イト
このイトの先はどこなのだろう。私の小指に巻きついたイトはずっと伸びている。
赤い糸……ではないな。そんなロマンチックなものでないことは、わかっていた。
「なぁ、このイトはなんだ?」
私は語りかける。語りかけるのは、小指の先に鎮座する小さい蜘蛛だ。
蜘蛛は語らない。
だって蜘蛛だ。喋るわけがない。
だけど、このイトの先に行けと言っているのは感じた。
何があるのか。興味はある。不安もある。
天国か、それとも地獄か。まだ先は見えない。もう少し先に行ってから考えよう。
まだ余裕はある。