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東大そっくりの建物で歴史に触れる(港区立郷土歴史館散歩の記録)
少し前のことになるが、港区立郷土歴史館を訪れた。港区には一生縁が無いと思っていたのに、考えてみたら好きなミュージアムの多くが港区にある。
もともと公衆衛生院だったこの建物は東大建築学科の内田祥三が設計したもので、東大の建物にとてもよく似ている。ちなみに隣に東大の敷地もある。
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建物の外にもスタッフがいてとても親切に応対してくれた。館内での見回りや声掛けも徹底していて素晴らしいと思い調べてみたら指定管理者制度を採っていた。
中に入るとまず吹き抜けのホールがあって、照明や天井のレリーフが美しく細部まで行き届いたこだわりが感じられる。各方向に階段や展示室への通路などがあって、さてどちらに行ってみようかと、ゲームのプレーヤーになったみたいな高揚感がある。
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地下に降りると床がプリズムガラスになっている。かつての電気では地下が十分に明るくならなかったため、外の庇もガラスにしてこの床に反射させて外光を取り入れ明るさを確保したということらしい。すごい工夫である。
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1階には八芳園のカフェがある。ワンプレートの優しいランチが食べられて満足感が高かった。この空間はもともと食堂だったらしい。地下だけど窓があって開放的な空間で、壁のタイルや床の感じも東大と同じで内田祥三を感じた。天気がよければ外の噴水のところでランチを食べることもできるようで、それも心地よいだろうな、そういう自由があるっていいなと思った。
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2階に程よい分量で内容は充実した企画展の展示室があるほか、3階と4階には常設展があった。常設展は写真が撮れなかったが、かなり見応えがあった。港区にいる魚が水槽にいたり、貝塚をそのまま持ってきたものが壁一面に展示されていたり、竪穴式住居の建て方がVRで見られるようになっていたりととにかく実物やそれに近い感覚を伴って学べるようになっている。そして、近世のコーナーでは古地図とともに出土品が展示されているし、最後の近現代のコーナーでは路面電車の先頭部分を再現した展示があって行き先表示のところを回して自分で変えて遊ぶことができる。
誰しも何かしら刺さるところがあるのではないかというくらい、これでもかと要素を盛り込んで港区の地域の長い長い歴史を全力で伝えに来ている。実のところ、全てをじっくり見るには時間が足りなかったのでまた訪れたいと思う。あと、展示の中に港区のミュージアムたちが地図にまとめられているコーナーもあった。その中に私の好きなミュージアム(菊池寛実記念智美術館やみなと科学館、サントリー美術館 etc.)が並んでいて、冒頭のような感想を抱いた次第である。それと、展示室間の移動で廊下を歩くのも、なんとなく学校の教室移動みたいで楽しかった。
この建物は古いけど耐震工事やバリアフリー化も徹底していて万人に優しい空間になっている。実際、耐震改修優秀建築賞の盾があった。そんな賞あるんや。
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また、かつて使われていた物たちも少し展示されていた。少し前の時代の注意書きってちょっと冗長でかわいい。
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さて最後に4階の講堂をひと目見て帰った。なかなか立派で、東大駒場キャンパスの900番講堂を思わせるものがある。広すぎて後ろの席に座ったら私は黒板の文字読めないだろうなと思った。
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港区立郷土歴史館は、港区の歴史からこの建物自体の歴史まで、心地よい空間で十分に学べる素敵ミュージアムだった。休憩できるスペースも多いし、またふわっと訪れたいと思う。