続いている様子です。
そして振り返ってみれば、いつもの瀬戸内の多島美… ではなく、眼前の離島ですら明らかに生活の様子が垣間見えるという、これまた不思議な感覚。
全国に「坂のまち」は数多くあれど、殊こちら尾道は、その代名詞にふさわしいといえましょう。


続いて尾道港から10:00発の瀬戸内クルージングに乗船です。
尾道港は尾道駅の目の前、対岸の向島へわずか数分の渡船もやっています。
しまなみサイクリストであればお馴染みの場所ですね!
今回のクルーズはtabiwaに料金込々、本来の価格は2,500円也。
お得感がスゴイですね!
念のため予約していましたが、客足はまばら。
穏やかな船の旅を楽しめそうです!


それでは出港。
船は尾道港から舵取り海路を進み、目的地・鞆の浦港まで島々のあいだを縫うようにして進みます。
造船所が数多く見え、巨大タンカー船たちの迫力も見どころさんのひとつと言えましょう。
新日本海フェリーで活躍中の「ゆうかり」が修理に入っていたのも驚き!
しかしながら船の進路を示すブイの間隔が狭く、水深が確保されているところは一部であると思われます。
訪問時は干潮頃でしたが、一部砂州が浮かんでいる場所もありましたからね!


こちら内海大橋。
本州から田島へかかる、一見して典型的なニールセンローゼ橋ですが、その全容はなかなかに異様。
なんと、一連の橋梁構造物が「曲がっている」のです。
即ち、海中の岩礁に合わせて橋脚を設置することになったために、各スパンを曲げつつ接続、世にも珍しい大カーブアーチ橋が現出しているのです!
こっちも水深が浅そうだァ‥‥‥。
瀬戸内随一の景勝地!鞆の浦へ。


そんなこんなで所要時間は約1時間、船は鞆の浦港に到着しました。
広島県福山市、風待ちの港として名高い景勝地として名高い、広島県内の重伝建地区のひとつであります。
しかし訪問時の私は足利義昭程度の知識量しかなく、ほぼ行き当たりばったりで訪問したのですが…


絶 景 か な
その町並みの独特の空気感が、うまく表現はできないものの、とても良い。
山がすぐ近くの背後に迫るところに狭く広がる港町、でこぼこな微高地の上には寺社というランドマーク。


目の前に見える仙酔島も、なんとも幻想的な味わいがあります。
そんなステキなまち歩きの、鞆の浦でした!
かくして。ふくてつバスで福山駅へと向かいます。
所要時間は約30分、正規料金は510円也。もちろんtabiwa区間です。
ありがちなローカルバスの情景でしたが、こういう田舎臭い空気感が好きですね、ええ。
(県下第2位の都市を田舎扱いとはこれ如何に‥‥‥?)
ローカル私鉄の哀愁!矢掛宿へ寄り道。


そして福山駅から。
JR福塩線経由、井原鉄道への直通列車に乗り、いよいよ岡山県内へと足を踏み入れます。
福山駅の改札外に出たのは初めてだったのですが、駅ナカの充実ぶりは流石の新幹線停車駅といったところ。
城跡が駅の北口目の前に迫っているのも印象的だ!
そして乗り込むのは井原鉄道のアート列車。
百式拓也さん並みに光り輝くその車体に驚きつつ、ありがちで、好き好んで訪れたいあの田舎の風景へ、車窓は移り変わります。


井原鉄道はほぼほぼ高架上を走ります。
さほど深くない、大きい河川が見当たらない穏やかな谷間をゆっくりと進み、辿り着いたのは矢掛駅。
同区間もちろんtabiwa込みで正規料金は750円也。
お得感が良いですね!
やっぱ‥‥‥私鉄のローカル旅を、最高やな!


岡山県小田郡矢掛町。
私は鉄道でしか旅をしないので、もちろん初訪問のまちです。
しかしこの雰囲気は旧街道沿いのまちだな、現国道そばの旧道に古い家が残されているはずだなと、半年前に旧東海道歩きをしたガタイで分析。
駅から10分ほど南へ歩きましょう。


あ り ま し た
これが旧山陽道・矢掛宿重伝建地区だ!!!
こういうのでいいんだよこういうので
騒がしすぎず広すぎない観光地に、地元民が努力して保存しようとしている旧家たち、その独特の空気感。
かつて訪れた旧東海道の蒲原宿、あるいは吉野川河畔の脇町に似た趣を感じます。
こういう街道のまち並みが好きなんですよねぇ、私。
せっかくなので本陣跡にお邪魔します。
本陣というのは、宿場町のうち大名や門跡など高貴な方々がお泊りとなるような場所で、いわば宿場町の中心となるランドマーク的VIP専用ホテル。


いいまち歩きだった…
そんな余韻で全身をズブズブに浸しながら、再び井原鉄道に乗り込みます。
気動車は一路東へと進み、豪快な高梁川を渡るとそこはもう岡山市都市圏。
清音駅で井原鉄道は終了、さらに一駅直通で伯備線総社駅で下車します。
言うまでもなくtabiwa使用区間であり590円お得。
所要時間約25分。
擬洋風建築で締めろ!総社市編。


目的地のひとつ目はココ、市名・駅名の由来である備中総社。
(ひと駅隣り、吉備線東総社駅が最寄りなのだけれど、乗り継ぎの都合で歩きました。)
総社とは、令制国下において地域内の神社・祭神を合祀した神社のこと。
(格が高いかどうかは別問題である。)
国司があらたに現地へ赴任する際、国内にある特定の神社を順に参拝するのが通例。
その順番ごとに〇〇国一宮、二宮、三宮…と呼称するわけですが、一か国内といえど当時の交通事情ですべてを参拝していくのは、なかなかに面倒。
というわけで、国内の神々をひとところに奉じる総社を設け、国府の近くに置くことでこれを簡略化したというわけですね。
全国ごとにより複雑な実情があり、私自身そこまで先行研究に踏み込めていないので、この程度の感動でとどめておきましょう。
兎にも角にも誰もいない広い境内に多くの末社、田舎の神社があればとりあえず訪問する私にとっても、独特の空気感。
「総社」の概念自体は知っていたけれども、訪問したのは初めて。とても勉強になりました。


今回の旅行最後の目的地は、備中国総社と敷地を接するこちらの建築物。
旧総社警察署こと、総社市まちかど資料館であります。
そう、皆さんお馴染みの擬洋風建築であります。
建築年は明治42年(1909年)と擬洋風建築潮流の末期、ありがちな下見板張の外装に和瓦。
特徴的なのは、階段のある塔と【花崗岩+煉瓦】の基礎でしょうか。


全国擬洋風建築の後世よろしく、当施設はその名の通り総社市の郷土資料館をやっているようすです。
2階には知られざる総社の伝統産業・備中売薬の歴史について、詳細に展示してありました。
これがなかなかおもしろい!
「越中富山の反魂胆、鼻くそ丸めて万金丹」
堺出身の医者兼薬商・万代家。
わけあって備前に移り住み、そしてその11代目・万代常閑が偶然にも富山藩家臣と知り合い、天和年間に越中に招かれてその技術を伝授したのが、絵中売薬のルーツであるとのことです。
富山県出身の私、初耳でした。
意外なところで繋がってしまった、私と備中。よい想い出となりました。
話に付き合ってくれた管理人さん、ありがとうございました。
この後は吉備線経由で岡山駅に戻り、お家へと帰りました。
お疲れ様でした。
おわりに


以上、tabiwaを使ったフリーパスの旅でありました。
完走した感想ですが、やはり満足感が格別でした。
フリーパスで旅をするとなると、あらかじめどの列車に乗るかなど、それなりにきめ細かく計画を立てるわけですが。
その計画がうまくいったときの達成感、それなりの冒険をしつつ無事に家に帰ることができたのだという実感は、何にも代え難いもの。
途中に思い付きで予定変更しつつ、その後の予定の帳簿を合わせていく臨場感も、これはこれで楽しいですからね!


ちなみに、今回利用した経路をまとめますと…
〈鉄道〉
福山駅→神辺駅(福塩線)210円
神辺駅→矢掛駅(井原鉄道)750円
矢掛駅→清音駅(井原鉄道)500円
清音駅→総社駅(伯備線)190円
東総社駅→岡山駅(吉備線・瀬戸大橋線)860円
〈バス〉
鞆港→福山駅前(トモテツバス)510円
〈航路〉
尾道港→鞆港(瀬戸内クルージング)2,500円
総計して、5,520円分の利用!!!
十分元は取れましたね!ヤッス!
tabiwaは他にもお得そうなパスがたくさんありますので…
次は山陰エリア辺りで、楽しんでみたいですね!