折坂悠太「呪文ツアー」@共済ホール 2024.09.20
自分にとって最高のライブの形というのは人それぞれあるだろうけど、僕にとっては全ての楽器の音がちゃんと聴こえるということが最高のライブの条件の1つだと、いつからか考えていた。
折坂悠太って知っていますか? 僕は3年くらい前から知っていて「きゅびずむ」と「旋毛からつま先」という折坂悠太の楽曲の中でもテンポが速めで、歌詞から音作りまでほんとうに素晴らしい曲があって、この2曲がすごい好きなんだけど逆に言えばそれ以外はあまりしっくりこなくて、アルバム単位で好きなアーティストではなかった。しかしフジロックでのライブ映像の「芍薬」と「さびしさ」がほんとうに素晴らしくて、そしてこれまでのアルバムを改めて聴き直して、今年発売されたアルバム『呪文』も聴いて・・・・・・良い、良い!すごく良い! なんで3年前の自分はこの良さに気づけなかったのだろう。ライジングも来るけど1日目だから2日目のみ参加の僕は観れないじゃん!ということもあり、ライジング前からチケットを買っており、本日初めて(ついに!念願の!)、折坂悠太のライブに行ってきました。
折坂悠太(アコギ、エレキ、マンドリン)とエレキギター、ドラムス、コントラバス、サックス&フルートという他アーティストのライブではあまり見かけない5人編成だったけど、5人の奏でる楽器が、ほんとうに全ての音がちゃんと聴こえた。アンプに繋いでいるのがギターだけだということもよかったのかもしれない。僕の耳からよく埋もれてしまう音はアコースティックギターの音とベースの音なんだけど、でも今回のライブではどちらともよく聴こえて心地よかった(エレキベースじゃなくて、コントラバスっていうのがまたいいね!)
特に「凪」と「努努」は坂本慎太郎の「仮面をはずさないで」のライブを彷彿させるような素晴らしいライブアレンジと照明で、このバンドはちゃんと"バンド"をやっている!と感じた。初めて来た共済ホールという会場もまた良くて、バンドも観客も全てがその空間の中でしっくり収まっていた。ライブという非日常感を楽しむだけではなくて、折坂悠太の音楽はこれからも続いていく生活と地続きの音楽だ。
ニューアルバム『呪文』に収録されている「正気」の「鍋に立てかけたお玉の取っ手のプラが溶けていく」という歌詞がすごく好きだ。暮らしの匂いがして、それでいて、どんなことが起こっても生活を続けていくという強い意志を感じる。そしてアンコール前最後に演奏した「ハチス」の「きみのいる世界を「好き」ってぼくは思っているよ」も生活の、存在の肯定だろう。この「ハチス」にも「ひとひらのレシート」や「パンにジャムを塗る」など生活の描写が描かれている。生活は続いていく。というより、生活を続けていく。その意志。そして音楽も紛れもなくその生活の一部だ。音楽のこと諦めたくない。