昔見た夢NO.3 「必ずお互いが自分の部屋を間違えるアパート」

私を含むこのアパートの住人は、いつも自分の部屋と勘違いして他人の部屋に入ってしまう。

それはさておき、今日は優しそうな中年夫婦に誘われてドライブだ。

ドライブの最中、車から降りて言われるがまま入った部屋は、オシャレでピカピカしていて見るからに高そうだ。

思わず、「ここはあなたたちの家ですか?」

と聞いたら「まさか。」と笑いながら言われた。

(家でないとしたら事務所か何かかしら?)

部屋を出た後、古道具などを売っている雑貨屋にも連れて行ってもらった。

ご夫婦には申し訳ないのだが、

年代の違う人との会話は、常に笑顔でいながらも失礼のないように気を張

っていないといけないので、今回のお伴は少し疲れてしまった。

そして別れ際に、次回もご夫婦に会う約束をしてしまったことをとても後悔している。

**********************************

数日後に2回目のドライブの日を迎えたが、気が進まずにだらだらと準備をしているうちに、とうとう約束の時間になってしまった。

もういっそ今日は断ってしまいたいという気持ちもあったが、

さすがにそうすることは出来なかったので、ひとまず、

”少し遅れます”

とメールすることにした。

しかしどうしたことだろう、いっこうに身支度が進まない。

もう、待ち合わせの時間を30分以上も過ぎてしまっている。

だんだんと自暴自棄になった私は、以下のような魂胆で、約束をバックレることにした。

(ええい、めんどくさい!中年夫婦はアパートの近くまでは来られても、私の部屋までは分からんはずだ。悪いが今日は家で好きなことをして過ごさせてもらうぞ!)

私はご夫婦からのメールを無視した。

そして自分の部屋だと思い込み、間違えて入った女の子(A子)の部屋で、その子と会話を楽しむことにした。

A子は会話の節々に少しデリカシーに欠けるところはあるものの、悪い子では無いようだ。

しかし、しばらく話しているうちに彼女にある疑惑が浮上した。

それは、A子とご夫婦に何らかの繋がりがあるのではないか、というものだ。

なぜなら、

A子「あのご夫婦はいい人なんだよ」

A子「でもあなたはきっといやよね?あのご夫婦に会うのは・・・」

と、だんだんとご夫婦の話題が会話のほとんどを占めるようになってきたからだ・・・!!

ご夫婦がA子を使って私と会おうとしていることを確信した私は、面倒臭いからこの部屋から出てしまおうと思った。

しかしその矢先、A子の部屋に突然複数の来客が来たため、人見知りな私は反射的にクローゼットの中に隠れてしまった。

どうやら来客はA子の友達のようだ。

(漏れてくる甲高い声から察するに、きっと今どきの、元気で明るいタイプの子たちだろう。普通に相手をすると疲れるから、あの子たちが居なくなるまではクローゼットに隠れていよう!)

と根暗全開で引きこもりを決意したのであった。

しかし、夢の中でも物事はそう上手くはいかない。

私の気持ちとは裏腹に、ドタドタと向こうから足音が聞こえて来た。

(あ〜〜終わったな)

次の瞬間、勢いよくクローゼットが開かれ、目の前にA子と、想像していた通りの今どきの女の子たちが現れた。

A子「どうして隠れるの〜〜〜〜?」

(A子ーーーー!こんなところでもデリカシーの無さを発揮しやがって!!)

パニックになりながらもどうにかA子たちをかわして部屋を出た。

ガチャン(ドアを閉める)


目の前には、ご夫婦がいた。

ご夫婦は私に背を向けて、うちのアパートの特徴である木製の階段や踊り場を指差しながら、ああでも無いこうでも無いと話し合っている。

気配を感じたのかご夫婦がこちらを振り向く。

目が合った。

二人ともどことなく悲しそうだ。

思わず、

「すみません、今日難しいです!!」

と叫び声に近い声で言う。

ご夫婦は少し驚いていたが、嫌味一つ言わずに聞き入れてくれた。

待ち合わせからかれこれ一時間以上も過ぎているのに、未だにノーメイクでヨレヨレの部屋着のワンピースを着ていることからも、ドライブに行きたく無い気持ちは伝わってしまっただろう。

申し訳ない気持ちや情けない気持ちで自己嫌悪になりながら、何とか自分の部屋までたどり着く。

ドアを開ける。

どうやらまた部屋を間違えたようだ。

今度は子持ちの奥さんの家に来てしまったらしい。

奥さんは私が自分の部屋と間違えてドアを開けたことにすぐに気がついた。

奥さん「ほんと何なんですかねぇこのアパート。私もさっき間違えましたよ。イヤですねえ。」

奥さんは笑っていた。優しくて若くてスリムな人だった。

さっきまでの暗い気持ちが少し治まったような気がした。

(終わり)

いいなと思ったら応援しよう!