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漫画「アオアシ」がビジネスマンこそ読むべき良書である理由

既刊15巻で累計230万部を突破。数多くのサッカー漫画が高校サッカーをテーマにした中でJユースを舞台とした「異色」の漫画である点が取り上げられる「アオアシ」。主人公・青井葦人や彼を取り巻く多彩なキャラクターにリアルな描写や手に汗握るストーリー展開と魅力溢れる作品ですが、この漫画には「サッカー」という枠組みを超えた、語り尽くしがたい学びの要素がぎっしり詰まっています。

特筆すべき「アオアシ」の3つの魅力

まず、1つ目にサッカーに疎い人でも試合展開にしっかりついていける内容や絵の構成であること。正直に言うと、サッカー(およびスポーツ全般)に疎すぎて、テレビで見る代表戦ですら、イマイチ「プロの凄さ」がわからなかったので「なんとなく、足が速いからすごい」とか「なんとなく、ボールをずっとキープしているからすごい」とか「なんとなく、めっちゃボール遠くまで蹴れるからすごい」とか、そんなレベルでしかサッカーを見ていなかったのです。がしかし、例えば6巻では「サッカーでは3人でトライアングルをつくり、ボールを運んでいく基本」が丁寧に描かれ、そのトライアングルで攻める「仕組み」大変理論的に説明されています。サッカーをやったことのない人にも伝わるレベルの解説、恐れ入ります、ありがとうございます。
このように、サッカー初心者でも「頭」で理解できる解説と絵は漫画を楽しむ上でも大変効果が高く、実際のサッカーの試合を見るがごとく漫画にのめり込めます。

2つ目にJリーグのユースという舞台だからこそ、さらに主人公がプロ選手を目指す、という設定だからこそ引き立つ「費用」の話です。例えば小学生の頃に思う「将来の夢」と就職活動時に思う「将来の夢」は明確に違うのではないでしょうか。前者はいわばコスト度外視、現実性ゼロ、自分の欲求がそのまま。ただ、成長していくにつれ他者と自分の力量の差やセンス、身を置いた環境や得られる金銭、競争率や今後の生活など、様々なものを考慮し折り合いをつけて、時に諦めたり、時に挫折したりを経験し「地に足のついた」選択をするものだと思います。主人公の葦人の家庭環境は決して潤沢な資金があるわけではありません。それでもプロになりたい。だからこそ、自分にいくら費用がかかっていて、母がどれほどの思いで自分をユースに送り出してくれているのかを切実に、現実的に受け止めます(葦人は母子家庭の2人兄弟)。費用面以外にも限られた枠の中で戦い抜くスタメン争いや、プロを諦めて退団していく先輩の姿など、熱血なスポ根漫画とは一線を画すシビアで現実的な視点に刺されるのもこの漫画の魅力の一つと言えます。

最後3つ目が、本ブログのメインパート。どのような場であっても「成長」や「スキル向上」に適応できるプロセスが緻密に描かれている点が個人的に「アオアシ」の最大の魅力だと思っています。古今東西、高校生の成長の物語は数多く存在しますが、「成長」に関しての描き方は、まさにビジネス書といっても過言ではないと言えます。特に社会人なりたて、1年目の人にはぜひ参考にしてほしい内容が記載されており、もちろんスキル向上のスピードが鈍化したと悩む中堅さんにも、初歩に立ちかえるという意味で気づきが得られる良書だと大きな声で言いたいです。

「アオアシ」の描く成長プロセス

大まかに分けてインプットフェーズとアウトプットフェーズがあります。今回はインプットで2段階、アウトプットで2段階の計4段階で整理してみました。

1. ゴールのイメージをもつ
セレクションに合格し、見事J1ユースの東京シティ・エクスペリオンに合格した葦人が最初にぶつかった壁がジュニアユースとの「差」でした。原因はそれぞれのバックグラウンドの違い。ビジネスの場においても十分ありうるシチュエーションなのではないでしょうか。いわゆる「話している言語が違う」という状態ですね。行き違っている様はアンジャッシュのコントみたいな感じ。対人との業務やコミュニケーションでミスをする8割がこの「差」から生まれる溝や認識の齟齬であるといっても過言ではないかと思います。だからこそ、まず「差」があるのかないのかを把握し、差があれば埋める。埋めるために自分の認識と相手の認識を明確に示すことが欠かせないですね。

2. 考える・思考する
言うまでもなく「日々、やってるよ!」という方が大半だと思いますが、ではこの「思考」のゴールはどこでしょうか。つまり、何ができたら「思考した」と言える状態に至るのでしょうか。スポーツとは違い、基本的に頭を使って動くビジネスにおいては、この次で説明する「言語化」とセットで考えるべき事項ですね。
とはいえ、何も考えずに営業先に出向いたり、ミーティングを行ったり、資料を作ったりしていないかどうか、今一度振り返る意味はあるかと思います。
また、ここでは思考の深さにも留意するべきです。文字通りに受け取るのでは十分ではなく、目的までを理解すること、考え抜く・考え切ることこそが「思考」であり、「本当に自分は考え抜いたか」を日々検証していくことも1つの方法なのではないでしょうか。

3. 言語化する
思考したことを言語化する。言語化できないことは思考ではない。感覚的に動くのではなく、なぜそのように動いたのか、どうして動いたのか、どのように動いたのか。余すことなく、自分の実行したこと、周囲で起きたこと、思考した内容、判断したことを明確に言語化させる。これには2つの側面があり、まず自分自身でアウトプットし、インプットできる。つまりより実感し、次の思考の助けになります。もう1つは他者に対しての情報提供になることで、他者との円滑なコミュニケーションやアクションに繋がることが考えられます。
もうひとつ、着目すべきは言語化が十分にできない相手へのコーチング的な触れ合いです。本作でも監督の福田やコーチの伊達が行なっていますが、どちらもかなり意図的に行なっている様が見受けられます。時間をかけてでも自分で答えを出させて、自分で言語化させる。もし、自身が誰かを指導する立場であるのならば、コーチングは身につけておきたい技術の1つになるのではないでしょうか。

4. 反射的にできる状態にする
考えて考えて考え抜いた結果、無意識でできる状態にもっていくこと。ここを達成点とし、この状態に至ることこそ「自分ものにする」ということだ、との発言がありますが、ビジネスの場でも同じような場面に遭遇することは多々あります。1度できただけでなく、1度できたのであれば、次からは無意識でもできるように繰り返す。この積み重ねによってようやくスキルが「自分のものになる」と言えるのだと思います。

さて、ここまでにアオアシの内容を踏まえ、順を追って成長のプロセスについて自分なりの解釈から説明を記載してきました。

最後に参考までに本作で葦人が取り組んだ2つのスキルの定着までの時系列を見てみましょう。

各スキルともに、反射的・無意識でできる状態まで持ち込んでいく様が読めると思います。ぜひ、ご自身で手にとって読んでみてください。


はてなブログにも書きました
https://akacheri-nu.hatenablog.jp/entry/2019/02/03/024400

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