獣臭または畜生道
頭は夜風に吹かれて提灯灯る川面を眺めている
身体はキッチンで皿を洗っている
ペイズリー柄のアオザイ風のワンピースは風に吹かれてはためいている
昨日は見知らぬ西の街で
今日はベランダの物干し竿で
夜には確かにそこに生身の身体があった
朝は一人目覚めてベッドの窪みを手でなぞる
枕に顔を埋めて胸一杯に吸い込んでみても
もうその人の匂いも息遣いもそこにはなくて
ただ昨日食べた獣たちが私の毛穴から臭って
龍涎香の霊験あらたかな香りさえ消してしまう
私の歩く道は畜生道。この臭いが教えてくれる。