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「嫌韓なのか、親韓なのか」 新著発売で思うこと

もしかして嫌韓なの?

4月2日に私が執筆をした「韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」(小学館新書)が発売されました。

「もしかして赤石は嫌韓なの?」と良く聞かれます。記者友達ですら「お、嫌韓ライター」と言われることが多く、世間のイメージはそうなのだろうと半ば諦めています。

日韓関係を取材するようになったのは週刊文春時代ですから、もう10年近く前の話です。正直に告白すると、初めは気乗りしない取材でした。やはり雑誌は嫌韓を切り口にすることが多かったので、韓国人を取材することが辛かった。悪口を書くという罪悪感がありました。

写真④ 日本軍慰安婦のための民族と女性の歴史館

取材から見えたもの

しかしながら、取材を重ねるうちに見えてくるものが沢山ありました。慰安婦問題、徴用工問題と、日韓歴史問題が未だに両国関係の棘になり続けています。韓国大統領は「日本は謝罪していない!」と攻撃し、日本の首相は「日韓基本条約で解決した」と抗弁する。空中戦が続いている。

そこで記者として思ったのが、もっと元慰安婦の取材、元徴用工の取材をするべきではないのかということでした。ウソや流言飛語は流れるものの、リアルな姿、真実の話が意外と報じられてないことに気が付いたのです。

つまり大手メディアではフォローされていない、「台風の目」のような空白地帯が日韓問題には残されていました。私は夢中になって取材をしました。そのなかで米軍慰安婦がいたことを知り、日本に影響を受けて韓国政府の罪を暴いた韓国人女性がいました。誰も知らない事実、知ろうとしなかった現実がたくさんありました。

メディアの嘘

せっかく自著を出したので、本屋さんへ営業に行ってみました。大手の本屋さんと個人書店はやはり雰囲気が違います。個人書店の方とは、本の話で盛り上がれるので楽しいものです。

私は千葉県在住なので薄々気がついていたことがありました。「嫌韓」的な考え方はローカル地域や、ご高齢の方にも広がっている、ということです。

ある書店で、年配のかたから「コロナもこいつらのせいだろ」と言われ苦笑しました。(たぶん、中国ですね)と心中で呟きました。韓国、中国へ対しての嫌悪感は、かなり多くのかたがたに広がっている。

何が言いたいのかというと、メディアで大量に流されている情報が、嫌韓的なものを助長しているんだな、ということです。

ところが政治家の発言や、歴史問題に関わる人の言葉は、真実からかけ離れたケースが圧倒的に多い。特に韓国メディアはイデオロギーに基づいて報道することが多く、事実ではないことも平気で流します。一方で日本のメディアも多くの事柄をスルーしたまま、情報だけを流しているという実態があります。

もちろん真摯な取材や、正しい情報もあります。しかしそれを上回る量で、真実かも定かではない言論が流通しています。

つまりウソかもしれない情報が、メディアでは大量に流されているのです。

嫌悪感の正体

日々、発せられる悪いメッセージが嫌悪感に繋がっている。それは現実としてある。

ただ私は思います。いまの日韓関係は問題点が正しく「抽出」されていない。だから、より悪いのは誰か、何が問題なのかを調べなければいけない。それが記者の仕事です。韓国が悪いという断罪は、ある意味で正しいんですが、必ずしも正確ではない。多分に誤解も交じっています。

何が過去に起こっていて、いま何が議論されているのか。このことを意外と知らない人が多い。

問題の正体があやふやなまま議論が進んでいる状態なのです。そうしたなかで嫌悪感が広がっているのは、端的に言えば文在寅大統領のイメージが悪すぎるということでしょう。何かといえば日本批判を繰り返すことで、権力の求心力をあげようとしている。

逆に安倍首相のイメージも韓国では最悪です。これは多分に彼の出自と保守主張がそうさせているのでしょう。

誤解が誤解を招いているという現実が、嫌悪感の正体なのです。


イデオロギーとファクト主義

本書で描きたかったことは私が知った「リアルな現実」、元徴用工などの「本当の姿」です。勿論、ジャーナリストとして問題点に切り込むことも意識しました。事実関係を追った一冊、と理解して頂けると嬉しいです。

個人的に記者がイデオロギーに囚われてはいけないと思っています。事実主義、ファクト主義があるべき姿だと。だから私は「嫌韓ですか?」と聞かれたら、「それはどの国もいいとこもあれば、悪いところもあるんじゃない?」と答えるようにしています。

日韓関係には問題がたくさんある、とは書きましたが、それは何かを差別する意図で書いた訳ではなく、事実関係として問題があると書いたに過ぎないのです。韓国政治やイデオロギーに問題があるとは書きましたが、韓国人を批判するようなことは書いていません。

本書ではリアルな声、現実をなるべくわかりやすく記述することを心掛けました。都合のよい言い方かもしれませんが、親韓のかたも、嫌韓のかたも、そしてどちらでもない方も違和感なく読める一冊だと思っています。

新書の中でも「ながいあとがき」という章があります。本を書くきっかけになった経験、そして取材を通じて抱くようになっていた私の思いを書かさせていただきました。ぜひ一読してほしいです。

ジャーナリスト 赤石晋一郎

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