夢の国
夢のような場所を見つけた。ディズニーランドにはそこまでときめきを感じられないでいたけれど、好きなものに囲まれたらそれがその人にとっての夢の国。わたしにとって好きなものとは、本と食べ物とカフェインとお酒と、そして何より一人でぼーっとする時間。その全てが揃うお店が、歩いていけるところにあった。
雑誌におしゃべり禁止のカフェと載っていたのを見てからずっと気になっていたのだが、思っていたよりしあわせ空間だったので勇気を出してよかったと思う。ご飯と飲み物もとても美味しかった。
わざわざそこに行って何をしたかというと、時間を忘れて気のすむまでぼーっとした。さながら喫茶店でカフェタイムを満喫するおじいさんのように。一人でゆっくり本が読めるということだったので、本ももちろん持参して読んだ。家に読んでいない本もたくさん眠っているけど、せっかくなので今読みたい気分の本を本屋さんで見繕ってから向かった。
家で一人でいても作業に集中できる人はわざわざ外に出なくても充実した一人の時間を過ごせるのかもしれない。しかし、わたしのように自制心がなく他人の目がなければ寝てしまう人種もいる。通学時間が長かったこともあり、以前までは電車に揺られている時間がいちばん読書も捗る大好きな時間だった。今はバスですぐ着いてしまうところに通っているため、代わりにカフェなどによく行くようになった。
このような習性は、子供の頃から身についたものだと思われる。祖父が作ってくれた立派な勉強机があったのに、そこはただの教科書や文房具などの収納場所となってしまい、宿題はいつもリビングのテーブルでやっていた。とにかく誰かに見られていないと何事も真面目にできない、悪い癖がついてしまっているのだ。
さらにいえば、図書館や自習室などでも物足りないところがあった。それは食事が許されていないという点である。作業に取り掛かり始めれば、始めるまでも始めてからも腰が重いため、しばらく没頭できるのだが、寝食を忘れることはないため、お腹が空いたらお家に帰らなければならない。夜の方が活動的になるにもかかわらず、残念なことにお家に帰ってご飯を食べたら寝てしまうのだ。好きな時に好きなものを食べられる環境でなければ、時間を忘れて集中することができない。
そんなわたしのわがままを叶える場所が近所にあった。大好きな本とご飯に囲まれて、好きなだけ長居できる場所。そして近頃憧れていた、一人でもふらっと飲みにいける行きつけのバーのような場所。こんなに贅沢でしあわせなことがあるのかと思った。
ただ、おしゃべり禁止というコンセプトだが、さらにわがままを言うと、わたしはそこまで静かでなくてもいい。遠くで誰かが話しているくらいの騒音がいい。けれども、隣のテーブルで話し声がうるさいと気になってしまうから、それよりはまし。もう少しだけ主張の激しいBGMが流れていてもいいかなとも思ったけれど、お店の周りは少しだけ騒がしくて、それを異空間のような夢の国で遠くに聞いているのがちょうどいいとも思う。
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