エレファント隆史

拙文。嘘も方便

エレファント隆史

拙文。嘘も方便

最近の記事

たのしいお菓子作り♡

お菓子作り♪お菓子作り♪あなたのためにお菓子作り♪ 甲高い、可愛らしい女の歌声が聞こえる。リビングに寝そべった状態で右手を精一杯伸ばして、スピーカーの電源を切る。そのまま目をつぶって体の力を抜く。 あなたのためにお菓子作り、か。 可愛い。だけど、そんなの幻想だ。 黄色い液体に、小麦と甘ったるい粒を寿命が縮んでしまいそうなくらい放り込んで、ガシャガシャと泡立て器を動かす時、私の頭の半分は死ねで埋まっている。 死ね。死ね。死んで。誰にだ?わかんない。死ね。死ね。しね。ころす。

    • 鳥籠

      一、 西武新宿線の各駅停車を降り南口へ出ると、商店街が広がっている。昼時をとうに過ぎた街は、休日であるにも拘らず人通りはまばらであった。緑色の看板を掲げる定食屋の老婆が大きなあくびをしている。一瞬目があって、すぐに逸らす。近所の高校からは、合唱部であろうか、見事な「旅立ちの日に」が聞こえた。私は3カ月前に合格通知の届いた大学から課された事前課題をこなすため、初めてこの地に降り立った。スマートフォン上で動く青い矢印を見ながら目的地へと向かう。商店街を抜け住宅地に差し掛かると、い

      • どっちが優しい?

         人の優しさを惜しみなく注がれてきた人間と、人の邪悪さに虐げられてきた人間、どちらがより他者に優しい人物となり得るだろうか。 人の優しさを惜しみなく注がれてきた人間  彼らは、つまり「優しさ」が当たり前の世界に身を置いてきた人物だ。そうなれば、彼ら自身も他者に対して、意識せずとも当たり前に優しさを与えられる人物となり得る、というのは当然の推察だろう。  ただ、彼らは「優しくされる」ことが当たり前なのであって、それが「優しくする」ことが当たり前との考えへ結びつくとは限らない

        • 好きだけど聴くたびもやもやする歌詞①

          「君が太るべきたった一つの理由」 /3markets[] これは、3markets[]のアルバム「ニヒヒリズム」(2021.1.6)、5曲目に収録された楽曲である。私は当該楽曲を概ね好意的に評価したが、以下に示す歌詞に限定しては懐疑的である。  君のこと誰も選ばないように   君よ太れ もっと太ってくれ 誰からも選ばれない「太った人」  まず疑念を抱く点としては、「君のこと誰も選ばないように君よ太れ もっと太ってくれ」(以下、当該歌詞)は、太っている人間は異性として魅力