言葉にできること、できないこと
出勤前雨のシノツク路地を
一足先に歩く同僚が目に入る
背中のシルエット輪郭に
いつもの力がないのを
なんとなく感じる
でもその事をそのまま声に出していってよいかは
目を合わせて話して見ないとわからない
彼女はそれに自分で気付いているのかいないのか
それによってかける言葉は違ってくるから
エレベーターホールで追いつく
赤毛)おはようございます
同僚)おはようございます!
あ、赤毛さんだあ
良かったあ、赤毛さんの顔見たら
ちょっと元気出てきたああ
ああ、自分で気づいておられる
元気がないことを
赤毛)どうかしたんですか
同)今日生理でメッチャお腹痛いんですよね
くの字になって歩きたいくらいです涙
おまけに健康診断なんですよ
採尿とか大丈夫かなって
マジ憂鬱で
赤毛)ああ、そうだったんですね
私も先月健診とき生理で
血尿に血便で再検査ですよ笑
流血の惨事ですからね毎月
オンナって身体は割を食いますよね
同)笑笑
アハハ赤毛さんもでしたか
笑ったらスコシ元気でました!
赤毛)あ、これ健診終わったら食べて、ビスコ。
私の内緒の🍪オヤツなんですけど笑
朝ごはん抜きでお腹空くから食べて!
同)え、いいですいいですよお
だって赤毛さんのが無くなるじゃないっすか
なんて言ってる間にフロアにつく
今日も一日頑張りまっしょい
言葉が有効な事もある
言葉で足りる事もある
でも
言葉は万能じゃない
絶不調沈没した次女を
一番元気づけたいのに
言葉は空回り
見守ることに私がしびれを切らして
ついケンカに
些細なこと因縁レベルでケンカを売ってくるから
宥めてたんじゃ収まらないんじゃないかなって
発散したほうがいいのかなって
叫べと
RADも言っている
これで良かったのか
主戦場に立てるのは自分一人
ピッチに戻って欲しいだけ
なんと言ったら届いたんだろう
本当に届けたいことには
言葉じゃ足りなくて
自分の無力さに苛立ちながら
出来るのは見守り続けることだけ
ハンストか?要らないという弁当を
無理やり持たせて
送り出す朝
仕事から戻って真っ暗な部屋にひとり
今夜は塾で缶詰かな
また合戦の場に立てたことを願いながら
静かな台所に立つ