短編小説「ぐるぐるホリデイ」
午前7時12分に目が覚めた。
5月の朝はちょうどよく冷たいから好きだ。私はカーテンを開けて朝日を身体全部で受け止めた。なんて気持ちがいいんだろう。
今日はスーツを着なくていい日、つまりお休みだ。
最近、在宅ワークが増えた。6畳ワンルームのこのプライベート空間が仕事場になってしまうのだから、私物と仕事の物で散らかるのは自然なことである。読みかけの小説、仕事用の資料、積み上げられたビートルズのCD、ToDoを書いたポストイット。ああ、それから洗濯物も溜まってるな。
私はパジャマのまま部屋を掃除することにした。
思ったよりも時間が掛かってしまった。屈んだり立ち上がったりして額には汗の粒が浮き出ていた。ストックしてあるタオルを取り出して汗を拭って首に掛けた。
部屋はあらかた片付いた。あとは洗濯物だけだ。
私はパジャマを脱いで白い無地のTシャツとジーパンに着替えた。パジャマは洗濯物と一緒に洗濯機へ。
新しく購入したドラム式の洗濯機。意外と高かった。
洗剤と柔軟剤を適量入れて蓋を閉じる。半透明の蓋だから洗濯機の中がどんな様子かを見ることができる。スタートボタンを押すとゴゥンゴゥンと動いた。水が注がれ、洗濯物がぐるぐると回る。
私は台所に行き、コーヒーカップに豆乳とアイスコーヒーを同じ割合で注ぎ、ソイ・ラテを作った。カップを持って洗濯機の前へ。
ぐるぐる回る洗濯物とバシャバシャと音を出す水を見ながらソイ・ラテを飲むのが最近の嗜みだ。
さて、今日は何をしようか。洗濯機の中をぼーっと覗きながら考える。本を読もうか、音楽を聴こうか、録画してたドラマも良いな。やりたいことが頭の中をぐるぐると回っている。
とりあえず、朝ご飯を食べるとしよう。
時刻は午前10時37分。この時間に食べるご飯、朝ご飯?昼ごはん?はて、どちらだろうか?
些細なことでさえ洗濯物と一緒にぐるぐると回っている。
完