八月雑記 ないない探検隊から虚俳句
あるある探検隊のリズムに乗せて ないない を言う、という遊びを頭のなかでしていた。
「入口ばかりの街を出る」
「サラダの仮免取りに行く」
「三点入って勝ち豆腐」
「小さな鏡に眉を描く」
「改札空振りカスタード」
「レンタルギプスで風をきる」
「箇条書きだとカッパ巻」
「珈琲知らずに紐を置く」
「石を返してアルマジロ」
「ちょうど黒電話の重さ」
無い状況、無い組み合わせ、なんとなく出てきた意味のあるようで無い言葉。
八五、頭に一拍あるものは七五になっているので、これに五の季語をくっつけたら俳句になるのではないか。
フレーズから季節を感じ取り、高校の頃に俳句部で使っていた季寄せをぱらぱらとめくり、合いそうな季語を掛け合わせた。
寒桜入口ばかりの街を出る
春日和サラダの仮免取りに行く
蝉しぐれ三点入って勝ち豆腐
夜長し小さな鏡に眉を描く
カーニバル改札空振りカスタード
冬の果レンタルギプスで風をきる
夏負けて箇条書きだとカッパ巻
秋夕べ珈琲知らずに紐を置く
日向ぼこ石を返してアルマジロ
冬銀河ちょうど黒電話の重さ
意味があるようで無い俳句、虚俳句が出来た。
こじつけで自句自解をしてみた。
【寒桜入口ばかりの街を出る】
趣味や資格など何かを始めよと訴えかける入口が多くある街、良く言えば選択肢の多い街を、それでも、だからこそ、出ていく気持ちを、春ではなく冬に咲くという桜に重ねた。
【春日和サラダの仮免取りに行く】
のほほんとした日。サラダなんて自由に作れるのに、あえて仰々しくしてみる。それくらい暇な日。
【蝉しぐれ三点入って勝ち豆腐】
何の勝負かはわからないけれど、やいのやいの野次を飛ばしながら観ているだけで、そいつの行動は勝敗に一切関わらないけれど、そいつは勝敗を勝手に自分の飯に関わらせている。
【夜長し小さな鏡に眉を描く】
顔ではなく鏡に眉を描く。それが『眉を描く』の本質なのかもしれない。そこまで行き着いてしまった透き通った夜。
【カーニバル改札空振りカスタード】
放り投げて楽しい感じ。カーニバルは夏の季語なんだって。
【冬の果レンタルギプスで風をきる】
骨が折れていないけれど巻きたくて巻いているギプスを利き腕じゃないほうの腕につけてぶんぶん歩いている。
【夏負けて箇条書きだとカッパ巻】
夏バテで箇条書きでしか考えられなくて、寿司もカッパ巻がちょうどいい。
【秋夕べ珈琲知らずに紐を置く】
秋の夕べに本を読みふけっていて、淹れた珈琲も忘れて読んでいて、本の中間辺りで出てきた栞紐をどかして机の上に置いて、尚も読み続けている。
【日向ぼこ石を返してアルマジロ】
やるべきことは終えたのでほっといてくださいと、ハリネズミほどではなくアルマジロくらいの感じで、日向ぼっこしている。
【冬銀河ちょうど黒電話の重さ】
冬銀河は、ちょうど黒電話の重さ。