アールグレイとマグロ船
ママ、なんか借りてる本ある?
あ、これ返しといて。(小川洋子さん人質の朗読会)あと、コンビニでいいから、紅茶の(Tバックじゃなかったこの変換おかしくない笑)ティーバック切らしてるから買ってきて。
うん。
1日家にいるくせに夜行性だから仕方ないのか、閉館ぎりぎりの7時過ぎになっていつも図書館に行く長女。
ただ今。といって買ってきたのはセブンイレブンのアールグレイのティーバック。
あ。
この子、覚えてるんだな。元夫が紅茶はアールグレイだったことを。やるなあ。お主。
暮らしに彼がいた頃は、紅茶はいつもアールグレイだった。ベルガモットの香りが好きで、休日にはよくお茶飲む?とお茶を入れあう優しい習慣があったのを懐かしく思い出した。
同居する前の彼のアパートはシェアハウスで、キッチンとリビングとトイレとお風呂は大家さんとルームメイトと共有で、つまりそのヒト部屋だけが彼の空間で、しかもそこにはギルドのギターと、インドのアコーディオンピアノと、高円寺のむげん堂で7万したというインチキシタールとKORGのキーボードと布団と少しの本と洋服とCDと紅茶のポット位しかなかった笑。
今でこそミニマリストとか、シェアハウスとかそういうオシャレな暮らしになるのかもしれないけど、なんせ20年以上前の話ですからね、これは笑。只の貧乏暮らしだったけど、中央線がガーガー脇を走るボロ屋で、アールグレイを入れて彼の弾くギターを聞くだけで幸せだった私は、多分南こうせつの神田川と、BOOMの中央線に自ら志願して洗脳されに行ったんだと思う。(今はね)
彼の遺伝子を継いだ二人の娘との暮らしの中で、面差しの中に面影を確実に感じるし、意外に頻繁に彼の置き土産というか、存在を感じるもので、決してそれは嫌な感じじゃなくて、不在によって穏やかになった新しい家族の形なのかなと勝手に思っている。
が、それは大人の話で
不本意に両親の離婚を受け入れざるを得なかった次女からは、ママはそれで良いみたいだけど、私は一生ママの離婚の選択を許さないからね!とキツく念を押されていて、ハイそうです。あなたには不平不満をいう権利があるし、ママにはそれを受け止める義務がある。次女がハッキリ離婚には反対だった、その選択を許していないと言えることは大切だと思っていて、次女にわかってもらおうなんて都合の良いことは少しも思わないし願わない。立場が違うし彼女がわかる必要もない。
パパは今マグロ船に乗っているの。だから帰ってこれないの。それが今のところ次女の編み出した物語。この前結構近くまで来たんだけどな。台風が来たから接岸できなかったんだって。と笑って話す。そうきたか、やるな、お主。ウルル涙。