真冬の七夕
この世界で一番好きなバンドのライブに行ってきた。
年に数回しかないライブで、本当に楽しかった。
もともとワンマンライブを夏と、冬にあるかないか、くらいのバンドで、ここ数年は冬の回はほぼ無くなっていた。昨年の夏にもライブがあって、それも楽しかったのだがなんといっても数年ぶりの冬のライブ。ワクワクした気持ちで赴いて、心から楽しく音に乗り、たくさんの愛をもらって、今帰路についている。
数年ぶりだからなのか、昨年の夏のライブからもよりいっそう、本人たちが楽しそうに見えた。
コロナ禍、声出しが禁止されていて出来なかったこと。声が出せないからやらなくなった曲。すべてができて、喉が痛くなるほどたくさんの声を出した。
好きな音楽もバンドも沢山いるが、このバンドを見るといつも自分の原点だなと感じられる。もう人生の半分ほど、このバンドを愛して生きてきたようだ。
バンドの活動も17年目に突入しており、自分が出会ったのは活動2年目か3年目なので、相当長い付き合いになってきた。
本人たちはバンド名でもある夏のライブを、77周年まで続けると言っているので、向こう60年は夏の予定がひとつ埋まっていることになる。
幸せだ、と思う。しみじみと。
今日はだいたい3列目くらいに体を滑り込ませられたので、メンバーの顔が良く見えたし、たぶん、きっと何度か目が合ったと思う。
ずっと歌ってきて、声出し禁止とともに封印されていた定番のラストナンバーを歌う時、ボーカルとおそらく目が合って、それからその人がきゅう、と目を細めてくれたことが、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
まわりがボーカルに目線をやる中で、コーラスパートを歌うベースに目線を送っていたら、これまたおそらく目が合って、ふ、と笑ってくれた。
ドラムの真正面にいたから、激しく演奏している合間に客席に目線をくれるたびに、まず目が合っていた。
ライブ中に目が合う、ということが、傲慢な思想なのはいつも分かっているのだけど。でもその傲慢さが生きる力になるのだから、それくらい許されていたい。
大好きなバンドのメンバーが、楽しく演奏をしている。そして、その一瞬を彩る末席に、自分がいたら嬉しいなと思う。
愛を沢山もらって帰っている。多幸感に満ちている。今ならなんだって出来そうだ。
バンドのことを思いながら、名前の由来となる日のことを書いた短歌をおいておく。
自分は夏のことが好きではないが、この日があるから夏が来るのを楽しみにすることが出来ている。
77周年までバンドメンバーも自分も、健康で生きていることを願う。