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ビタミンDとガンについて知っておくべきこと

はじめに

私は元々急性リンパ性白血病の患者でした。なのでその経験により人一倍、ガンという病気を意識しています。私の祖父は肝臓がんで亡くなり、おそらくあなたの知り合いもガンとの闘病生活を強いられている方や、その闘いに敗れた方がいらっしゃるかと思います。ガン自体は非常に身近な病気ですが、その完璧な治療法は未だ確立されていません。今回はそんなガンととあるビタミンにまつわるお話です。

ガンのリスクを減らすためのビタミンやミネラルのサプリメントを使用した研究には、必ずと言っていいほど失望がつきまとうものです。身ビタミンCやビタミンEでガンのリスクが減るのか研究がされていましたが、結果は惨敗でした。38件の研究を総合的に検討した結果、ガンのリスクを減らす効果はありませんでした。では、ビタミンDはどうでしょうか?

ビタミンDが不足すると…

ビタミンD欠乏や不足は広く知られており、高齢者の転倒骨折や骨量減少の原因となる可能性があります。広く知られているわりに、ほとんどの人がビタミンDの血中濃度を定期的にチェックしているわけではありません。

実はビタミンDの血中濃度が低いと、いくつかの種類のがんにかかるリスクが高くなる可能性があります。2017年のレビューでは、ほとんどの研究がビタミンDレベルと乳がんリスクの逆相関を示していることがわかりました。ビタミンDの欠乏は、乳がんのリスクが高いことと関連しています。

乳がんだけではありません。2014年の研究では、アフリカ系アメリカ人とヨーロッパ系アメリカ人の男性において、ビタミンDの血中濃度の低さと前立腺がんとの関連性が明らかになりました。ビタミンDと前立腺の関係は、特にアフリカ系アメリカ人男性で強いようです。

さらに、国際的な研究グループによる報告では、血中のビタミンD濃度が高いほど、結腸・直腸がんになるリスクが低いことが示されています。

しかし、これらの研究の問題点は以下の通りです。つまり、ビタミンDの濃度が低いからといって、乳がんや大腸がん、前立腺がんになると証明されたわけではありません。むしろ、ビタミンDの低下がこれらのガンと関連している可能性が示唆されている程度に過ぎません。

ではビタミンDの低下といくつかのガンとの関連性が明らかになった今、私たちは皆、ビタミンDのサプリメントを摂取すべきなのでしょうか。ビタミンDががんを予防するのには生物学的な理由がありますが、サプリメントの摂取を推奨する高いレベルの証拠はありません。なので現時点で専門家グループは、ガン予防のみを目的としたビタミンDのサプリメントを推奨していません

ビタミンDの可能性

VITAL試験は、25,000人の男女を対象としたビタミンD3(1日2,000国際単位)の大規模な無作為化比較試験です。この試験では、中央値5.3年の追跡調査の結果、ガンの診断数の減少は見られませんでした。

しかし、まだ落胆しないでください。期待の持てる発見があります。

ビタミンDは、主要評価項目である侵襲性のガンの発生を減少させることはできませんでしたが、ガンの総死亡率を減少させるための良いシグナルを示しました。ビタミンDを摂取した人は、プラシーボ(偽薬)を摂取した人に比べて、進行がんや死に至るがんにかかる確率が5分の1に減少しました。

どのような人がビタミンDの補給から利益を得られる可能性が高いのかを判断するには、まだまださらなる研究が必要です。さらに、5年間の追跡調査がビタミンDの摂取による潜在的利益を完全に確認するのに十分な期間であるとはとても思えません。


しかし、重要な注意点があります。リスクの減少は、平均的な体重の人でのみ見られました。ビタミンDの補給は、平均的な体重の人のガンに対するリスクを38%相対的に減少させたようで、体重過多の人や肥満の人では、ビタミンDによるがんリスクの低減効果はありませんでした。

ビタミンDグループの12,927人のうち、226人(1.7%)が転移したり死亡したりしたのに対し、プラシーボグループでは274人(2.1%)が死亡しました。ビタミンDの補給による効果は、平均的な体重の人にやや顕著に現れ、7,800人の平均体重の被験者のうち、ビタミンDグループでは58人(0.7%)が転移性または致死性のがんを発症したのに対し、プラシーボグループの96人(1.2%)となりました。

おわりに

結論から言うと 現在のエビデンスでは、がん予防のために大量のビタミンDを補給することを推奨するには不十分ではあります。ビタミンD介入試験の大半は、ビタミンD欠乏症のない成人を対象としたもので、その欠乏症自体はとでも健康な状態とは言えません。ビタミンD欠乏症(25(OH)D濃度が20 ng/ml 未満)がある場合は、病院でビタミンDの摂取について相談するべきです。

ビタミンD摂取を検討する場合、「一般の人にとってどれくらいの量のビタミンDを補給すればいいのか」という疑問があると思います。毒性を誘発するレベルは不明ですが、米国医学研究所(IOM)は、健康な成人の場合、ビタミンDの上限を1日4,000国際単位(IU)と定義しています。


まとめると、ビタミンD不足とがんとの因果関係は明らかになっていませんが、ビタミンDの補給が、平均的な体重の人の致命的ながんのリスクをわずかに減少させるかもしれないというシグナルはあります。平均的な体重を目指すとたくさんの病気の予防に効果があり、もしかしたらガンに対しても希望が見える日が来るかもしれませんね。



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