題名をクリックするとAmazonの商品ページが開きます。 【小説】 「ソルター・マーシー」 江古田文学101号掲載 「パッチワーク」 江古田文学102号掲載 「毛穴」 江古田文学105号掲載 「執筆用資料・メモ」 江古田文学108号掲載 【官能小説】 「一回だけで、いいの?」 新鮮小説 2020年4月号掲載 「お義母さんは、僕専用のオナティッシュ」 特選小説 2021年9月号掲載 「×××ゲーム」 新鮮小説 2021年12月号掲載 「わたしで抜いたことある?」
自分の小説が掲載された冊子を本屋で買える。なかなかに嬉しく、いつも、嬉しい。 「お祝いよ」 女は豚やら牛やら、とにかくたくさんの肉を焼いてくれた。 「これ、食べたことある?」 女は脳みそや子持ちの牛、豚、孵化寸前の卵などを私に振る舞った。 「食感が面白いね」 「それだけ?」 「ぶっちゃけさ、焼肉ってタレの味が9割じゃん?」
とろりとした脂と濃厚な香り。ソースとして使っても美味いだろう。 「私はレバーが好きだ」 思い返せば、近所の焼き鳥屋さんが一本サービスしてくれたのがレバーだった。原点の記憶。 「懐かしいな」 やり直せるとしたら、どこから? 自分に問うてもわからない。
1年後……。 「ここはどこだ?」 少しだけカレーの匂い。それから、じゃりっとしたカーペット。 「君の望んだ未来だろ」 腕時計を外す。ノートに何か書きたい。
もしかしたら、料理にハマっているのかもしれない。だとしたら、なんだというのだろう? 「オイスターソースと、バルサミコ酢……?」 結局、調味料しか混ぜ混ぜできていない。鉄鍋のジャンのような、独創的な料理がしてみたい。 「あー」 料理しか楽しみがない。つまらん。
きのこくってあにめみてねて、んで、なに? あわー、あわー。 そうこうしていると、ぼくのなまえ。 なんかのってる。 わー、そっか? おれがやるのか!
美味しい、と満腹、どちらを優先すべきか。ふらりと街に出て、傘を差し、少しだけ泣いてみたりする。 「ノートに何書いてるの?」 内心、もうしんどい。嫌なことばかり頭を巡る。 「何がしたいの?」 「苦しいな」 ポロポロと涙が出てくれたら、まだマシ。 「何だ?」 スマホの充電が切れる。中身が分からない。
不思議なことに加害者に対する同情の声が集まる中、私はただただ困惑していた。腹を立てていた、と言い換えてもいいだろう。 彼女は生まれながらの被害者だった。どんな状況であろうとも、幸福の真っ只中でも悲劇のヒロインを演じられる。そして、大衆はその涙を盲目的に信じてしまう。 「吐き気を催すよ、君は邪悪だ」 彼女はぼんやりした顔をしている。心ここにあらず、といったところか。危うく私も騙されるところだった。
焼きうどんをつくるはずが、野菜の水分のせいでスープになった。こうした料理の失敗は数知れない。そんな私に新作メニューの依頼が入ったのだから驚きである。 「食材はこちらで用意しますので、アレンジしてください。元闇料理人であった、アナタの腕を信じます」 私は過去を消し去ったつもりであったが、どうやらまだ消しきれていなかったらしい。
「小学生みたいな食生活してンな」 その言葉への反骨精神から、私は肉野菜炒めをつくった。たんまりと。それはもうたんまりと。胃がはち切れんばかりに。そのうえ、肉はステーキ肉だ。アホ丸出しである。 「隠し味は海苔の佃煮にするか」 料理初心者あるある、隠し味、隠せながち。なんともわからぬ味になった。 「貴方は死にたいのですか?」 死神と面談をする。 「生きたいです、生きていたいですよ。まだ」
自転車に乗っていると昔のことを思い出す。こんな場所で、こんな路地裏で、そういえば私は告白したのだった。 カワハギを見つけると、私は懐かしい心地になる。肝醤油につけて刺身を一口。このモッタリとした美味さ……。 「こっちもお食べ」 いぶりがっこを一口。大人になってから燻製のよさに気づいた。塩辛さをビールで流し込む。 流れていく時間、選択の数々、私はどこへ向かうのか。 「ポエミーですね」
つらつらと文を徒然に書き足すも、それは意味をなさず。やはりブランクを感じる。また、牛乳を一気に飲み干したせいか、ストレスからか、腹の調子も良くない。 ペットボトル容器に入った蕎麦をすすり、タバコを吹かし、眠る。枕を濡らさないよう、上向きになるが、それでも湿った。
嫌がることをやめてもらいたいとき、どうするのが正解なのだろう。言ってもやめてくれないなら、黙って耐えるか、立ち去るしかない。 私を迎えてくれたのは美術館の近くにある、厳かなレストランだった。 「山羊とか羊のミルクからできたチーズか……」 香りが優しく、甘みもある。 「うん、美味い」 食事は人を癒す。そして、肥やす。しかし、私が本当に求めているのは家庭の味かもしれない。安心できる家に帰りたいだけ。 「安心をください」
職人が部屋に押し寄せ、次から次へ寿司を握ってくれるのだが、残念なことに、最後の工程になると黒い玉に変わってしまう。 「少しくらい望んだものを出してくれよ」 出っ歯な動物が巣作りをはじめた。
唇がボロボロと剥がれ、血が滲む。明らかに死期の近い男はそれでも映像の編集を続けた。 「とにかく、多めに撮っておく。使える日が来なかったら捨てればいい」 それは額に入れて飾るには少々実用的すぎる言葉だったが、一応は格言と言えよう。男の撮ったビデオの大半は不愉快で、不適切で、ふしだらなものだった。 「この人は?」 私が一人の女性を指差すと、男は笑った。 「俺の愛した女性だ」 しかし、そのビデオは捨てられた。
しーん。 やる気も悪気もなし。 でもさ、だめよね。もう。