小林公夫先生プレゼンツ 医学部の小論文・面接対策!(前編)
医学部を受験する人にとって、「面接」「小論文」の対策は悩みのタネですよね。
他の科目と違い、学校で勉強するものではないので、まずどんな試験なのかがよく分からない、対策の方法が分からない、という人も多いでしょう。
『医学部の面接』『医学部の実戦小論文』著者の小林公夫先生に、
医学部の面接・小論文の対策について、お聞きしてみました!
前編の今回は、「医学部の面接・小論文試験とはいったいどんな試験なのか?」を教えていただきます。
Q1.面接・小論文は、学生のどんな力を見ているのですか?
医学部の試験で課される面接・小論文は、ふつう他の学部の一般入試にはありません。では、医学部の試験で、通常の学科試験に加えてわざわざこれらの科目が課せられているのはなぜでしょうか。それは受験生に「医師に必要な能力や資質があるか」を見極めるためです。では、面接・小論文で試されている、「医師に必要な能力や資質」とは、いったいどんなものなのでしょうか。ここでは3つほど取り上げてみましょう。
1つめは、「公共性・公共心」です。医学部に入った人は医師免許取得に向けて勉強するわけですが、医師免許は「国から」交付されるものです。ただの職業ではなく、そもそもが公に資する職業であるため、広く社会に目を配ることができる「公共性・公共心」は重要な資質です。
2つめは、「患者の要望に耳を傾け、正しく応える能力」です。医師として、患者の人権を尊重し、その要望に耳を傾けられることはたしかに重要です。その上で、「正しく応えること」もまた重要なのです。たとえば、健康上なにも問題がない人が病院に来て、「小指を切断してください」と頼んできたとき、それに応じるのは正しいことでしょうか? いや、そうではないでしょう。
3つめは、「患者の置かれている状況を理解して、自分に置き換えられる能力」です。病院で出会う医師と患者は、人生観や育ってきた背景が異なる他人どうしです。そして、医師は基本的に健康体であり、患者は体に何か問題を抱えて、病院を訪ねてきます。健康体である医師が、目の前の患者の状況に対して、どれだけ自分に置き換えて考えられるか、というのは、医師という仕事をするうえで常に問われる能力です。
他にもたくさんの能力が必要とされますが、こういった能力・資質が問われていると思ってください。
Q2.どんな問題が問われるのですか?
Q1.で述べたような力を見るために、大学は様々な問題を出してきます。
2019年の獨協医科大学の小論文では、「真冬の夜に近所でおじさんが酔いつぶれて寝ていたが、特に声をかけなかった。翌朝、外を見るとおじさんは凍死していた。しかし、これは法律的には罪にあたらない」という話から、医師の公共性を問う内容の文章が出題されています。先ほどの1つめの能力(公共性・公共心)と対応していますね。
救助の義務が無い状況として医師が直面する似た状況に、飛行機などでのドクターコールの問題があります。ドラマなんかでよく見る、「お医者さんはおられませんか!」というものですね。ドクターコールは、応じなかったからといって罪に問われるものではありません。しかし医師免許を持ち、治療行為ができる技能を持った人間としてどうするか、といったところで医師の公共性・公共心が問われてきます。
2022年の愛知医科大学の小論文では、このような内容が問われています。
愛し合っている2人がおり、片方が「相手が自分を愛しているかはどうでもいい。自分が相手を愛していることが重要だ」と言っているという場面で、それを聞かされた相手の気持ちと2人のこれからの関係性を答える、という設問です。
かなり変わった問題のようにも思えますが、これは先ほどの3つ目、「患者の置かれている状況を理解して、自分に置き換えられる能力」を問うているのだといえます。「私はあなたを愛しているけれど、あなたが私を愛しているかはどうでもいい」と言われた人の気持ち、という難しい状況を考えるには、深く他人の気持ちに共感する能力が必要ですね。さて、あなたはどう考えるでしょうか?
もちろん、すべての問題が上のような能力を問うているわけではありません。しかし、ただ問題を解くだけではなく、「なぜこの問題が問われているのか」、その背景を意識するのは、面接・小論文の対策にとって重要です。
後編では、面接・小論文の具体的な対策をお聞きしています!