赤いラジオ日記

ラジオを聴いて思ったことや本のこととかを書きます。

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マガジン

  • 万城目学を語りたい

    積年の愛の向く先である万城目さんへの想いが溢れてしまった記事をまとめました。

  • 映画感想

    映画感想をまとめました。

  • ラジオそして読書

    ラジオの感想と、そこで紹介された本を読んだ感想を綴っています。

最近の記事

珠玉の仕事紹介本3冊

就職したい転職したい。あるいは労働の日々の中でちょっと立ち止まってみたい。そんなときはこんな本がいいかもしれない。色々な仕事が見られたり、労働のリアルに迫っていたり、「仕事紹介本」という言い方がいいか分からないけど、肩肘張らずに「仕事」というものを考えられる本として好きな作品たちを並べてみたい。 この世にたやすい仕事はない津村記久子さんの名作。名久井直子さんの装丁で、単行本は蛍光っぽいピンク、文庫版は青で書かれたゴシック体のシンプルな題字が素敵。ストーリーは、大学卒業後から

    • 徳川天一坊俥読みレポート 千穐楽

      ちょっと投稿が遅くなったけど、連続五日間、台風もあったけど無事通えて全力で楽しめたので最後の感想を書いていく。 「越前切腹の場」春陽折しも越前守は切腹を覚悟し、十一歳の息子とともに死を遂げようとしていた。というのも、吉宗から登城の命令があったが、病気が治ったというとなぜ再調べが進んでいないのかと言われてしまうし、病気だからと嘘をつき続けて登城しないにしても主君の命令に反することになってしまうので切腹するしかないということらしい。そんな理不尽な、と現代の感覚では思ってしまうが

      • 徳川天一坊俥読みレポート 四日目

        神田阿久鯉、神田伯山、神田春陽の俥読み全五日間に参加している。四日目はクライマックスだったかもしれない。迫力満点のやりとり、怒涛の伏線回収に引き込まれた。 開口一番「越の海勇蔵 稽古相撲」二日目と三日目は青之丞と梅之丞がそれぞれ来て、「雷電の初土俵」「海賊退治」をそれぞれ十分で読んだ。そして四日目は梅之丞が越の海を読んだ。二日目に雷電や谷風が出てくる話を聴いたところなのでつながってよかった。そして、越の海は若之丞が読むのを二回聴いたことがある。やっぱり兄弟子うまいな、と思う

        • 徳川天一坊俥読みレポート 三日目

          「越前閉門」伯山大岡越前守は徳川天一坊に悪相を見たこと、ご落胤と認められてほくそ笑んでいたことから再吟味すべきと訴え、もしも天一坊が真のご落胤だった際には切腹し領地を取り上げられ親族も同じ目に遭ったとしてもお上を恨むまいと申した。これを聞いた知恵者の松平伊豆守は面白くなく、取り合わなかった。翌日、越前守がまた伊豆守のところに行って再度訴えると、吉宗に取り次いでもらえることになった。しかし伊豆守の圧力で天一坊らの悪相やほくそ笑んでいたという根拠と、越前守の身命を捧げる覚悟につい

        珠玉の仕事紹介本3冊

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        記事

          徳川天一坊俥読みレポート 二日目

          二日目の時点でこの状態なのはまずいなと思うのだけど、ちょっと疲れが出てきてしまいあまりちゃんと聴けなかった部分がある。とはいえ物語はまた大きく動き、もう一人の主人公である大岡越前守も登場した。あとの三日は体調を整えて来たい。というわけで二日目の感想はさらっと書きます。 「伊賀之亮の荷担」伯山美濃の常楽院は豪奢な外観を晒し護衛を立て、物々しい雰囲気を放っていた。そこに天忠坊が唯一「先生」と仰ぐ伊賀之亮が訪れる。天忠坊は伊賀之亮に、実は吉宗公のご落胤をこの寺で育て上げたのだとい

          徳川天一坊俥読みレポート 二日目

          徳川天一坊俥読みレポート 初日

          神田伯山、神田阿久鯉、神田春陽による徳川天一坊俥読みが開幕した。新春連続読みは二度行ったが俥読みは初めて行く。月曜から金曜の五日間で会社員には過酷なスケジュールなのだが、この特別なお祭りを全力で楽しみたいと思う。客席五百名に対しパンフレットが三百冊とのことで買えなかったから、自力であらすじをまとめつつ感想を記していきたい。がんばるぞ。 大久保彦左衛門 将棋のご意見開口一番は青之丞による一席。家光の家臣である大久保彦左衛門が、将棋を指しながら家光に諫言するという話。確か以前に

          徳川天一坊俥読みレポート 初日

          走泥社再考展への再訪

          4月に泉屋博古館とセットで菊池寛実記念智美術館に行き、走泥社再考展を見た。この展示は前期に1, 2章、後期に3章を展示するという変わった構成になっていて、少し安くなる2回券も販売されていた。もちろん後期も見る気満々でいたのに気づいたら会期末になっていて慌てつつ、今週なんとか行くことができたので今回も感想を書いてみたい。 ↓前回行ったときの感想はこちら 前にも書いたようにこの美術館は18時までやっているので仕事帰りに寄る余地があるのでありがたい。仕事用のかばんにいい加減に突

          走泥社再考展への再訪

          成瀬が野球に連れていく

          8月14日、ベルーナドームで行われる西武対ソフトバンク戦にて、『成瀬は天下を取りにいく』作者の宮島未奈さんがセレモニアルピッチに登場するということで、成瀬仲間に誘われて観戦に行くことにした。 西武線で多摩湖駅まで行って、3両編成に乗り換える。混み合った車内は暑い一日を過ごした疲れと、これから見るものへの期待が充満していた。元野球部の同世代男子の会話を聞くともなく聞いていたら、球場前に到着した。この日は成瀬と同じポーズで写真を撮ろう!というのが推奨されていたのでちゃんと写真を

          成瀬が野球に連れていく

          井の中からひと言

          都会は情報量が多いのか大学進学と同時に東京に住み始めた。クラスの自己紹介で出身地の話になると、関西出身の人が何人かいて、彼らは「なぜ京大にしなかったのか」としばしば訊かれ、こう答えていた。「東京のほうが情報量が多そうだから」と。どこにいてもスマホ一つでインターネットの海に漂い、大量の情報にアクセスできる今、その台詞は時代とミスマッチに聞こえた。 しかしながら、私はその言葉を最近理解しつつある気がする。例えば福岡に旅行に行ったとき、「情報量の少ないところに行きたい」と街中では

          井の中からひと言

          全部言ってくれている最強小説

          私にとって女4人組小説といえばアン・ブラッシェアーズの『トラベリング・パンツ』シリーズで、夏休みの間別々に過ごす10代の女の子たちがそれぞれ恋愛して傷ついて、最後は結局友情が最強、というところに落ち着くその物語が大好きだった。小中学生のときにその小説を読んでいて、時を経た今新たな女4人組小説に出会った。それが小林早代子『たぶん私たち一生最強』である。 書店で広い面積に積まれたこの本は装丁が『成瀬は天下を取りにいく』と同じ香りを放っていて目を引いた。帯に惹かれ、「一生最強」と

          全部言ってくれている最強小説

          手紙文学の妙 恋と罪

          坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』を読む。手紙やメールのテキストメッセージのみで構成されたストーリーだ。もとは朗読劇として演じられたものが2017年に本の形で出版された。 初恋と不倫はそれぞれ違う男女の物語だ。どちらも誰かの罪が絡んできて苦い味わいだけど、やはり全然違う感触。それぞれについて少し書いてみる。 不帰の初恋、海老名SA クラスで孤立している男子の下駄箱に女子が手紙を入れるところから全ては始まる。受け取った玉埜広志は最初は冷たくするが、めげずに手紙を書いてくる三

          手紙文学の妙 恋と罪

          大学散歩

          数年前に卒業した大学を訪れる機会が最近何度かあった。まだちゃんと身体は覚えていて、広い構内をボーっと歩いていても目的地に辿り着けるけど、確実に何かが変化している。大学側にも変化が色々ある。グリルチキンよりも白身魚のフライのほうが高くなったとか、芝生にテントが張られているとか。でもそれよりもやはり私自身の気持ちの変化のほうが大きい。 大学を歩いているとあの頃の記憶が淡く蘇ってきて、普段忘れそうになっているけど確かにここに通っていたのだな、と思い出す。それと同時に、もうあの日々

          地下に眠っていた過去、守り継がれている過去(泉岳寺散歩の記録)

          タイムリーに記事を更新してみる。昨日7月13日は泉岳寺駅に初めて行ってみた。というのも、発掘現場の見学ができると聞いてのことだ。 埋蔵文化財発掘調査見学気合いで早起きして10時に泉岳寺駅に降り立つ。雨予報だったが雨の気配はなく、しっかり照りつける太陽に目を細めながら見学会へと向かう。大通り沿いに歩いていると地下鉄のホーム拡張工事をしていてでかいクレーンが重そうなものを運んでいた。通り過ぎていくとそこも工事の壁がずっと続いていて、それが遺跡の工事地区であるようだった。壁が途切

          地下に眠っていた過去、守り継がれている過去(泉岳寺散歩の記録)

          万城目学の小説のタイトルについて勝手に考察してみる

          七夕の日に万城目さんのサイン会へ。行く前は緊張し、行けば恥ずかしさでいっぱいになり、行ったあとはもっとこう言えばよかったと後悔する。それでもやっぱり会えるのは嬉しいから結局行ってしまう。今回は『六月のぶりぶりぎっちょう』のサイン会だった。これまた奇抜なタイトルだが、「ぶりぶりぎっちょう」はガチで昔からある言葉であるとのことだ。そんなわけで、この機会に万城目学の小説作品をタイトルで分類するということをしてみたい。 第一類: ない言葉実在しない言葉がタイトルに入っているパターン

          万城目学の小説のタイトルについて勝手に考察してみる

          悪の連鎖が続かないでと願う

          noteを始めて1年と数ヶ月経つ。最初から2番目に投稿した記事は『ドールハウスの惨劇』という小説の感想で、その続編が昨年発売された。発売直後に買ったのだけど、前作よりさらに恐怖が増しているとか、戦慄したとかいうレビューを見ているとなかなか読み始められなかった。1年近く積ん読してやっと読むことができたので、感想を書いてみたい。 遠坂八重『怪物のゆりかご』は、高校の教室で自殺の中継映像が流れ、その動画がネット上に拡散されるというところから始まる。自殺を図った男子高校生の彼女が主

          悪の連鎖が続かないでと願う

          埋込み型現代を見る

          最近行った2つの展示で古い作品をいじった作品群が面白かったので少し書いてみたい。 しりあがりさんとタイムトラブル日比谷図書文化館1階で開催されている展示。日比谷音楽祭のついでに見に行ってみた。しりあがり寿さんが、江戸時代の版画をもとにその風景を何かに見立てたり、現代だとこうなるよなあという感じでパロディした作品が展示されていた。開催地が日比谷図書文化館というだけあって、パロディ元の版画も実物が隣に並べてあって比べやすかった。 日比谷図書文化館への行き方は色々あると思うけど

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