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今日は青じそチューブが飛んでった。

私は6年主婦をしているが、一向に家事能力が上達する兆しはない。特に台所ではいつも何かしらしでかしている。

木しゃもじは一部真っ黒だし、お鍋も何個か焦がしたし、指を切ってパニックになったり、リアルに塩と砂糖を間違えたこともある。

旦那さんが一番よく言う私の料理への感想は「面白い味だね」だ。

手先は器用な方ではない。

裁縫、料理、掃除、洗濯、全部嫌いだ。

高校受験の時、家庭の都合で学校を選ぶことができなかった。通ったのは農業高校だ。それ以上の進学もさせてやれないと言われていた。畑は持っていたけど別にうちは農家じゃない。

母の手伝いで土を耕すのは嫌いじゃなかった。特別好きでもなかった。何かを育てるのは苦手だ。動物もそう。

残された道は「農家の嫁科」と暗に呼ばれる家政科だけだった。

裁縫や料理を専門科目にしている学科だ。

苦手とはいえ、生きていく上で必要な技術だ。これを機に少しは女の子らしくできるように頑張ろうと奮闘した。

裁縫は和裁1級、料理は食物検定2級までなんとか、本当に苦労して取得した。

和裁1級の検定は3回も受けた。3回とも何度も確認をしても浴衣の袖を裏返しにしてつけてしまう。空間認識能力とかなんかそのへんが極端にバカなんだと思う。本当によく取れたものだ。

近頃はお姉ちゃんの勧めで刺繍を始めたけれど、相変わらず毎回指を刺して「ひっ!!」っと必ず悲鳴をあげてしまう。

今日は料理をしていて青じそチューブが飛んでいったっきり帰ってこなかった。

飛んで行ったのならどこかに落ちた筈なのに、いくら天井を眺めていても落ちてくる気配はなかった。消えた。

ここ最近「フリンジ」という海外ドラマを連日観ているが、そこで日常茶飯事的に起きる怪奇事件を思えば、青じそチューブの一個か二つかなくなったって不思議ではない。もう一つの世界に行ってしまった可能性が高いだろう。

めちゃんこに面白いドラマなのでかなりオススメする。流石JJのドラマ。そして大好きなお姉ちゃんの激推しのドラマなので当然と言えば当然の面白さだ(私はシスコンである)


以前まではコンプレックスの塊だったので「また失敗した…」と料理をする度に落ち込んでいたけれど、優しい旦那さんはそれを微笑ましそうに見てくれて、私の言う「失敗」を「ドジ」に変換してくれる。

「失敗」をする私は面倒くさがりで、要領が悪い。自業自得な結果で、自己嫌悪にしか繋がらなかった。

でも旦那さんから見たその「失敗」は怪我は心配だけど、中々経験できない「ドジ」であり、なんだか楽しそうなもののように見てくれるのだ。

私はそれからあまり「失敗」しなくなった。

やっぱり落ち込む時はあるけど、旦那さんが「ドジだなぁ」と優しく笑ってくれると知っているから、私は「失敗した」と思うことが減ってきている。

料理が少し嫌いじゃなくなった。

決して上手ではないけど、旦那さんが「美味しいよ」と言ってくれて「青じそチューブって普通飛んでってなくなるもんだっけ?」と意地悪を言って笑ってくれるから、私は、私たち夫婦はそれで充分なんだと思う。


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気付けば豆腐ばかりのメニュー……

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