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愛の調理法


裏返しのポケットは、生風がふわりと当たりヒリヒリと痛む

役割通りに大口を開けて待っていたって、赤い紙切れ一つ入ることすらなかったじゃない


裏返したポケットは生風が染みて痛くてたまらない

だから、膝より下までの丈のワンピースでポケットは丸ごと隠す事にした

ヴィンテージグリーンのニットのワンピース
生成色のインド綿
水色にグレーに紺

色にデザインに柄に肌通し

ワンピース探しは良い麻酔


忘れて、忘れて、また忘れて
素敵なワンピースに袖を通す

それでもね、本当はどこかで痛んでいる


コップ一杯のミルクを注いで
みごとにポケットは水浸し

役立たずのポケットはなんと疎ましい…

空っぽになる前に?
空っぽなのかな?
空っぽを埋めないといけないのかな?

冷蔵庫に走って
洋服売り場へ走って
フルーツの入ったバスケットに手を伸ばして
水を飲み干して

どれでも埋まらなかった事が
白く産まれたての羽を
薄く透き通る産毛を
柔かな肌を愛してみようと思った時から埋まりはじめる



埃しかない出てこないポケット
ひりひりと風は沁みる

何も入らないポケット
出すことなら出来るみたい

埃と愛が、ほら辺りに散らばっている




愛情をもらうことなく生きて来た人は、傷つきやすく
生身にさらされた肌がヒリヒリと痛むように小さな事が身に染みる

抱きしめて、ぎゅっと守られる感覚があればそんな痛みも知らずに済んだのかも

だからいつも喉が渇いて仕方がなくて手を伸ばす

砂漠にいるかの様な愛情の枯渇で喉が渇いて手当たり次第あちらこちらに愛情を求めると言う事は
きっと心のタンクの中には何もないからとそう思い込んでいるから

愛情の枯渇に悩む人に解決策を話す時に
【愛を与えなければ愛情は貰えないのよ】と言う言葉をどこかで聞いた事がある
でもそれって合っているようで何が違う

遠くの明朝体の活字から差し出された、最もらしい解決策の目線は同じ位置にいない様に感じるのだ

愛情を求めたり、奪ったり
ジメジメとしたところにいるのはうんざりで
そんな所から抜け出せたらどれほどいいだろう?
でも、タンクが空っぽで仕方がないんだ
きっと、そう呟く事が精一杯だと言う事を明朝体の活字は知らない


私のこと
空っぽのタンクの砂漠から抜け出す糸口を見つけたのは子育てを始めてから

あの時の自分と今の自分は
幸せの定義がまるで違う

過去の自分は喉の渇きからか?
はたまた、逆か?
一時の高揚感を幸せだと勘違いをしていた

だから、目先の幸せしか見えていなかったんだな…

あれから見つけた新しい幸せの定義とは
それは幸せとは、自分の人生と言う花壇を整える事だと思い直したこと

そばにいる人の幸せは自分の幸せ

花壇の花を育てる様に、自分の居場所にたくさんの水を与える事は自分をも幸せにする

一緒に美しい花壇を作るために目一杯愛してみようか?
幸せの定義が変わった当時の私はそんな挑戦を始めたのでした


それから今まで愛の挑戦は続いています
愛すると言う事は方法は1つだけじゃなくレパートリー豊かで深くて
時に難しく
それでいて怖い

それでも愛する訓練は、自分を少しずつ少しずつ変えて行く


その一つとして、こちらに向かって愛情を求めて伸ばされた手を見つめる事が増えたと言うこと

手を伸ばし、愛情を求めて来る誰かに
「愛情を与えてみたら?」などと言う事はないけれど

1つ言えることと言えば「奪うよりも、花を植えた方がきっといい」と密かに思うこと

欲しいものは、意外にも求めている場所では無い所にあるから


タンクは空っぽ
そう思い込む事は愛を貰えるかもしれないと言う可能性を含んでいる

でもね、タンクを満たす方法も一つだけじゃ無いみたい

意外にも優しく湧き出る方法もあるみたい



▼   絵も描いています


akaiki×shiroimi


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