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いつかきっと思い出す日

 日光に照らされ明るくなった部屋、重たいまぶたを無理やり開け目を覚ます。

心なしか頭も重たい。

どうやら昨日飲んだお酒が抜けきってないらしい。

自分が飲める量を毎回少しだけ越えるせいで、次の日不快じゃない程度の頭痛と共に起床することになる。

充電されたスマホを手に取り、電源をつける。

1件のLINE。

「誕生日おめでとう」

またひとつ歳を重ねました。

だからといって別になんの特別な予定もなく。

顔を洗って、歯を磨いて、髪を直して。

朝ご飯食べて、机に向かって、頭抱えて。

さすがに少し違う日にしようと思い、普段より少し服装に気を遣い祖母のいる老人ホームへと出発。

バスを待つ間あまりの暑さに耐えかね、自販機で飲み物を買う。

商品を一通り見渡し、お茶を買うことを決意。

こういうときに少し前ならジュースを買っていたが、お茶を選べるようになったあたり成長を感じる。

お金を入れ、お茶のボタンを押すと、ガタンと音を立て落ちてくる。

取り出し口を除くと何故かそこにはコーラがあった。

不思議に思いつつも取り出すと、さらに落ちくるお茶。

なぜか手元に2本のペットボトル。

誕生日、自販機面白体験スタート。

きっとコーラに殺された祖父からのプレゼントだろうと思い、ありがたく頂戴した。

バスに揺られ、老人ホーム着。

一ヶ月ぶりに会う祖母。

一時に比べればだいぶ元気そうで安心する。

会ってすぐに全くの別人の名前で呼ばれる。

認知症である。

調子の良い日ならちゃんと名前も覚えていてくれるが、基本的に別人の名前で呼ばれることが多い。

こちらの声もあまり聞き取ってもらえないため、基本的に会話は一方通行。

終始変なことを言っているので、こちらもそのたびぼそぼそツッコんでしまう。

気分は陣内智則。笑いのニューウェーブ。

一通り話し終え、満足しながらバスに揺られる。

 その後、せっかく誕生日だからと祖父がご飯に連れて行ってくれた。

断っておくが、これはコーラに殺された祖父ではない。

母と祖父と三人でビールを飲んだ。

お酒自体そんな好きではないが、孫と飲めて嬉しそうな祖父を見るたび、お酒も悪くないなと思う。

美味しい料理と美味しいお酒と、楽しい方の昔話を終え店を出る。

ずっと欲しかった本を一冊買って帰路に着く。

家に着いてもまだ夕方で少し得をした気分になる。

ビールが巡り眠気に襲われ、うとうと。

そんな何も起こらない誕生日のお話。

豪華なディナーとか、盛大なサプライズとかがない静かな誕生日。

静かだけど確かな幸せ。

何かが変わる1年になりますように。

あ、今日満月だってよ。あとTwitterを始めました。何卒。

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