サントリー美術館『日本美術の裏の裏』に行く。2020.11.18
実は昨日(火曜日:休館日)に来たので二度目の正直である。何が裏の裏なのかと思いきや、説明を見ると教科書では教えないような日本美術の隠された魅力(表立ってないから裏なのか)と言う事らしい。今時らしく撮影可で、ありがたや。
展示は1〜6賞まで別れて『洛中洛外図』などは床に京都市内の絵に該当する場所が分かるような略図的な地図があり、ミニチュアの『雛道具』はルーペが添えて小さい作品を見やすくしている。陶器は展示全体がアート作品のよう。各作品の解説なども、ちょっとした突っ込みがあり趣向を凝らしてはいるが、裏の裏を象徴する『核』となる作品はどれだったのかは、ちょっとよく解らなかった。
まず事前にSNSで知って気になっていた『新蔵人物語絵巻』。描いたのは16世紀の素人の女性の作品という注釈がある。プロじゃなくても作れるのでそれなりの身分の女子という事なのか。
内容は男装の美少女が宮廷に忍び込み、帝に可愛がられていたが、ある時に女性だと帝にバレてしまい、そのまま二人だけの秘密の恋がめくるめくという事らしいが。…まんま同人誌やないですか!高さ11㌢という絵巻の小ささからすると着物の袖の部分にすっぽり隠せて、知り合いで回して読んでキュンキュンしたのかと思う。今も昔もやっていることは変わらない。こういう作品は日本美術の中で今まで紹介されてこなかったので、どこに隠れていたのかと思う。もっと出して!
そして『雛道具』シリーズ(ミニチュア玩具)。ちょっと生活に余裕のある層が好んで購入した逸品らしく、コレ全部を実物大では全部は揃えられないが、ミニチュアなら揃えて部屋に置けて尚且つ眺めて没入するのに耐えうる精巧さ。今だとドールハウスコレクターみたいな感じか。買う気持ちはとてもよくわかる。作る方も相当気合が入っているのが窺え、ずっと大事に大事にされて令和の世まで残っていたのは気持ちの強さなのだろうと思うと感慨深い。気になるのは美術館のYoutubeで展示する際に手袋もせず直で触ってイイの?と思ったが一体どうなのソコん所。
アレレこれは福知山の動物園で有名になった光景じゃないか。
そして、鼠が人のお嫁さんを貰う『鼠草子絵巻』。日本はなんだかんだで『鳥獣戯画』も然りで擬人化が好きよね。匿名の人物としての擬人化なのかも知れないが、鳥や動物が罰当たりの教訓としてで無く、人のように振る舞うのを楽しむのは文化的感覚が成熟しているからかも。こういう作品に子供の頃に出会えていれば日本美術を堅苦しく考えなくて良かったのにな。国内の美術品はもっと見れば良い。できれば触れるきっかけは早い方が良い。
美術館のYoutubeで、最もお金がかかったと言っていた陶器の展示。金云々よりも、なぜこの展示の仕方にしたのか説明が欲しいザマス。せっかくの動画で、その辺の説明は全く足りないな。
志野や織部もそうだけど、ゴツゴツした表面や、ひぎゃあと歪んだ造形が『美』と認められる価値観が、ちゃんとこの国に昔からあった事は喜んで良い事だと思う。誰もが認めるキレイ以外も美しいという存在でいて良いのだ。
歌を詠み、絵を描き、着物を作る。それぞれにその時代の日常と物語が織り込まれいる。猫を抱えるおじさんもいる日常も垣間見る。
便利な時代から振り返り、自由な感覚のつもりで狭い領域の美しさだけ有り難がって小さくまとまっていないだろうか。誰もが認めるキレイ以外も美しいという存在でいて良いという意識を再び揺さぶられる。それがテーマである裏の裏であるという事なら納得する。