【特別講義】新科目「情報Ⅰ」の攻略法 第2回『データの活用』(基本編)
第2回のテーマは「データの活用」です。データは,情報の元となるとても大切なもので,共通テスト「情報Ⅰ」でもデータについて出題されます。今回は基本編として,「情報Ⅰ」でのデータについてのアプローチ,そしてデータの問題で頻出のグラフの読み解き方について,情報科教諭の岡野先生に教えていただきましょう!
Q1.数学でデータの分析は習ったんですけど,情報Ⅰでもデータについて勉強するんですか?
確かに高校の授業では,数学と情報でそれぞれデータについて扱います。
実際に教えている内容が同じ部分もありますが,学習指導要領に則るなら,数学Ⅰで学ぶものを「データの分析」,情報Ⅰで学ぶものを「データの活用」と呼びます。この2つの違いは以下の通りです。
データの分析(数学Ⅰ)の内容
データの活用(情報Ⅰ)の内容
数学の「データの分析」はさまざまな公式を身に着けないと理解が深まっていきませんが,情報の「データの活用」は公式を知らなくても,結果の「意味」を読み取ることができれば対応はできます。
イメージ的に数学は理論,情報は実践という形でしょうか。
Q2.データの問題にはよくグラフが出てきますが,グラフを読み解くコツはありますか?
グラフを読む際のコツは,「全体」と「部分」の双方に着目し,問題文に応じて視点を切り替えていくことです。グラフが苦手な人は,視点がこの2つのどちらかに偏ってしまっていることが多い印象です。
「全体」と「部分」がそれぞれどんなことを指すのか,下に一例を示します。
2022年に大学入試センターから発表された試作問題でも,グラフ全体の傾向を考えさせてから,個別のデータに着目するという順番で,両方の視点が必要となる問題が出題されていました。
グラフを見る際は,数値の大小関係だけではなく,数値(軸の値)もだいたいでいいので頭に入れて読み解くことが大切です。
また,同じデータに対して複数のグラフがある場合は,それぞれを比較して,どちらが目的とする情報を得るのに優れているか,などを読んで把握していくと読み取りやすくなります。
Q3.表計算ソフトで分析をする際に身に着けておくべきPCスキルはありますか?
実際に自分でデータを分析していくとなると,最初はその整理にも時間を取られてしまうと思います。
データをコピーしたものの,データを整理したり,単位がついているデータから単位をはずしたり…と最初の集計までのハードルが少し高くなってしまうことがあります。
ここで、データの分析をする際に最低限身に着けておきたいスキルを3つご紹介しましょう。
1つ目は,挿入と削除です。ExcelでもGoogleスプレッドシートでも,行単位・列単位・セル単位で挿入や削除ができます。
2つ目は,Ctrlキーの使用です。Ctrlキーは離れたところを同時に選択したり、後で紹介するショートカットコマンドを打ったりするときに使われます。意外とよく使うキーですので,是非場所もしっかり覚えて使っていきましょう。
3つ目は,ショートカットコマンドです。ショートカットコマンドとは,いくつかのキーの組合せで作業を短縮する方法のことで、主にShift,Ctrl,Altなどがよく使われます。Ctrlキーを使ったものとしては,コピー(Ctrl+C),ペースト(Ctrl+V),元に戻る(Ctrl+Z),置換(Ctrl+H,単位がついている数字から単位をとるためなどに使う)などを知っておくと学習を進める上で便利になると思うので,覚えておきましょう。
以上に挙げたスキルが最低限必要になると思いますので,ぜひ身に着けていきましょう。
岡野先生,ありがとうございました!続く実践編では,データの活用が得意になる方法について伝授していただきます。お楽しみに!
岡野 英樹(おかの・ひでき)
佼成学園中学校・高等学校の情報科教諭。実教出版情報教科書「情報Ⅰ Python」「情報Ⅰ JavaScript」指導用教科書を執筆。
授業研究「情報Iを見据えたプログラミング教育~学習者の独自設計を可能にさせたミニチュア配膳ロボットのプログラミング教材の開発と実践と評価~」で令和4年公益財団法人東京都私学財団賞を受賞。慶應義塾大学院政策・メディア研究科修了。
「情報Ⅰ」はどうしてもスキルによって進度の差が出てしまう教科なので,課題設定を工夫しすべての生徒に飽きさせない授業設計を心掛けている。