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”ハリボテ男に160万票” 都知事選と石丸現象で知っておきべき3つのこと

都知事選「祭りの後」 



様々な石丸現象が語られていますが、個人的に面白いと思ったのがJBプレスの記事でした。

記事は『「小池圧勝」の都知事選でなぜ「知名度ほぼゼロ」の石丸伸二氏は蓮舫氏を圧倒できたか』という対談記事です。一般的に語られているSNS利用とか若者層に刺さったという解説ではなく、プロらしい視点がふんだんに盛り込まれた記事でした。対談しているのは米重 克洋(よねしげ・かつひろ)と山本雄史さんの二人。米重氏はJX通信社 代表取締役で選挙情勢分析の専門家、山本氏は豊富な人脈を活かして政ロビイストとして活躍する人物です。


 
記事の注目ポイントを5つあげたいと思います。
 

①   小池圧勝の戦術 


これについては米重氏が小池氏が蓮舫氏とのマッチアップを避けて「小池vsその他大勢」の構図に持ち込んだことが勝因だと分析しています。山本氏も「蓮舫さんが出馬表明したときには小池さんも一瞬ヒヤッとしたと思います。蓮舫さんの出馬表明は自民党候補に逆風が吹いて敗れた静岡県知事選の翌日でした。蓮舫さんはその「反自民」のムードを利用して、自民党と連携しようとしている小池さんを追い詰めようという意図があったと思います。そこに危機感を感じた小池さんは、予定していた出馬表明の時期を先送りし、蓮舫さんへの注目度が落ち着く時期を見計らって出馬を宣言した」と分析しています。確かに蓮舫氏は小池氏が出馬宣言しないことでジレはじめ政策発表で迷走してました。

 個人的な分析で言えば、蓮舫氏は対立構図でこそ存在感を発揮する政治家です。それ以外では強みがなく、小池氏はそこをうまくいなした。つまり出馬時で勝負あった、ということだったわけです。

 

②   SNS選挙の二重構造



石丸氏といえばYouTubeですが。米重氏の調査によるとYouTubeは政治に大きな影響を与えるというんですね。X、TikTokといった媒体をあげて、「投票の参考にしますか」「政治や社会の情報源として何を一番に使っていますか」と尋ねたところ、YouTubeを政治や社会の情報源に使っているという人は非常に投票意向が高いという結果が出といいます。新聞をメインの情報源にしている人が投票に行った率は7割、YouTubeをメインにしている人も6割超だったそうです。YouTubeが政治に大きな影響を与えるメディアになった、ということようです。

一方で山本氏は石丸氏の昭和的戦術について指摘しています。石丸さんの選挙参謀には、藤川晋之助さんという元大阪市議会議員で、もともと田中角栄一派の秘書出身の方がついていることが知られていますが、山本氏は「ネットを駆使する一方で昭和風の遊説スタイルに徹したんです」と指摘しています。

蓮舫氏は一日2~3回程度を、大きいターミナル駅の前などでやるスタイル。それに対して石丸氏は一日に10回くらいは転戦して、しかも一回の演説が10~15分くらいと短かった。

山本氏は「それこそが旧田中派の辻説法スタイルなんです。「戸別訪問3万軒、辻説法5万回」が田中角栄の教え。コンパクトな辻説法をこまめにやる。極めてオーソドックスな遊説スタイルなんです」と指摘しています。これは僕も田中真紀子の選挙を取材したときに実感したことで、選挙に強かったときの真紀子氏はスーパー駐車場や住宅街など細かく真紀子氏も演説していた。しかも目白御殿のお嬢様なのに、ポロシャツに地味な恰好でビールケースの上で演説したりする。目線を低くしているんだな、と関心しました。

 つまりネットPRで若者層を取り込み、ドブ板で中高齢者の関心を呼ぶという二方面展開だったことが、蓮舫氏をうっちゃった一因だったようなのです。

 

③   石丸氏を支持する人



米重氏はこう解説しています。「石丸さんの支持層はイデオロギーの枠にとらわれない、ポピュリズム的傾向を持つ人々が大勢を占めています」と。ポピュリズム(英: populism)とは、政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、人民に訴えてその主張の実現を目指す運動とされています。大衆迎合とも置き換えることができまずが、幅広く国民に訴えられる政治スタイルである一方で大衆の利益を安易に追求することで社会的弱者の人権が侵されたり、社会的分断を招く危険もあるとされています。ポピュリズム政治家の代表例がトランプ元大統領ですよね。メディアのスターであると同時に、激しい社会対立を生むというデメリットもあった。石丸氏が「政治屋批判」で注目を集める一方で、政策が見えないと言われ続けたこともポピュリズム政治家らしい部分といえるかもしれません。

新政治家の賞味期限

正直、石丸氏の言葉に中身があると感じている識者や記者はいないと思います。少子化対策を問われれば、「一夫多妻制」とか現代人とは思えない政策を口走り、その先の具体策がない。社会保障についても乱暴な自分で自分を支える年金制度を口にしました。なら貯金でよくない? みたいな社会保障制度を軽く分析した程度にしか感じない内容しか彼からは見えてこない。自己承認欲求の行先としての政治家、という近年よくみる議員程度のかたではないのかという疑念がどうしても拭いきれないのです。

そんな人物でも160万票というのは、現代社会はプロモーションが価値を作るということをよく現わしているのだと思います。


山本氏は記事で石丸現象を「2010年代から続く賞味期限の短い新党ブームの1つ」というような意味の定義をしています。新党ブームはメディアの原罪をよく現しています。目立ったらメディアは価値評価軸なく躊躇なく祭り上げるのです。そして舞い上がった政治家は一生懸命踊ります。しかし、何かあったら場面は一転します。失言、失策があればメディアはまた売れると考え袋叩きを始めるのです。そうして政治家も消費されていくのです…

 選挙だけではなく、いろんなことを考えさせられる専門家らしい視点の記事だったのでご紹介しました。



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