TOEICの無料模擬試験があるらしい
中学2年生の夏休みも間近の時だった。
テストも終わり、結果が返ってきつつあったその時期の開放感の中
友達からの「英語何点だった?」の質問。
帰り道の話題としてはお決まりのものだった。
「33点」
と歩きながら事実を伝えれば、背中の向こうでバタン、と音が響いた。
それに驚き振り返ると友達は立ち止まっていて、学生鞄を道に落としていた。
「え? なんて?」
「え?」
「いつも悪くて70点台くらいじゃなかったっけ?? まじで??」
他の教科はそうだけど、英語は特別に本当に壊滅的にわからないから
単語でしか点数が取れないと説明すると、
「いや、それまじでやばいと思うよ」
と冷静に危機感を持てと教えてくれた。
いや、まじでやばいのか……と家に着いてその話を姉にすると、
「どこがわからんと? BE動詞はわかるろ?」
「え? B動詞ってなん?」
「え? 今中2よね? BE動詞三つ覚えんやった? 私でもわかるくらいけん、それはやばいと思うぞ」
相談したのは3番目の姉だ。
一番目の姉は文系、2番目は理数系、3番目の姉は料理や裁縫を得意とする家庭的な姉でその代わりと言ってはなんだけれど勉強については他の姉と比べるとからっきしなイメージ。その3番目の姉にやばいと言われれば、流石にやばいのか…という話になり、私も姉たちが通った近所のお母さんが教えてくれる英語塾に通うことになった。
ちなみに私の英語との出会いは小学6年生を卒業した頃だ。まだ苦手意識なんてなかった。寧ろ中学から新しく始まる英語の授業がとてつもなく楽しみだった。
自宅にある姉が諦めた通信教育の英語の教科書を開き、アルファベットの予習をしていたくらいだ。小学生の時はテストは100点を取れる問題が出されるんだろうと思っていたくらい、授業を受ければ当たり前に理解できるものと思っていた。
その教科書でアルファベットを書き終わると、問題のBE動詞の項目に入った。何が書いてあるのかよくわからなかったので、
(いいや! 学校で先生に教えてもらったらきっとわかるやろ!)
とたかを括ってその通信教育の教科書を閉じた。
その後その教科書は2度と開かれなかったし、学校の授業でBE動詞を理解することはなかった。
中学で習った英語の授業は、期待とやる気だけはあっただけに、先生が何を言っているのかわからないことがとても苦痛だった。
ほとんどふてて、いつも教科書に好きなキャラクターの絵を描いて過ごしていた。
夏休みに入って、英語の塾に通い始めると、先生が変わるとこんなにも変わるものかと思うくらい、英語の問題がわかるようになった。
「まずBE動詞は何も考えずに3つ is am areって覚えろ!」から始まった多少スパルタな先生は「一体学校でなんば習いよったとか!」とぶつくさ言いつつもかなりわかりやすく英語を教えてくれた。
最初は間違えることが怖くて発言なんてできなかった。
私よりもずっと年下の小学生が簡単に答えを発表する姿に萎縮して恥ずかしかった。それがだんだんと、教えてもらえればちゃんと答えが導き出せる喜びに変わっていった。
33点だったテストが次回から70点台になり、中学校での授業が復習の場になり、90点台を取れるようになっていった。
英語が楽しいと思えた。塾に通うこと自体が楽しかった。
私が英語を習う前に抱いていた希望と期待がこれまで理解できなかった私にがっかりしていた分、やっと笑いかけてくれたような嬉しさだった。
勿論その英語塾のおかげで高校の受験も合格した。
本当は英語科のある学校に行きたかったけれど、家庭の都合上無理だった。
英語塾はジュニア向けだったので高校生になると通えなくなった。すごくすごく行きたかった。
しかも高校の1年間は中学英語の復習だった。また私は学校の英語の授業にがっかりした。
今思えば他力本願だった。“教えてもらう“ことしか選択肢がないと思っていた。
だけど独学でうまく行ったことはない。もっと方法を探すべきだったかもしれない。
高校の選択科目ではもちろん英語を選び、英会話部にも入部した。
高校3年の時、私は私よりも英語の成績の悪いクラスメイトに英語を教えたりして、職業訓練校のような学校に進学した。学費が10万もしなかったからだ。そのクラスメイトは英語科の短大へと進学した。
英語を習いたいと思って社会人になって入った英会話教室では、あなたは英語を話せるメンタルから作った方がいいと言われ、色々別のことをすることになり(あれは多分ギリギリアウトの危ない宗教に近かったと思う)英語を勉強するまでに至れなかった。
英語にはいつも興味があるはずなのに、いつも自分にがっかりして、怖くて何もしてこなかった。
だけど、塾に通っていた頃の気持ちがいつも私の英語の原点として胸の内にあり続けている。あの楽しくて仕方なかった頃の気持ちが。
どうしても諦めきれなくて、ついつい本を買ったり、アプリを落としたりしている。アプリで基礎をやり直してみたり、単語を覚えると洋画のセリフが前よりも少しだけ、本当にほんの少しだけだけど解って、それがたまらなく嬉しくなったりした。
原点の気持ちが胸にあり続ける限り私は諦めないでいたい。
例え今日見ていたルパン三世のCM入り前後の「LUPIN the Third〜♪」のあれを聞いて、「4シーズン目のアニメとになんでサード?」と言っているような具合でも……!!!
流石に旦那さんから「え? まじで?」と心配されるような英語力でもだ!!
あとは伸び代しかない!! と言い続けて頑張るしかないのだ。
なぜ今日は英語の話かというと、
コロナの自粛期間を受けて、TOEICの試験を自宅で体験できる模擬試験が今月28日から行われるからである。
通常なら6000円ほどかかるものが無料とは!! 受けない手はない!!
よくTOEIC200点から800点へ!! とかなんとか比較して成功例が語られることが多いけれど、絶対低い点数と分かっているのに6000円かけて受験するのはちょっともったいないよなあと思っていたところなので、渡りに船の有り難い機会だ。
ガッカリし続けてきた幼い頃の私をまたもう一度笑わせてあげられるように、頑張ろうと思う。