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中小企業と優遇制度を考える~コロナ禍にて~

フォーバルの赤羽です。

 新型コロナ禍により、世界経済は1930年代の大恐慌以来の大ダメージを追っています。アメリカでは失業率が戦後最悪の14.7%を記録しました。日本ではかろうじて2%台を保っていますが、今後の企業倒産や休業者の隠れ失業などが出てくれば失業率は上昇していく可能性があります。各国は企業の経済活動を止めないために、財政政策や金融政策など大胆な対策を展開していますが、こと日本に関して言えばスピード感の遅さは否めません。現段階では企業は内部留保を取り崩しながらかろうじて雇用を守っていますが、第2波、第3波による長期戦になる場合、企業体力のない中小企業から先に廃業・倒産が始まることでしょう。中小企業を救うのはもはや時間との戦いになってきます。

 ここで中小企業の定義を考えたいと思います。ひとえに"中小企業"と言っても対象はかなり広範囲です。製造業で言えば資本金が3億以下、従業員が300人以下とされており、卸売業で言えば1億以下、100人以下と業種によっても違ってきます。つまりそれ以下であれば、資本金100万でも、従業員3人でも"中小企業"というカテゴリーに属されるのです。そしてそれより大きいと"大企業"と呼びます。日本には約380万社の会社がありますが、そのうち実に99.7%は中小企業なのです。また全体から見た中小企業における雇用比率は、アメリカが50%、ドイツやイギリスが60%、それに比べて日本は70%です。日本経済おいて、"中小企業"は雇用の受け皿としての働きも大きいのです。

 これだけ中小企業の存在感が大きい日本ですが、今回のコロナ対策における中小企業政策に関して、世界の主要国に比べて日本政府はかなりスピード感の欠ける対応をしています。なぜでしょうか。政策決定のプロセスや行政IT化の遅れなど、さまざまな要因がありますが、私は中小企業の対象範囲の広さが一つの原因ではないかと考えます。

 一般的に企業には成長サイクルがあります。創業期や成長期、成熟期など、成長段階において企業体力が変わってきます。創業間もなく資金繰りに奔走されている会社もあれば、社歴も長く資本を蓄積した企業体力のある会社もあります。それらすべてをひとくくりにして"中小企業"と称してしまうと、今回のような支援する対象企業数が増えすぎてしまい、支援窓口に殺到するのは目に見えています。さらに行政の手続きの簡素化が出来ていない状態がさらなる混乱を招いています。つまり支援の供給スピードに合った需要(対象範囲)の絞り込みをするべきです。

 例えば今回の持続化給付金などを例にとれば、収入の無くなった零細企業は運転資金として今すぐにでも貰いたい給付金です。しかし政府はこれを中小法人等に幅広く対象範囲を広げて一気に展開しました。中小企業といえども、内部留保で経費を1年くらい賄える資本力のある中規模企業もあり、そのような企業はすぐに緊急支援を必要としません。そもそも緊急性を伴う給付金ですから、企業体力のない企業が優先的に支援を受けるべきです。ところが皆が一斉に窓口に殺到する中で、さらに申請が煩雑なため、多くの企業に届いていない状態です。中小企業をひとくくりにした大雑把な政策としか言えません。対象範囲が大きければ大きいほど、スピード感に欠ける支援になるのは当然です。

 中小企業には税制優遇や各種補助金、制度融資など、中小企業でしか受けられない特権があります。そのようなメリットを多くの中小企業は上手く活用しています。逆に資本金を増資して1億以上にした場合、大企業という扱いになり優遇が受けられなくなるため、中小企業のまま留まっていようという慣性が働いてしまいます。そうなると中小企業は更なる成長を目指そうとしなくなります。これが企業の成長を阻害する原因の一つなのではないでしょうか。中小企業か大企業か、このおおざっぱな括りを変えていかなければ、今回のようなコロナ禍においてスピード感のある政策を行なうことは出来ないと思います。これを機に、中小企業を成長に応じて段階化し、それぞれの層にメリハリのある最適な政策を立てるべきです。その方が未曾有の事態においてスピード感も出ますし、各企業が本当に必要な支援を提供することもできるでしょう。

 一般的には企業は大きくなればなるほど、スケールメリットが働き固定費が分散されてその分付加価値が高くなります。企業活動は付加価値の増大ですから、経営者は企業を成長させていくべきなのです。中小企業にとどまらせる慣性を取り除き、成長に応じた政策を立てるべきです。また企業側でも成長に応じて最適な制度が受けられることが、更なる成長のモチベーションを生むのではないでしょうか。

 日本は中小企業が産業の裾野を形成しています。そしてそれが日本経済の協力な足腰を作っています。ここの制度を改めてしっかり構築し、中小企業の競争力をバックアップしていく時期だと思うのです。

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