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ローマを描かないローマ人
映画監督ダリオ・アルジェントはローマ生まれでローマで育ったローマ人である。だが、彼の作る映画には典型的なローマらしい風景がほとんど出てこない。ローマを舞台とした映画であってもむしろローマらしさを意図的に避けているきらいがある。
『サスペリア』はドイツ、『フェノミナ』はスイス、『トラウマ』は米国が舞台だからローマが登場しないのは当然として、デビュー作『歓びの毒牙』、代表作『サスペリアPART2』は舞台がローマである。『インフェルノ』にもローマのパートが出てくる。これらの映画のロケ地は確かにローマであったとしても、大きな教会やコロッセオなど人々がよく知るローマの名所は出てこない。私はそこがいいと思っている。
例えば、ニューヨークロケだったら自由の女神、広島ロケだったら原爆ドームや宮島。分かりやすいが安直だろう。
そんな中で、例外は『サスペリア・テルザ/最後の魔女』だ。この映画には典型的なローマの名所がそこそこ出てくる。サンタンジェロ城、ローマのテルミニ駅などローマの観光地が次々と現れる。
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アルジェントはローマを写すことに吹っ切れたのか、それとも手抜きの要素が大きいのか。
この映画を初めて見たとき、ダリオ・アルジェントがいくつかの都市をパッチワークのように組み合わせて作り出す架空の都市空間が好きな私としては、『サスペリア・テルザ』の都市像が素直すぎて逆に戸惑ってしまったのを覚えている。