第五回 キモチの彩度(モリ)
時は大きく遡り、 小学3年生の、とある放課後。
学校の2階にある図書室の窓辺から、
校庭で元気そうにサッカーをしている同級生たちを眺めながら、
友達のダイチくんと会話をしていた。
「サッカーできたら、そりゃモテるよなー。お前サッカーやる?」
「んー。サッカーは興味ない。」
この会話の後、ダイチくんと僕は、
吹奏楽クラブ・イラストクラブ・図工クラブへ同時入会した。
人とは違うことをやることで、 それぞれの初恋の相手に、
どうしても振り向いてもらいたくて、 仕方がなかったのだと思う笑
はじめこそ不純かつ曖昧な動機ではあったが、
いつしかどんどん芸術の世界にのめり込んでいった。
結局、初恋の相手には思いを伝えられず、
(というか小学生の時は告白という概念がなかったから一方的にずっと好意を寄せていただけ)
大量のイラストと木工作品だけが増え続け、
ハード過ぎる吹奏楽の練習をしているうちに、
あっという間に中学生となった。
中学からは180度変わって、年中日焼けのガン黒スポーツ少年となり、
芸術とは無縁のまま、気づけば27歳になっていた。
当時の僕は、デザインを改めて学びたいと美術大学へ入り直した後、
新卒入社したデザイン会社で、修行し始めた頃だった。
年末に実家へ帰省し、
なんとなく部屋の棚を漁っていると、
小学生時代の文集を見つけた。
実は4年生になる時にクラス替えがあり、
全クラスメイトと先生から、
自分の良いところをかき集められた文集が渡されていたのだ。
「こんなもの、もらってたっけ?」と
パラパラと何気なくめくっていくと、
自分の予想に反した言葉がたくさん書かれていた。
なんと、ほとんどのクラスメイトが、
「図工が上手」と書いてくれていたのだ。
(図工が上手って何が上手なんだよとか、 図工以外に褒めることはなかったのかとか、色々考えはしたが笑)
先生は、
「ホームルームの時に、自分が作った作品を一生懸命話している姿を見て、 先生には真似できない発想だな〜っていつも関心してたよ〜」
と書いてくれていた。
そういえば、小学生時代の記憶は基本おぼろげなんだけど、
放課後のシーンとした図工室で、
1人で静かに高揚しながら作品を作っていた時の、
教室の匂い・音・湿度とかは、
鮮明に今でも覚えているんだよな〜と思った。
デザインをこのまま続けてもいい理由を
潜在的に探していた僕にとっては、
自分が記憶していない時、
生理的に好きだったこと・夢中になっていたことへ、
ブーメラン的に戻れていた事実を知り、とても嬉しくなった。
誰かに直接言われたことばではなかったけれど、
その瞬間、確実に心が沸き踊り、
どこか救われた気がした。
ことばとの出会いは、
特別なシチュエーションで、
特別な人に、
特別な言い方で言われる、
ということだけではないのかもしれない。
過去作品はこちら!
◼️イベント概要
ことばの赤い糸展
開催日:2023年7月15日(土)~7月17日(月祝)
場所:soko station 146
アクセス:JR 京葉線・りんかい線/東京メトロ有楽町線「新木場駅」から徒歩5分
◼️SNSもやってます!
公式Twitter:@akaiito_ten
公式Instagram:@akaiito_ten
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